55話 「四魔貴族戦!!! ショウヨウ卿の無双!!」
ショウヨウ卿が鎌をひと振りするだけで全ての敵の首を飛ばした。
首を失った英霊奴隷はババババンと木っ端微塵に爆散した。
しかも四魔貴族アウトナーでさえも例外なく、首をはねられて決着したようだぞ。あっけない。
「クッ……クククッ!!!」
「む?」
足蹴しているアウトナーの生首が笑う。
「見破ったり!!! その『冥獄王の黒鎌』は精神世界から対象を切り裂くようだな!! 見抜けぬ者には、一閃だけで防御不可距離無視の不可視攻撃としか見えぬだろう!!」
「腐っても四魔貴族か……」
「それにな!! 忘れたか!?」
なんと生首が赤い雲にズブズブ溶けていく。
《この空間そのものが私だという事をなッ!!!》
彼の言う通り空間そのものが本体。赤髪ボサボサで六つの魔眼を持つ人の姿をしているのは端末でしかない。
しかも大勢の英雄が更に増えていて、多勢に無勢。
それでもショウヨウ卿は以前と涼しい顔だ。
《単純な戦闘力では妖龍の皇爵ビュオネスが最強だろうがな、この特性で真の四魔貴族最強と呼べるのはこのアウトナーよ!!!》
一斉に数千もの英霊奴隷がなだれ込む。
ショウヨウ卿は腰を落として身構える。
激しい衝突音がすると、一斉に数十人もの強者が吹っ飛ばされて爆ぜた。
《なにッ!?》
ザッザンッザザザンッザンッザンッザザザザザンッ!!!!
流れるように次々と英霊奴隷が切り裂かれ続けている。
ショウヨウ卿は黒いマントと長い銀髪を舞わせて、軽やかに鎌を振るって無双していた。鎌を振るうたびに、精神世界からの斬撃で離れていた何十人も裂く。その死骸が連鎖して爆ぜる。
《なんだと……!!? この数を相手にッ!!?》
ショウヨウ卿は涼しい顔で、四方八方から襲いかかってくる英霊奴隷を次々と葬っていく。
しかも左右の腕で振るう二刀流の鎌が踊れば、数十人もの首が飛ぶ。
《おのれッ!!! 怨ッ!!!!》
なんと周囲の赤い雲の無数ある魔眼から光線が放たれる。
照らされると真紅が汚染して操られるヤバいやつだが、ショウヨウ卿はくるくる宙返りして無数の光線を見切って回避してしまう。
何度放っても掠りすらできない。
「このショウヨウ卿を甘く見たなッ!! 災厄の皇爵アウトナー!!!」
駆け抜けながらショウヨウ卿は数百人もの英霊奴隷を斬り飛ばしていく。
「「「「ぐああああああッ!!!!」」」」
切り飛ばされた数百人は次々と爆ぜていった。
これほどの英霊奴隷がいて、なぜ歯が立たないのかアウトナーは動揺するしかない。
まるでドミノ倒しされてるかのように次々倒されていく現実が信じられなかった。
「おまえは分からぬのだな!?」
《なにッ!?》
「……今まで微温い妖魔界で何千年入り浸っていた? どこまで心身腐っていた? 例え優れた英霊奴隷を取り込もうとも有象無象でしかない」
ショウヨウ卿は周囲の英霊奴隷を真っ二つに切り裂き、突っ込んでくるヤツを真正面から一刺しして一斉に爆ぜさせた。
《て、敵がいなかったからだ!! 何万年も、な!!!》
「そこだよ」
《なにぃ……?》
「敵がいないと言いながらも、物質界ではめぐるましく変化を続け多くの強者が歴史を築いていった。その中で自分よりも強い強者がいたにも拘らず、おまえらは無視した。分かっていながらな」
気づけば、あれだけ多くいた英霊奴隷が数十人に減っていた。
それを鎌で一周するように薙ぐと、上下真っ二つに裂かれた後にババババンと爆ぜた。
「しょせん、弱い者イジメでないと戦おうとしない時点で終わっていたのだ」
足元を煙幕が流れ、ショウヨウ卿は澄ました顔で言い放った。
《だ、だが……英霊奴隷は本物と変わら……》
「スペック上では、この上になく再現できてるだろう。だが、残念ながら大勢で叩くだけしかやらない戦い方では半分も力を発揮できてない」
《なん…………だと…………!?》
「おまえにこき使われる英霊奴隷が可哀想だ。成仏させてやらなくてはね」
《お……おのれ……ッ!!!》
するとズズズズと周囲の風景が巨大な塊に丸まっていく。表面の無数ある魔眼がギョロギョロ蠢く。
そう、本体に『深淵殿造』そのもので武装するかのように包んだのだ。
「知った風な事をッ!!! 我が『威伏盛装』楼魔裟我通で散れいッ!!!! 怨ッ!!!」
周囲に震撼をもたらして、無数の魔眼が蠢く巨大な塊から英霊奴隷がニョキニョキ生え出して、それぞれ攻撃を繰り出してきた。
剣や槍で振るったり、広範囲魔法攻撃を繰り出したり、状態異常攻撃を繰り出したり、多種多様な攻撃によってショウヨウ卿を追い詰めようとする。
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……!!!!
周囲に凄まじい破壊を撒き散らして、飛沫を吹き上げ、破片が舞う。これ単騎だけで、いくつか王国を一瞬にして滅ぼせるほどの圧倒的な戦闘力だ。
それでもショウヨウ卿は軽やかに飛び跳ねながらかわしていく。
「いざ巨大化すれば勝てると思ってるのが、一番情けない!!! 怨ッ!!!!」
駆け抜けながらショウヨウ卿は鎌を振るう。
すると魔眼巨塊は四方八方から全身を切り刻まれて、あちこち亀裂からドカンドカン爆発していく。
中にいる本体であるアウトナーは見開いたまま、閃光に呑まれた。
「う、うわああああああああああーッ!!!!」
ドガアアアアアアアアッ!!!!
あえなく魔眼巨塊は木っ端微塵に爆発してしまった。
アウトナーが滅んだ事により、もうもう広がる爆風から数多の魂が四方八方と飛び去っていく。
ショウヨウ卿はテンショウへ戻って周囲を見渡す。残骸が散乱している。破壊し尽くされた妖魔界の屋敷……。
名残惜しい事もなく目を瞑る。
「……もう来る事はないだろう。さらばだ」
ショウヨウ卿は妖魔界と決別し、フッと時空間転移で消えた。
「行くぞおおおおおおおッ!!!!」
「これで終わりよッ!!!」
「スラッシュ・スレイヤ────ッ!!!!!」
ナッセ、ヤマミ、リョーコは獅子奮迅と妖魔大軍勢をことごとく蹴散らしていく。
「「「うわあああああああああああああああああッッ!!!!!」」」
大聖堂の天井が一部破砕されているので、夜空の戦況が窺えている。
ズクケィールードンは澄まし顔で、それを見上げていた。
「……四魔貴族は全滅したようだよ。情けない。まぁ弛んでいたから仕方ないよね」
味方がやられたというのに冷徹な笑みを浮かべるズクケィールードンを、聖女ピーチラワーは厳しく見据えたままだ。




