32話「ライバル同士の決着!! 勝利はどっちだー!!?」
上空でナセロンとブラッドが回転切りで競り合う事で、二つの巨大な旋風型の衝撃波が唸りを上げていた。
クラスチェンジしたそのパワーは天災に等しい。
台風と台風が激突しているかと思うほどの規模に、観客も驚愕する。
「うおおおおおおおおおッ!!!!」
「フンヌウウウウウウウッ!!!!」
渾身の力で打ち合って得物をガギィンと交差させ、爆ぜた衝撃波が二人の体をビリビリと貫く。
「「グッ!!!」」
その激突により爆ぜた衝撃波が、二つの旋風をも吹き飛ばして振動と轟音が周囲に響き渡った。
下方の闘技場にもビリビリと響いてきて観客も盛り上がっていく。
「「「どわあああああああああああああああああああああああッ!!!!!」」」
ナセロンとブラッドは吹き飛ばされて間合いが離れていくが、体勢を整えて空中でキキッと止まる。
「ううッ!!」
「くっ!!」
呻く二人の間で、なおも旋風の余波が吹き荒んでいた。ブオオオオ……!!!
「フン……!! さすがはオレが認めたライバルだ!!」
「ああ!! 俺……ボクもそう思う!」
互い血塗れで衣服が破けてて満身創痍。ハァハァ……と息を切らし始めていた。
それでも二人の闘争心は更に鋭さを増していて、眼光がカッと煌く。
「これで決着をつけてやるッ!!! 秘奥義!! 降魔・大魔神剣──ッ!!!!」
「うおおおおッ!!! ボクの盾よッ!! 荒ぶる魂に応えて光輝け!!! ルミナス・パースリーシールドォッ!!!!」
ナセロンは腕を交差して、その前方に大きな三芒星型の光の盾が唸りを上げながら具現化されていく。
一方でブラッドが放った黒い渦が膨らみ、台風のように黒刃の嵐を四方八方と撒き散らす。
広範囲全てを粉々にするほどの絶大な威力が、ナセロン一人へ覆い被さっていく。
「うおおおおおおおおおおおおお────ッ!!!」
ナセロンは三芒星型の盾で堪え続け、血飛沫を噴きながら徐々に傷を負っていく。
延々と続くかのような無慈悲な黒き刃の嵐が蹂躙し続け、次第に漆黒の台風が過ぎ去っていった。
「ま……まさかッ……!!? オレの秘奥義を耐えた……だと…………ッ!!?」
「こ、今度は耐えきったぞ……!!! ブラッドォ!!」
三芒星の盾も所々欠けているが、それでも毅然と堪え切ったナセロンが姿を現した。
最終奥義を破られた、とブラッドは汗を垂らして驚愕するしかない。
限界だったのか光の盾は砕け散り、ナセロンは残った力で天高く飛び上がる。剣を振りあげて、一気に急降下。
「ルミナス・フォォォ────ルッ!!!!」
ナッセのフォールを意識したかのように、渾身の力で振り下ろす。
それでもブラッドは「フンヌウウウッ!!!」と漆黒の剣をかざして黒刃を発生しつつ受け止めた。しかし押し切ってブラッドの頭上から一直線と斬り下ろす。
「まだだーッ!!! Vライジング!! ルミナス・ライズ────ッ!!!!」
なんと振り下ろしから繋げた斬り上げによるV字を描く軌跡が、ブラッドのアゴに炸裂して吹き飛ばす。
二回連続で繋げた威力は、単発技の四倍にも跳ね上がる。
「ぐがあああああああッ!!!!」
宙を舞ったブラッドは白目で吐血。しかし憤怒の形相で歯軋りする。
「負けるかあああああああッ!!!」
意識が飛びそうな大技を受けてなお、ブラッドは堪えて大振りのひと振りで巨大な黒刃を放ってナセロンに直撃させて大爆発。
それでもナセロンは爆風を抜け出して、死に物狂いとブラッドへ飛びかかる。
互いにノーガードで斬り合う凄惨な激突になった。
ズガッ、バシュッ、ズバッ、ザシュッ、ガズッ、ザンッ、ズババッ!!!!
「それでも……ボクは負けないッ!!! 天下無双を目指す為にッ!!!」
「オレも今ここで目的を見いだせたッ!!! 世界をも震わせるほどの大魔王になってやるぞおおおおッ!!!!」
天下無双を目指すナセロンに倣って、ブラッドも大魔王という最強の称号を手に入れようと強い目的を作り出した。
これまで強い敵と戦って打ち倒す楽しみしかやってこなかった男も、最強にとりつかれて燃え上がったようだ。
しかし互いが硬すぎて斬撃でもなかなか致命傷には至らない。故に決着は遠い。
「これで終わりだああああッ!!! 降魔・深淵刺殺剣──ッ!!!」
ブラッドは最後の力を振り絞ってオーラを纏った突進の突きを放つ。
咄嗟にナセロンは光の剣で正眼に構える。
「バカが!!! オレが最後繰り出す執念の一撃を、多少の迎撃などで防げるものか──ッ!!!」
「喰らえーッ!!! これが土壇場で編み出す、ボクの新たな技だーッ!!!」
「なにぃッ!!!?」
ブラッドは見開く。
ナセロンが五芒星を描く超高速斬撃を繰り出し、それがナッセと流星進撃が重なって見えたからだ。
「ルミナス・Ⅴトラジェクトリ────ッ!!!!」
五芒星に描かれた強烈な斬撃がブラッドに炸裂して、空が激震した。
「ガハアアッ!!!」
白目で盛大に吐血したブラッドはそのまま闘技台へ強烈落下して、大の字で失神。シュウウと舞った煙幕が流れる。
息を切らしながらナセロンは見下ろして勝利を実感していく。
「見たか兄さん!!!! ボクは勝ったぞおおおおおお────ッ!!!!」
嬉しさのあまりナセロンは歓喜の笑みで剣を突き上げて叫んだぞ。
観客も「わああああああああああッ!!!!」と大音響で盛り上がっていく。
《死に物狂いでブラッドを打ち破った!!! 聖騎士ナセロンの勝ちだ────ッ!!!》
大歓声で湧いている最中、黒いマントで覆う三メートル強の大男は満足そうにニヤリと笑んだ。
ナセロンとブラッドの激戦を見届けて、何かを見出したようだ。
「フハハハハ~ッ!!! 次世代はなんと頼もしい事か!!!」
踵を返して去り、そのまま姿を消してしまう。




