57話「二組のカップリング形成でリョーコ嘆く!!!」
ホワイデー王国の公爵貴族であるが、実は人間に紛れ込んだ魔貴族でもある第一イケメンのテンショウ。
そしてホワイデー王国の王太子にして第一王子の第二イケメンであるソロア。
小説通りなら、リョーコは二人のイケメンに囲まれていたはずである。
「えうう~!!」
リョーコはギャグ涙を流して未だ泣いているぞ。
「テンショウはネタバレされて逃げてしまったしな」
「ソロア王子はフラグが立たないまま、魔貴族の大侵攻クリアしちゃったから素っ気ないままね」
「あんたらのせいよ~~~~!!!!」
両腕をブンブンして抗議してくる。
「そもそもオレたちを実名でキャラにしてるせいだぞ」
「なんで私が悪役令嬢なわけ」
「う」
元はイレギュラー的存在だったのに、リョーコの小説が合体したので辻褄を合わせられてしまった。
ナッセはバレンティア王国の王太子。ヤマミは悪役令嬢。
「元々はオレがヤマミ令嬢に篭絡されてリョーコ令嬢を婚約破棄して、その後どうなるんだっけ?」
「ううん。そこまで書いていないし妄想もしてない。身分剥奪された主人公とテンショウが新たに旅立つって筋書きだからね。つーか、実在キャラでザマァ展開にするのも悪いから……」
リョーコは申し訳なさそうな顔をしてくる。
それはよかったぞ。転落人生歩まされたらたまったもんじゃないしな。
「それで、私たちは自由に動けるようになってそれ以降の展開に影響したかもね」
「本人の前でネタバレしたせいもあるが……」
「そんな~!」
ガックリ肩を落とすリョーコ。
朝起きでそんな事をしていると、イケメン貴族が「おはようございます」と入ってきた。
朝飯を済ませたあと、大聖堂にて聖女ピーチラワーと会ったぞ。
「昨夜の魔貴族による大侵攻について、助けてくださってありがとうございます」
あの聖女が頭を下げてきて、ナッセとヤマミとリョーコは驚いた。
それだけじゃなくテンショウが聖女の横にいるぞ。
「な、なんでテンショウがそこにいるの~~!!?」
「その件については感謝する。おかげで憧れのピーチラワーと婚約できた」
「え?」
目を点にするリョーコ。
「ええ。勇気を出して告白してくださったもの。私もドキドキしております」
「一応感謝する。大侵攻の時に四魔貴族アウトナーを倒してから、聖女の元へ降りる事になった……。その勢いで、な」
「うふふ」
寄り添う二人。イケメンと絶世の美女。お似合いである。
そして見せつけるかのようにキスをしたぞ。チュッ!
「ああああああ~~~~~~!!!!!!」
愕然と膝から崩れ落ちるリョーコ。
ナッセも思わず「たはは……」と苦笑いするしかない。
もはやそっちでフラグが立っちまったか。もう挽回できねーな。
「リア充爆発しろ~~!!」
大聖堂を後に、リョーコは恨みがましく吐き捨てた。
再びホワイデー王宮へ戻った。
なんと銀髪ロングの美しい姫様がにっこり手を振ってきたぞ。
「こきげんよう。兄様、お会いしたいと思っておりましたわ」
「え?」
「ナッセ。あなたの妹であり、第三王子。そして長女。マーレ姫だよー」
リョーコがボソッと耳打ちしてくる。
こっちとしては初めて会うぞ。
そもそもバレンティア王宮にいた頃は、一度も顔を合わせてねーぞ。
「兄様、これまで避けていた事を深くお詫びいたしますわ」
「なぜオレを避けてたんぞ?」
丁重に頭を下げているマーレ姫に、ナッセは困惑して首を傾げる。
「兄様は前々から勝手気ままにフラフラしてて、それが腹に据え兼ねておりましたわ。更にヤマミ令嬢と共謀してリョーコ令嬢を婚約破棄した時から、絶対に顔を合わせないと憤慨して誓っておりましたわ」
「それが今になって??」
「ええ。表面上だけ見て兄様の真意を見誤っておりましたわ。本当は世界の危機を危惧して奔走していましたのね……。せめて私にも打ち明けて欲しかったですわ」
「な、なんというか……すまん…………」
泣きそうな顔でマーレ姫はナッセの胸元に抱きついた。
「なるほどね……。今まで現れなかったのはナッセを軽蔑してたからね……」
「あ、ヤマミ令嬢。これまで悪女と嫌悪していて申し訳ございません」
なんとマーレ姫はヤマミに対しても頭を下げて謝罪してきたぞ。
……婚約破棄する事でリョーコ令嬢を遠ざけて、世界の危機に立ち向かう為べき王太子ナッセと協力関係を築いていたと……。
で、こうして隣国への魔貴族による大侵攻を食い止めたと知って、いち早く来たって事ね。
「そうですよ。でも良かったですね。ナッセ殿」
なんとイケメン王太子ソロアが歩み寄ってきたぞ。キラキラしてて眩しい。
「ええ。私はナッセ兄様を慕う事にしましたわ」
「まぁ……」
「よかったわねー。王太子さん」
「お前な……」
ケラケラ笑うリョーコに、ナッセはジト目。
するとソロアが真剣な顔でリョーコに歩み寄って手を取ってきたぞ。
「リョーコ殿……」
「え? なになにー? フラグ立った!?」
「これは私の気持ちです。ぜひ受け取ってください」
ドキドキ期待するリョーコの手に、ペンダントのようなものが渡された。
リョーコは思わず目を点にする。
「なに……これ……??」
「これ!!! ナセロンがクラスチェンジした時の、あの『証』っ!!?」
「国宝の一つです。誰も扱えず長年倉庫で置いてかれたままでした。しかし勇猛なリョーコ殿なら、きっと扱いこなせるでしょう」
そしてソロアとマーレ姫が肩を合わせて寄り添っていく。へ?
「ようやくナッセ殿をお義兄さまと呼べそうです。こうしてマーレ姫と婚約しましたし」
「えええええええええ~~~~っ!!!!!」
リョーコは飛び上がるほど驚いたぞ。
しかも追い打ちと、ソロアとマーレ姫がキスしたぞ。チュッ!
「あああああああああああ~~~~~~!!!!!!」
ギャグ涙を流して愕然と膝から崩れ落ちるリョーコ。
ナッセは「たはは……」と苦笑いするしかない。
ヤマミはため息。
そっちもフラグが立っちまった。これでイケメンハーレムの夢が崩れ去ったようだぞ。
ずっと落ち込んでドンヨリしているリョーコを尻目に、ナッセたちは大行進パレードに参加してホワイデー国民から大喝采を浴びていた。
結果的にバレンティア王国とホワイデー王国は好友の関係になっちまった。
そもそも双方の貴族が今回の大侵攻に対して、反目し合っていた事を反省したらしい。
それに貴族どもが薄々邪険にしていたバレンティア王太子がすごく強い事に白旗をあげた。
下手に刺激したら自らの立場も危ういからだ。
歓声が轟く盛大な見送りの最中、ナッセとヤマミとリョーコは大きな船で大海へ緩やかに旅立った。
「で、この次はオロナーン大陸へ船旅ね」
「リョーコ?」
「む~~!! 今度こそ、エーテリン王国でショタのエルフ少年とフラグを立ててやるー!!!」
立ち直ったか、リョーコはメラメラ燃えているぞ。
第三のイケメンを我がものとするために!!!
「なんだかなぁ……」
オロナーン大陸へ向かう辺りで、リョーコの小説はエタってるんだよな……。どうなるんだろ?




