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痛い自作漫画に異世界転移しちゃったぞ!? そいつはオレに効く! やめてくれぞ!!  作者: ターバン
リョーコの自作小説『没落令嬢ファンタジー』編
60/140

60話「夜空の宿屋!! それぞれの思惑!!」

 キャベツー港町の食堂で情報を得たナッセたちは、その晩に宿で泊まった。

 そこでは広い海が見渡せて、灯台が照らし続けているのが見える。夜空はキラキラ星々が煌めいているぞ。


「ねーねー!! 七つの魔王ってどんなのー?」

「ノリノリだなぞ……」

「だって、ナッセが作ったんでしょー? 聞きたいなー」


 一部屋に三つベッドがあるところで、ナッセとヤマミは腰掛けてて、リョーコは両手で頬杖うつ伏せして足を振るっている。

 咳払いして、恥ずかしいながらも説明した。


 七つの魔王は当然ながら七体いて、最強の混沌王(カオスロード)を筆頭にして暗躍している。

 混沌王(カオスロード)アリエル。

 天空王(ヘヴンロード)ティアーメ。

 狂乱火星(フレンジースター)ゴルンレーヌ。

 薔薇卿(ローズサー)ナース。

 月の神秘(ミスティックムーン)ウー。

 暗黒魔竜(ダークドラゴン)クセアムス。

 煉獄竜王(インフェルノドラゴン)フレアネスド。大会でナッセに倒されて死亡。


「……だ。もし噂が本当なら、この中の誰かという事になる」

「へー! 七つの魔王かぁ! 面白そうなの考えたものねー!!」


 ニヤニヤ茶化すリョーコに、ナッセは赤くなって「うっさい!!」としかめっ面する。

 ヤマミは片目を瞑ってため息。


「漫画にもそんな展開ないでしょ?」

「ああ。……あるとしても、ガロンナーゼ北西半島で暗黒魔竜(ダークドラゴン)クセアムスが支配していて禁止区域『忘れられた半島』になっている。こいつは除外だな」

「今度、漫画見せてー!!!」


 目をキラキラさせて歓喜するリョーコ。ナッセは「うう……」と気が滅入っている。


「じゃあ、そっちの小説も読ませろよ」

「えー!!! ヤダヤダー!!」

「ならダメだ!!」


 リョーコはぷーと頬を膨らます。


「私は全巻通して読んだけど、このオロナーン大陸自体ないもの……」

「ああ。たぶんリョーコが考えた魔貴族の誰かが支配してて、そいつを七つの魔王と誤認したと思う」

「なにそれ!? ヤマミ読んだの!? ずるい!!!」

「彼氏の漫画だからね。ふふん」


 なぜかヤマミはドヤ顔。なんで誇らしげなんだろう?

 ナッセは知る由しないが、ヤマミは結構独占欲があるのだ。


「じゃあさ、リョーコの小説に『永遠の楽園(エターナルエデン)』イベントあるのかぞ?」

「えっ!!?」


 飛び火させてみると、案の定リョーコが仰け反った。


「お、オロナーン大陸編は書いてないからー!!」

「キャラ設定集にも、そういう予定の敵キャラいるんじゃない?」


 ヤマミが鋭く切り込むと、リョーコはギクッと竦んで汗タラタラになっていく。


「白状せー!! うりうり」

「もー分かったわよ!!! まだ話に書いてないけど、魔貴族の二人がダッグを組んでオロナーン大陸で『永遠の楽園(エターナルエデン)』を作って支配してる設定。永遠の夜が特徴の亜空間『深淵殿造(しんえんでんづくり)』がその正体だよー」

「その魔貴族二人の名前は?」

「イケメンドラキュラ風の不死邪爵ナイトメア。悪女サキュバス風の月夜令嬢ルナティ。四魔貴族直属の部下だよ。戦闘力としては格下だけど厄介な能力でハメてくるの」

「やはり……!!」

「決まりね」


 ナッセとヤマミは頷き合う。

 それに七つの魔王じゃなくて良かったと、安堵もした。


「まだ設定だけなのに、こうして具現化されてるのなんでよー!?」

「よかったな。エタ作品の続きを何かのチカラで始めてくれてさ……」

「なにそれー!! よくなくなーいっ!! 嬉しくなーいっ!!!」


 ブンブン腕を振るってリョーコは涙目で悶えている。

 彼女にとっても黒歴史で、赤裸々(せきらら)なのだろう。しかし一体誰が続編を作り出しているのだろう?

 この世界に創造主がいるなら、とんでもない悪趣味だなぞ。




 ナッセたちとは別の宿屋で、アーサーたち騎士団が宿泊していた。

 外観周囲に騎兵用の馬が複数停められている。

 三人の聖騎士(パラディン)を前に、騎士団が背筋を伸ばして整列していた。


「早朝で出発する!! それまでに休息を取れ!!」

「「「ハハッ!!!」」」


 解散して、ぞれぞれ宿屋の部屋へ戻っていった。

 アーサー、グランハルト、アレフは一息を付いて、一緒に部屋でくつろぐ。


「……精鋭の騎士団には悪いが、(おとり)で七つの魔王が支配する王国へ踏み込ませてもらう」

「ああ。あの『永遠の楽園(エターナルエデン)』に行った人々は二度と帰ってこないらしいからな」

「ハハッ。心が痛むぜ」


 部屋でも馬に乗ったままのアレフが笑っていて。二人は「……」と沈黙。


「ともかく、真相を暴くには多少の犠牲もやむを得ない」

「俺が先陣を切って踏み込むのは……?」

グランハルト(おまえ)は優しいからな。気持ちは分からんでもない。だが、できれば三人で叩きたい。いかにクラスチェンジした最強騎士といえども、相手はあの七つの魔王だからな」

「先行して殺された騎士団の仇を討つ口実にもなるぜ。遺族もそれで納得するだろ。ハハッ」

「アレフ!! 言い過ぎだぞ!!」

「おまえは黙っててくれ」


 任務を忠実に遂行せんとするアーサー。人情があるグランハルト。そして一見人でなしっぽいアレフ。

 聖騎士(パラディン)も三者三様のようである。


「大昔より長く続いているギルガイス帝国の為にも、七つの魔王と金色の破壊神の討伐を成し遂げねばならん……!! 皇帝陛下の長年にわたる悲願なのだからな!!」

「ああ。至極真っ当な悲願だ。ヤツらのせいで世界が崩壊して、大勢の人々が死に絶えるなど我慢ならん!!」

「不条理なのは世の常だぜ。例え犠牲者が多かろうとも、国が滅ぼうとも、大元を断たなきゃ悲劇はいくらでも繰り返されるからな。ハハッ!!」

「「ああ……!!」」


 三人の聖騎士(パラディン)はとうに覚悟を決めている、そんな真剣な目を見せていた。

 そして夜は明ける……。

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