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30話「兄ビクターが人生を賭す、最期の戦い!!!」

 妖精王ナッセと闘魂王(バトルキング)ビクターが互角に戦っているのを、ニーナは睨むように観戦していた。


「第一王子である王太子ビクターがこれで終わりなのは、喜ばしいところだけれど……」


 どこか納得いかないとモヤモヤが胸につっかえている。

 かつて、金色の破壊神としての力を分割されてて不完全とはいえ、ヤツと痛み分けになったのは思い出したくもない。

 皇帝ライティアスならともかく、その息子であるビクター単騎に負けたようなものだ。

 第四王子にあたるナセロンが我が半身と確信を持って、皇帝が不在のタイミングで襲撃したのに、王太子のレベルなどタカが知れていたのに、ヤツは死に物狂いになると恐ろしい力を発揮してきた。

 寿命を削るような戦いに久しぶりの恐怖を覚えた。金色の破壊神として恐れるなどあってはならない。


「勝ち逃げしたわね……! この前も、そして今回も!!」


 こんな大会でヤツが命を落としたとて、こちらが溜飲を下げられるわけでもない。

 いつかは完膚無き敗北を味わせてやろうと思っていた。


「チッ!!!!」


 今度は妖精王ナッセに、その意志が受け継がれる事だろう。

 それはナセロンの意志にも影響をもたらしかねない。怖気すら走る。




 ビクターの目にも留まらぬラッシュと、ナッセは太陽の剣(サンライトセイバー)の剣戟が激しく激突を繰り返していく。


「カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカァーツ!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」


 それだけで足元は凄まじい衝撃波で爆ぜ続け、地盤が捲れ上がっていく。

 そんな盛り上がりに、観客の歓声が沸いた。


「兄さん……!!」


 ナセロンはどこか胸が締め付けられるような気持ちを初めて覚えた。

 これまで勝つ為に殺しも当然の弱肉強食に身を置いてきた。故に、誰かの生き死になんて勝敗でしかないと思っていた。


完全勝利一撃(ヴィクトリーワンパン)──ッ!!!!」

「サンライト・ローリングフォール!!!」


 兄とナッセの必殺技が激突し、衝撃波が大規模に爆ぜた。

 伝わってくる凄まじい激震。


 ナセロンは感じていた。


「兄さん……! ナッセ……!」


 傍から見れば、雌雄を決すべき手に汗を握る勝負をしているようにしか見えない。

 しかし、どことなく勝敗とは別の理由で戦っているように思う。

 死に物狂いで勝ちをもぎ取らんとする兄だが、相手のナッセには叩き潰す意志を向けていない。


「二人とも、がんばれ……!!」


 ナッセも最初はウザいヤツだと思ってたのに、なぜだか応援したくなる。

 単純に強いからではない。

 七つの魔王を圧倒するほどの実力なのは驚いたけど、ナッセはその強弱と勝敗に目を向けていないのが分かる。

 ふんぞり返るどころか、威張ったりも、鼻にかけたりもしない。

 まるで弱い一般人みたいに振舞う。


「がんばれ!!!!」


 二人とも全く勝敗にこだわっていないのに、ものすごく強い。

 だから心の底から応援してしまいたくなる。

 そして不思議と心から沸き上がってくる闘争心。それは敵を叩き潰したいという意志ではなく、自分が認めた者を乗り越えたいという純然たる意志……。


「兄さん!!! ナッセ!!!! がんばれえええ────ッ!!!!!」


 いつか、ボクも彼らのようになりたい!!!

 それはきっとボクが最終的に目指したい『天地無双』なのかもしれない……!!




 ビクターは、ナッセが純粋な心を持ちながらにして強い事が嬉しかった。

 やはり戦って良かった。人生最期にナッセと戦う事を選んだのは間違いではなかった。


「全ての命を賭けて勝ぁ────つ!!!」


 ビクターは激しく凄まじいオーラの尾を引きながら、ダブル型に輝きを放つ両拳の(ブイ)型の大刃を突き出して超高速突進する。

 周囲に破壊をまき散らしながら一直線とナッセへと目指す。


 ズゴオオオオオオオオオオオ────ッ!!!!


 ナッセ。ヤツは勝敗になんか目もくれもしない。

 きっと乗り越える壁としか思っていないのだろう。だからこそ戦いたいと思った。

 これまで戦ってきたヤツらは勝利が全て、強さこそ全て、という野心を抱く人が自分を含めて多かった。


「こっちも負けられねぇッ!!!」


 ナッセは周囲から無数の光子を太陽の剣(サンライトセイバー)に収束させていって、螺旋状の装飾を備えた一本だけまっすぐ長く伸びる一〇メートル強の刀身へと変貌させた。

 まさしく宇宙で雄大な銀河を模している超巨大な剣だ。凄まじい威力が伝わって来る。


「これがオレの銀河の剣(ギャラクシィセイバー)だッ!!!」


 ビクターは察した。

 ここまで純粋な心を持ちながら、これほどの戦闘力を持ち得たのか……?

 ナッセには、きっと相手を思い通りにしたいとか叩き潰したいとか、そんな気持ちなどないだろうな。

 自分の夢を叶えるべき絶対に負けないように、自ら理想とした強さを極めようとしているんだ。

 だから、あれほどの奥義を極められた。


 きっとそれ以上の強さへ駆け上っていくのだろうな……。


「見さらせ!! これが!!! オレの生き様だァ────ッ!!!!」


 弟ナセロンには、この戦いだけは最期に見せてやりたかったんだ。

 無敗を誇る兄のオレではなく、ナッセのようになって欲しいと願って……。



「おおおおおおおおおおおおおッ!!!!」


 そう裂帛の気合いで吠えたナッセは銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を居合抜きのように構え、最強最速の横薙ぎ一閃を放つ。

 稲光を伴って、全てを薙ぎ払うような巨大な剣閃が広がる。


「三大奥義が一つ『賢者の秘法(アルス・マグナ)』!!! ギャラクシィ・シャインスパァ──クッ!!!!!」

「だがオレが絶対に勝ァ──つ!!! 絶対勝利双撃アブゾリュート・ウィン・カーツ!!!!」


 ガッッ!!!!!


 激しく激突し、爆ぜた閃光で全てを眩く覆った。

 荒れ狂った衝撃波で闘技場を満たし、遥か上空へ昇っていって火山噴火のような大規模な噴出がぶちまけられた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!


 煙幕がようやく晴れると、ナッセに抱きつくようにビクターは安らかな顔でもたれかかっていた。

 もはや自分の命も力もありったけ出し尽くし、人生悔いなしと……。


「あとはナセロン! お前の時代だ!! 後悔しないように頑張れよ!! じゃあな……!!!」


 そんな兄の微かな声が伝わってきて、ナセロンは溢れる感情で震え上がっていく。

 まるでバトンを渡されたかのような感覚に、熱い悲しみが心を満たした。


「うっ……!! ううっ……!!! うううぅぅ…………!!!!」


 肩を震わせ、次第に嗚咽(おえつ)していく。



《凄まじい激闘の果てに、妖精王ナッセの勝ちだ────ッ!!!》


 ナセロンの悲しみとは裏腹に、観客の歓声が大音響していく。

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