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痛い自作漫画に異世界転移しちゃったぞ!? そいつはオレに効く! やめてくれぞ!!  作者: ターバン
リョーコの自作小説『没落令嬢ファンタジー』編
50/140

50話「四魔貴族戦!!! 深淵殿造へ招待される!!」

 上空を覆うかのような赤黒いオーロラが揺らめいている。

 ついに四魔貴族が二体現れてきて、怖気走る巨大な威圧が王国中を包んでいるゆえだ。


「あ、あれが伝説とまで言われた……四魔貴族か!!?」

「ええ。まさしく本物です……。まさか実在していたとは……!!」

「お……終わりだ…………!!」


 ホワイデー国王と王太子ソロアは恐怖で震え上がり、絶望に苛まされる。

 妖魔大軍勢を相手に孤軍奮闘するリョーコは切羽詰る。


「そんな!! 今回の流れじゃキュウジンサーだけがボスとして出てくるはずなのに、なんでビュオネスまで出てくんのよー!!?」


 実際に敵キャラとして作ってたリョーコは焦燥するしかない。

 本来ならテンショーと協力して戦い、厄介な能力を前に苦戦しながらもギリギリで勝てたって流れになる。

 それなのに二体も来るなんて予想外すぎる。


「ムリしないでっ!! あたしが加勢するまで、なんとか持ってー!!」


 リョーコは単身奮戦で妖魔大軍勢を無双していく。

 それを尻目に二局の戦いが火蓋を切って落とされようとしていた。

 緊張に強張る聖女(セント)ピーチラワー、そして愉悦に笑う妖魔神ズクケィールードンはそれを観戦。


 妖精王ナッセ 対 吸魂の皇爵キュウジンサー。


 妖精王ヤマミ 対 妖龍の皇爵ビュオネス。



「前々からキラキラ輝いている王子様のようなタイプが大っ嫌いでしてねぇ……」


 睨めつけるような卑しい細目でナッセを見据えながら、ズルリと背中から何かを引き抜いていく。

 まるで底知れない深淵の闇から取り出すかのようだ。


「眩い光さえも飲み込むほどに貪る吸引!!! 生命も魂も希望さえも残らず吸い尽くせ……!! (オン)ッ!!! ソウルイーターソード!!!」

「ええっ?? 何それー!? そんなの設定してないよ──!!?」


 リョーコは自分で作ったキャラなのに、覚えのない武器を取り出してきたからか驚いているようだ。

 ナッセは悍ましいと嫌悪感が催す、あの武器……。

 キュウジンサーが携える大剣は、生き物のようにドクンドクン胎動しながらギョロギョロ複数の目が蠢く。蛇のように長い刀身がヌルヌル揺らめく。

 そんな刃をキュウジンサーはペロリと舐める。


「ヒッヒッヒ……。どぉれ……、貴殿の眩い魂の味は極上の味か……ご馳走になるかぇ……」

「古の勇者の血が叫ぶ!! 魔を滅ぼせし雄大な魂を具象化せし聖剣となれ!!! ブレイバーセイントソードッ!!! そして太陽の剣(サンライトセイバー)ッ!!!」


 ナッセは聖剣を具現化させ、それを太陽を模した大剣で包んで生成して超強化。

 毅然とキュウジンサーと対峙する。

 七つの魔王フレアネスドとは全く違うキャラではあるが、強敵なのは変わりないはず……。



 ヤマミも切羽詰った顔でナッセとキュウジンサーを眺めている。


「そっちの心配とは余裕ね……」


 とぐろを巻くかのように空で浮いている長い龍は睨めつけるような視線でヤマミを射抜く。

 ヤマミはキッと振り向く。

 彼女もリョーコが作ったらしい敵キャラ。妖龍の皇爵ビュオネス。

 ひしひしと伝わってくる圧倒的な威圧……。


「どうかしらね? そっちはキュウジンサーさんを心配しないわけ?」

