63話「オススメの観光地!? ドラグストアル王国!!」
エーテリン王国へ行ったら、全てのエルフは七つの魔王ルルナナによってコレクションにされてて無人になっていたという。
これは本人が時空間転移してきて自白してきた事だった。
んでナッセとヤマミが息のあった攻撃でルルナナを討伐した。
「……ドラグストアル王国へ行って確かめよう。ルルナナを倒したなら『永遠の楽園』へは行けなくなっているはず」
「そうしましょう」
ヤマミもなのか、ルルナナの断末魔が気になっているようだ。
確実に黒炎で葬り去って滅んだはずだ。なのに腑に落ちない。
「ちょっとー!! イケメンショタのアルベルト王子はどうすんのー!!?」
リョーコがエルフの国へ指さして不満を垂れる。
エルフがいないので、もちろん目当てのイケメンもいないからだ。
「ドラグストアル王国に行けばいいだろ」
「もしかしたらコレクションから解放されてるんじゃない?」
「んじゃ、行こ行こー!!」
ヤマミと一緒にジト目で付け足したら、リョーコはまたノリノリに戻ったぞ。
「楽しそうな人生送ってそうだな」
「そうね」
猛スピードでムヒム村へ戻り、通りかかった馬車に乗せてもらってゆっくりドラグストアル王国を目指した。
二日後にナッセたちはドラグストアル王国へ着いたぞ。
一見、数年前に建国されたばかりの新しい国。なんか美形キャラが行き交いしているので住民っぽい。
全体的に賑やかで、夜だからかネオンがあちこちで派手に灯っている。
「『永遠の楽園』へ導かれるまで、残り四日って事かぞ」
「今日はもう遅いわ。泊まるところを探しましょう」
「だな」
散策すると武器や防具や道具屋、アクセサリー店など充実している。
食堂も多く見かける。
むしろ観光するのに最適な施設が揃っている。
「最高じゃん!! ここ住みたいー!!」
「あのさぁ……」
リョーコは上機嫌でかき氷を手にルンルン楽しんでる。
ちっとは警戒しろよな。
ナッセとヤマミは最初緊張しながら警戒してたんだが、料理とかには特に変なの盛られる事もないので安心した。
その気になれば浄化できるんだが……杞憂だったか。
「もうルルナナをやっつけちゃったから、普通の国になったかも?」
「楽観的ね……」
「いや胸騒ぎはすっけどな。何事もないといいんだが」
「月は気づいてる?」
「ああ」
気になるのは夜空の欠けている月。
エーテリン王国でも赤い月があったが、これよりも満月に近づいている。
「ちょうど満月になる日が『永遠の楽園』へ行ける日になるなぞ」
「ええ……」
「なに気難しい顔してんのー? シワできちゃうわよ」
ヤマミはチョップでリョーコの額をペシーン。えうー!
ホテルのいずれもネオンの看板が目立っていて、下からのスポットライトで壁を明るく照らしていて、ラブホかと勘違いしそうだった。
よく見てみれば、どこの施設も派手な装飾してるしなぁ。
明確に値段の表示でラブホかそうでないか分かるのが救いだ。
「ナッセと一緒ならどこでもいいんだけどね……」
ヤマミが流し目でボソッと呟いてた。思わず火照った。
「と、ともかく、泊まろう!!」
「どーして赤面してるの?」
「なんでもねぇっ!!!」
首を傾げるリョーコ。
気づかれてからかわれたらたまったもんでもないので、顔を逸らした。
「あそこ……」
ヤマミの声で視線を移すと、例の騎士団がぞろぞろと闊歩しているぞ。
他の観光客のように浮かれるでもなく、キリッと使命感を帯びて行動しているように見えた。
「三人の隊長がいないわね……」
「あいつら、騎士団を囮にするってたしな。たぶんこの国の外で見張ってんじゃねぇ?」
「なにそれ、ひっどー!」
作戦もヤマミの黒い小人の潜入により聞いている。
まずは騎士団をこの国に泊まらして、異変が起きた時に隊長が攻め込むといった感じ。三人の隊長は聖騎士なので、特化戦力で七つの魔王をやっつける算段である。
ホテルへ泊まると、ゲーセンとかカジノとか娯楽施設はもちろん、大きな銭湯もあって様々な風呂が設備されていてサウナまである。
おまけに劇場もあるので、一日中いても飽きない。
オレたちは銭湯に入った後、一室でくつろいでいた。
「まるで観光客を呼び込む為に充実しているな」
「それはそうでしょう。七つの魔王ルルナナが……、いえ組織ぐるみでやっている可能性が大きいわ」
「はぁ? なんでルルナナ以外にいるって分かんのー?」
リョーコは訝しげだ。
「ルルナナが言ってただろ? 我ら、ってたし」
「そんな細かい事よく気づくわねー」
リョーコはビール缶を一飲み。くいっ。
ヤマミはムッとした。
彼女はアルコール種が好きではない。なのでナッセと一緒にそういうものは飲まないようにしている。
割と神経質だから生徒会長キャラに見えても仕方がない。
「他に誰がいるか分からないけど、ルルナナがいなくなっても『永遠の楽園』システムは消えてないかもしれない。常々警戒しておいてね」
「ああ」
「りょーかい!!」
リョーコだけは少し酔っ払ってるらしく、ノリノリでビール缶をかざした。
「飲も飲も!! 冷蔵庫にたんとあるよー!!」
この一室にも冷蔵庫があって、ビールはもちろんワインもジュースも差し入れられている。
泊まった客には全てタダでサービス旺盛だ。
それにしてもリョーコが心配だ。浮かれすぎてるぞ。
「大丈夫なんかな……」
「さぁ?」
ヤマミと一緒に呆れながら、大窓から明るい都市の夜景を眺める。




