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31話「準決勝戦!! ナセロン vs ブラッド!!」

 ナッセとの最期の戦いに命の全てを出し尽くしたビクターは初の黒星で生涯に幕を下ろした。

 遺体として、控え室の黒い台の上でビクターが仰向けで寝かされていた。


「兄さあああああああああああんっ!!!!!」


 ナセロンは嗚咽(おえつ)して泣き崩れていた。

 ビクターは本当に安らかに逝ったのだろう。これまで闘争心を剥き出しにしていたとは思えない穏やかな寝顔だ。


「ビクター!!?」


 バタンとドアが開かれて母と妹が悲しげな顔を見せて現れた。

 そのままビクターへ駆け寄り、震えながら泣き崩れていく。妹のティラミスはわんわん泣き出す。

 それをナッセとヤマミは静かに見守っていた。


 ──漫画とは違う展開だが、大体同じ。

 相手がナッセになっただけで、本来は魔王の養子ユウリュウってヤツと戦って命を賭けて勝つ展開だった。

 ユウリュウはそれに心を打たれてナセロンの仲間になる。

 だが、そのユウリュウの存在は影すら見当たらない。


「ユウリュウっても、元は某金属生命体のパクリだもんなぁ」

「出てこないのは何故かしらね?」

「オレたちが現れたせいで消えたのかもな……」


 すると両目部分を影で覆うナセロンがこちらへ歩いてきた。

 俯いたままで表情が窺い知れないが、果たして兄貴を結果的に殺してしまった恨みで沸いているのだろうか?


「……仇討ちてぇなら受けて立つぞ」


 しかしナセロンは俯いたまま首を横に振る。


「ボクの兄さんは、最期の相手をおまえに選んだ。それに戦いは生死を左右するもの。悲しいけど覚悟こそすれ、恨むだなんてできっこない」

「そうか」

「おまえはボクに戦わせたかったようだが、兄さんは拒否した。それが全て……」


 握り締めている拳が震える。

 それもそのはず、ナッセはわざと遅刻してビクターを不戦勝させてナセロンと最期の戦いをさせようとしていた。

 しかし遅刻を許してまで、最期の相手をナッセに決めた。

 これは紛れもなくビクターの意志。


「だから、ボクはおまえを越えたい!! いつかッ!!」


 俯いていた顔を上げ、真剣な顔でナッセを見据える。

 恨みで睨んでいるのではなく、目標を掲げて目指そうとする真摯な視線だった。


「受けて立つぞ。ナセロン」

「ああ」


 清々しい顔だ。吹っ切れたようでよかった。




《三回戦を始める前に、新たに告知があります!!》


 観客の歓声が音響する。

 トーナメントが新たに表示された。そこはなんと偏ってたはずの対戦が変わっていた。

 本来ならナセロンはブラッド、ナッセ、匿名希望者と勝ち抜き戦みたいになっていた。高位魔族アンゼルヌークが棄権しなければ対戦は更に多くなっていた。

 それを変更して、ブラッドとナセロン、ナッセと匿名希望者と三回戦こと準決勝戦となった。


「ふっふっふ。アンゼルヌークも殊勝になったから、ひどい偏りもなくなったな」

「はい」


 支配神ルーグは喜ばしいと笑み、アンゼルヌークも真面目に頷いた。

 もはや私欲で動く事はもうないだろう。

 雨降って地固まるっていうか……。



《では三回戦改め、準決勝戦を始めます!! 聖騎士(パラディン)ナセロン選手と暗黒君主ダークロードブラッド選手、闘技場へ!!》


 吹っ切れた顔のナセロンとブラッドが闘技台の上で対峙する。

 嵐の前の静けさ。しかし今かと溢れ出さんばかりの闘志が漲っているのが分かる。


「「クラス!!! チェンジ!!!」」


 ナセロンとブラッドが揃って叫び、一方は光柱が天を衝き、かたや漆黒の旋風が渦巻き、二つの威圧が増大していく。

 聖騎士(パラディン)に変身したナセロンと暗黒君主ダークロードブラッドが今度は武器を具現化させる。


「不遜なる神を断罪すべき、軌跡を描いて切り裂け!!! 神殺しの光輝よーッ!!!! ゴッドスレイヤーソード!!!」

「愚か者どもを駆逐すべき、黒の閃を描いて切り刻め!!! 愚滅の漆黒よーッ!!!! カラミティイビルソード!!!」


 ナセロンが光の剣、ブラッドが漆黒の剣、と相対する魔剣を構えた。


「「行くぞッ!!!!!」」


 超高速でぶつかりあい、得物が交差する。ガキィィィンッ!!!

 途端に凄まじい衝撃波が爆ぜて大規模に広がっていった。

 その爆風を抜け出し、二人は上昇しながら剣戟を交錯させ、大気の破裂が連鎖し続けていった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

「フンフンフンフンフンフンフンフンヌッ!!!!」


 光の剣と漆黒の剣が激しく打ち合って、空のあちこちで激突の連鎖が覆っていく。


「降魔・黒刃剣!!!」


 ブラッドが漆黒の三日月を連発し、ナセロンは左右交互に避けていきながら間合いを縮めていく。

 懐に飛び込んだナセロンの一太刀が腹を穿ち、ブラッドの漆黒の三日月が腹を裂く。互い同士討ちみたいになって「ギバッ」と揃って吐血。


「うおおおおおおおおおおおッ!!!!」

「フンフンフンフンフンフンッ!!!!」


 それでもナセロンとブラッドは必死に得物で打ち合う。空に轟く激しき剣戟音。

 なおも互角に激突し続けている。


「このナセロンも!!! 命を賭けて!!! 戦うッ!!! そして天下無双の領域へッ!!!!!」

「面白い!!! 貴様はナッセのついでと思ったが、とうとうついに認めてやろう!!!! 紛れもなく心躍る宿敵だッ!!!」


 カガッ!!!!


 二つの巨大な剣閃が衝突し合って交差(クロス)になり、周囲が激震していく。

 なおもビリビリと双方の全身を突き抜けていく。

 それでもナセロンとブラッドはカッと闘志を漲らせた。


「うおおおおッ!!! カミナリセップウッ!!!!」

「フンヌウウッ!!! 降魔・螺旋穿剣ッ!!!!」


 ナセロンとブラッドの回転切りが火花散らして激しく競り合う。

 周囲に旋風型の衝撃波で吹き荒れて始め、まるで二つの台風が激突しているかのような壮大な余波に広がっていく。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………!!!!!

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