「するわけないでしょう」

「冷たいわね」

「フフッ。我らは妖魔界でトップに立つ四魔貴族。それに相応しい者がなれる最高位。もしキュウジンサーが万が一敗れるとしたら、代わりなんていくらでもいるからね」


 仲間意識なんてない、と冷たくあしらうビュオネス。

 ヤマミは目を細めて「そう」と素っ気ない。


「それより、私が貴方を指名したのは戦う為ではない……」

「お誘い?」

「そうよ」


 さっきからビュオネスは戦意を引っ込めているのだ。戦う意志がない事をあらわにしている。


「貴方のような闇の者を殺すには忍びないと思ってね……。貴方の心には底知れない深淵の闇がある。我ら四魔貴族になるに相応しい素質を持っている」

「それで?」

「あんな下賎な妖精王のガキや家畜同然の女とは貴方に不相応……。我ら高潔な魔貴族にこそ相応しい闇の妖精王。さぁ、我らと永遠の闇を築こうではないか?」


 ビュオネスにとっては好意的に手を差し伸べているつもりだった。


「言っちゃいけない事を言ったわね……」


 怒りを滲み出すように黒い闇を巨人のように象って『偶像化(アイドラ)』がズズズズと聳えていく。

 ヤマミの突き刺すような冷酷な両目がビュオネスに怖気を走らせた。


「あら? なにか失礼な事を言ったかしらね?」

「仲間意識を持たないのもさる事ながら、愛しいナッセを下賎なガキと侮辱した時から、既に決裂よ……」

「あんなガキを好いているなんて堕ちたものね」


 ビュオネスも冷めた目でヤマミを侮蔑する。

 それでもヤマミは揺るがない。


「堕ちたとも思っていない」

「ふ……、貴方は必ず後悔するわよ。あの光の妖精王と仲良くだなんて、愚かしいにも程がある。あのガキは必ず貴方を嫌悪し忌諱するようになるわ……」

「それがどうしたの?」

「はぁ!!? 貴方はまるで分かっていない!!! 光と闇は決して相容れない!! 必ず摩擦を起こし、亀裂を大きくしていく!! いずれあのガキと埋められぬほど隔てりの溝を作って、後悔する事になるぞッ!!?」


 しかしヤマミはフッと一笑に付す。


「もう通り過ぎたわ……!! とうの昔に、ね」

「なん……だと……!!?」

「ナッセとすれ違って仲違いして死ぬほど後悔したわ。でも、それでも諦めるなって師匠が背中を押してくれたから、今こうして繋がれている。好いてくれる。それだけで幸せよ……」


 快く笑んで強い信念を窺わせるヤマミの視線に、ビュオネスは嫌悪し相容れないと悟った。

 もはや引き剥がす事は不可能。



「「招待せよ……!!! 深淵殿造(しんえんでんづくり)!!!! (オーン)ッ!!!!!」」


 キュウジンサーとビュオネスは揃って丁重にお辞儀すると、豪勢な装飾が施された屋敷の室内が広がっていって、ナッセとヤマミそれぞれを引き込んでいく。

 ある種の結界空間のようなもので、対象者を引きずり込んで嬲る為のもの。


 キュウジンサーは体内のようなドロドロした貴族部屋。

 ビュオネスは赤紫の豪勢な貴族部屋。

 亜空間だからか、常にジュワジュワ広がりうつろいゆく。


 しかしナッセとヤマミは笑む。


「ありがとう。都合がいいぞ。これなら王国に被害を及ぼす心配はない」

「感謝するわ。ここで思い切って全力を出せるから」


 貴族部屋に包まれてもなお、逆に安心するナッセとヤマミに、キュウジンサーとビュオネスは苛立ちを覚えた。

 鼻につくような余裕が気に入らないとでも言うように。


「「ムカつく!!! 直に後悔させてやるわ!!!!」」

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