49話「ついに妖魔界最強の四魔貴族が加勢!!?」
「ロォ────リングゥ・デストロイヤァァ────ッ!!!!!」
前転宙返りしていたリョーコが渾身で天照大神斧を振り下ろし、絶望の死霊王を豪快に真っ二つにしたぞ。
そんなありえない光景に、敵味方関係なく誰もが目を丸くして驚くしかない。
ドパアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!!!
絶望の死霊王は爆破四散して、数千数万もの魂が四方八方へと虚空へ溶け消えていった
一体どれだけの魂を使っていたのか計り知れないが、これで全部成仏。
せっかく長年かけて貯蔵してきた数千数万ものヒトの魂がぜーんぶ台無しになったのだ。
「「「あ……ああっ…………あああああぁぁぁ…………!!!」」」
青ざめ、動揺しまくって上ずっていく魔貴族たち。
「う……嘘だ……!!! あ、ありえない……!!!!」
「悪夢だ!!! こんなの絶対なんかの間違いだ!!!」
「こんな一瞬にして絶望の死霊王がやられるなんて、我らは夢でも見ているのであろうな!!!?」
「なんでだよ!!! ありえねぇ!!! 奴らは苦し紛れに幻術を仕掛けているんだろう!!!」
「馬鹿な!!! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!!!」
「他のヤツが手抜きやがったな!!! でなけりゃ、こんな簡単に倒されるはずがないんだ!!!」
「馬鹿言え!!! こんな状況で誰が手を抜くかーッ!!!」
「では、まさか……!!! あのヒト風情が一人でッ…………!!?」
今度は妖魔大軍勢が混乱へ陥っていく。
大勢の魔騎士はいきり立って「ええい!!! このまま終われるか!!」と再び王国へなだれ込もうとする。
ズクケィールードンがお膳立てしてくれたのに、人々を阿鼻叫喚の地獄に突き落とす事はおろか、王国の建造物を破壊すらできていない。
全くの被害ゼロなのだ。
「うぬぬ!!! そうだァ!!!」
「これだけ精鋭の妖魔大軍勢五万で攻め込んでおるのだッ!!」
「もはや半数近くが撃墜されて、ヒトの国に指一本触れられぬとは、歴史的赤っ恥ではないか!!!」
「物質界で領地を広げ、支配神ルーグに反逆する壮大な侵略計画!!」
「こんな序盤で躓いてたまるかアアアアッ!!!」
「「「「怨ッ!!!!」」」」
躍起になって魔貴族は劣勢でもやぶれかぶれと進軍を開始する。
しかし、それを頓挫させる事実を突き付けられる事になる。
「おおおおおおッ!!!」
「やあああああッ!!!」
なんとナッセとヤマミが気合いを入れて凄まじい高次元オーラを溢れさせていく。
魔貴族どもが絶句する最中、ナッセは白銀のロングを舞わせ、ヤマミも瞳に月マークが浮かび、揃って背中から四枚の羽が広げられる。
もともと高かった威圧が更に膨れ上がっていく。
「これが妖精王だッ!!!」
純白の妖精王ナッセと、漆黒の妖精王ヤマミがついに真の姿を現した。
魔貴族と大勢の魔騎士が「それがどうした──ッ!!!」と襲いかかる。
夜空が爆発の連鎖で覆い尽くされていく。
ドガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!
裂けて赤黒い亜空間を覗かせている。そこに二体のシルエットが両目を輝かせている。
「ホホウ、あの三人……いいですなぁ……」
舌舐りしてニチャアと気持ち悪い笑みを見せる、吸魂の皇爵キュウジンサー。
四魔貴族が一人、貪欲に生きとし生ける者の魂をエサとする恐るべき魔貴族。
細長い宇宙人みたいな形状で卑しい目が特徴。猫背で四本の腕。モヒカンのような黒髪。
「銀髪のガキは貴殿で始末しろ」
「……言われなくとも」
「私は、あの黒い女をやる」
妖龍の皇爵ビュオネスは澄ました龍の顔でヤマミを見据えている。
誇り高い魔龍族としてプライドが高い最強格である魔貴族が一人。戦闘力において四魔貴族の中でも群を抜いている。
紫のグラデーションの長い龍。翼のようなのがあちこち生えている。
ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ……!!!!
妖魔大軍勢と戦っていたナッセとヤマミとリョーコは、膨れ上がってきた威圧に戦慄する。
上空の夜空を絶望で覆うかのように、赤黒いオーロラが揺らめき始めていく。
「なっ、なんだぞ……!!?」
「見て!!」
妖精王ナッセとヤマミはほおに汗を垂らして、二体のシルエットを視界に入れる。
細長い宇宙人みたいな巨体と、紫の長い龍だ。
ビリビリと肌に響いてくる圧迫感溢れる威圧。あの七つの魔王クラスだ。
「まさか七つの魔王がッ!!!?」
ナッセは予想外だ、と息を呑む。
「心外だねぇ……。あんな魔族と一緒にされるとはねぇ……」
吸魂の皇爵キュウジンサーが「ヒッヒッヒ」と薄気味悪く笑う。
ナッセはどことなく怖気を感じた。殺意はもちろん尋常じゃない悪意が当たり前のように滲んできているのだ。
まるで人殺しを娯楽かなんかだと思えるかのような……。
「まずは腹ごしらえ……、いただきま~~すぅ!!!! 怨ッ!!!」
ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……!!!
そして口を窄めて息を吸い込んでいく。すると下の王国の人々が次々と昏倒して、白い人魂が抜け出てくる。
何十万もの人魂が一斉にキュウジンサーへ吸い寄せられていくではないか。
まさかの大量殺戮に驚かざるを得ない。
「ナッセェ!!!」
「ああ!!! 攻撃無効化ッ!!!!」
咄嗟にナッセは手をかざす。暖かい光の波動が広範囲へ薄く伸ばされるように広がっていく。
キラキラと光礫を撒き散らしながら何十万もの人魂を逆戻りさせて、下の肉体へ還して生き返らせていった。
「チッ」
キュウジンサーは食事を邪魔されたと不機嫌になっていく。
それを厳しく睨み返すナッセ。
「お前はここで倒させてもらうぞ!!! キュウジンサー!!!」
「愚者が……!!!!」
ナッセはキュウジンサー、ヤマミはビュオネスと対峙する事になった。




