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3話「盗賊団のボスは女子高生!!? なんで!!?」

 食堂でナセロンとニーナは昼飯を平らげていた。

 その近くでナッセとヤマミも注文した料理を食べていた。


「へぇ~。だからわざわざ武器を持たなくてもいいって事ね」

「うんっ。ケガがないみたいでよかったー」


 ナセロンは魔剣を具現化できるので武器いらずだ。


「あなたの刻印(エンチャント)で生み出す剣と似てるわね」

「そりゃな……」


 本当はどっかの設定をパクってきたとは言えない。

 そもそも学生の頃に描いてた趣味満載の自己満足漫画だ。

 実際は「ライトよー!」で光の刃出して斬りつけるファンタジーの剣士と、剣を握ると人斬りになる二重人格を足してる。

 口が裂けてもヤマミに言えねぇ……。

 これまでを暴露すれば「最低ね……。こんなつまらない漫画描いてたなんて幻滅したわ……」で破局しそう。

 ここは自分も知らない異世界だと最後までしらばっくれるしかない。

 せっかくできた彼女と別れたくねぇ!!


「そちらの方はナッセとヤマミっていうのね」


 なんとニーナが笑顔で振り向いてくる。


「あ、ああ……」

「ナセロンとは会ったばかりよ」

「うん、そーだよー。ナッセ兄さんはボクの名前と似てるんだー」

「ぐ……偶然だねー。はは……」


 乾いた笑いしてナッセは目を逸らして気まずそうだ。

 自分の名前を入れたから似てて当然である。


「ふふっ。私と一緒に冒険しない?」

「もちろん!」


 ニーナの提案にヤマミが乗っかかる。


「え?? ヤマミ……?」

「彼女ならなんか知ってるかも!? 魔法の知識詳しそうじゃない?」


 女魔道士ニーナがどういうキャラなのかは知っているので、ナッセは冷や汗タラタラだ。

 ヤマミは何も知らないから提案につられているのだろう。


「オーッホッホッホッホッホッホ!!!」


 突然甲高い笑い声が食堂にも響いてきた。

 ナッセは頭を抱える。

 表に出ると、盗賊が数十人もぞろぞろと練り歩いて来ていた。そして後方で女子高生を台に乗せて担いでいる盗賊四人。

 女子高生は優雅に正座してて扇で口元を隠している。


「よくも可愛い部下を可愛がってくれましたわね」


 ファンタジー世界に女子高生がいるのは明らかに違和感ありまくりだ。


「なぜ女子高生……?」

「聞かないでくれ。頼む……」


 ヤマミの疑問に、ナッセは死にそうな顔で悶えていた。


「わたくしは盗賊の女頭領、そして最強の女子高生ミッチーよ!!」


 ファンタジー世界には違和感ありまくりのセーラ服で金髪ボサボサロングの女子高生。

 実は同じ学校の三股かけてた女子高生をモデルにしてたからとは言えない……。

 取っ替え引っ替えで彼氏を変えたり、三人ぐらい彼氏を掛け持ちしてたりで悪名高い。だから悪役にしようと思い立ったわけだ。



「ホッホッホ! そこのガキが可愛い部下を可愛がってたようだから、遊んであげなさい!!」

「「「おおおおおおおお────ッ!!!!」」」


 女子高生ミッチーが扇を突き出すと、盗賊たちが殺気立ってなだれ込んできた。


「不遜なる神を断罪すべき、軌跡を描いて切り裂け!!! 神殺しの光輝よーッ!!!!」


 ナセロンは右手を振ると、バチッと稲光が走って鍔と柄が具現化されていき、それを握る。そして光の刀身が噴き上げられる。


「行くぞ!!」


 人が変わったナセロンは素早く駆け出し、ひと振り、ふた振りで無数の盗賊団が宙を舞った。

 光の軌跡が描くたびに次々と盗賊は白目で斬り殺されていく。

 そして女魔道士ニーナにも盗賊たちが殺到する。


「ふふっ! 懲りないわね! 下位階梯の精霊魔法『地爆衝(チバーン)』!!」


 突然、地盤が噴き上げて盗賊たちを吹き飛ばす。

 それでも後続の盗賊は物量で押さんばかりに、勢いは衰えない。


「今度は中位階梯の精霊魔法『火炎球(カエンボール)』!!!」


 火炎球を撃ちだして、それが爆散して複数の盗賊をまとめて焼き焦がしていく。

 数十人も屠ってしまい、町人は戦慄せざるを得ない。

 遠慮なく殺傷する主人公ナセロンとヒロインらしきニーナの活躍で、盗賊団は皆殺しされた。


「すごいわね……」

「うあああああ……、あの頃のオレを殴りてぇ……。殺戮上等な展開アアアア!!!」


 迫力のあるバトルシーンを描きたくて、血飛沫の演出として黒インクを飛ばして描写したのだ。

 当然、殺しは当たり前の世界観。

 グロい盗賊団の死屍累々を容赦なく描いてた身としては悶えるしかない。


「いずれ“天下無双”となる騎士(ナイト)ナセロン!」

「世界最強の天才と恐れられた魔道士(マジシャン)ニーナ!」


 そんな二人が威風堂々と名乗りを上げた。

 女頭領ミッチーは「ぐ……」と歯軋り。ニーナはそれを見据える。


「賞金首としては九〇〇〇キンとなる、ちょっとした極悪人ね」

「そう! このガロンナーゼ大陸を回ってきた歴戦の女子高生ミッチーさまよ!」


 不敵な笑みでミッチーは二人へ歩み寄る。

 そして「ガトオォォォーっ!!!」と女子高生らしからぬ気合を入れてきて、オーラが吹き上げられていく。ボサボサロングが舞い上がる。

 なぜかオーラを纏う歴戦の女子高生ミッチーである。

 ナッセは「ぐわああ……!!!」と悶えたままだ。


「伝説の魔剣を生み出せるのはあなただけじゃないのよ! 数多なる無法者どもを無慈悲な楔で穿て!!! 殺意にまみれた銃剣よ!!!」


 なんと追加で女子高生ミッチーは右手にサーベル状のきちんと整った光の剣が具現化された。


「あれは……!? やはり魔剣『ガンソード』!!!」

「それはなんだ?」


 冷徹なナセロンにニーナは頷く。


「千人以上も人を斬り殺してきた女子高生でのみ具現化できる魔剣!! まさか、この目で見られるとはね!!」

「やめて!! その設定痛いから!!」


 ナッセは「うあああああ」ともんどり打つ。

 ヤマミはクスッと微笑む。

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