24話「妖精王ナッセ vs 煉獄竜王フレアネスド!!!」
《七つの魔王が相手では、どんな選手も敵わないでしょう!! しかしナッセ選手は棄権しないようです!! 大丈夫なのかーっ!?》
アナウンサーが言ってたように誰もがフレアネスドの圧倒的な勝利を確信していた。
しかしニーナ、ブラッド、ナセロンなど鋭く見定めている。
これでナッセの真価が見極められるかもしれないと……。
もちろん初見なはずの支配神ルーグもなにか察しているのか「面白い戦いになりそうだ」と呟く。
アンゼルヌークは怪訝にその言葉を疑う。
「リフレアルトが死んだ事で封印が解かれた七つの魔王……」
息を呑むナッセ。
なにしろ、相手は七つの魔王の一角として恐れられる煉獄竜王フレアネスドなのだ。
漫画では聖騎士ナセロンを含め、同等にクラスチェンジした仲間までコテンパンにするほど強かったのだ。
「グハハ……!! こんなガキが相手じゃ手加減しちゃっても一秒もつかよぉ!!?」
闘技台に立つ大男はせせら笑う。
こっちを舐めているなら、むしろ好都合だぜ。
《では始めッ!! ファイッ!!》
ナッセは太陽の剣を正眼に構え、カッと眼光を煌めかす。
「む?」
「流星進撃!!! 二十連星!!!!」
高速で突撃しながら、全力で一瞬連撃を放つ。
フレアネスドの目には、ナッセの背後に天の川が横切る夜景が映る。そして鋭く流れてくる流星群が全身を穿ってくる。
不意をつかれて連撃をモロに受けてしまう。
「がっ、ががっ、ぐあああ、ぐっ、ぎああああ!!!!」
「続いて、三〇連星ッ!!!!」
畳み掛けるように渾身の連撃を追加。
闘技場のみならず浮遊コロシアムが震え上がるほどの衝撃で、フレアネスドは三十の連撃を受けて「ぐがあああああ!!!!」と白目で吐血。
「一秒も持たない事がおまえで実現させてやる!! 四〇連星──ッ!!!!」
血飛沫が舞うほどの強撃連撃で容赦なく滅多打ちする。
まるで竜巻のような荒ぶる猛攻がフレアネスドを血塗れに打ちのめしていく。
それでもヤツは二の足で踏ん張っているので、更なる追撃を加えんとする。
「五〇連────」
我慢ならぬとフレアネスドは激昂し、薄ら浮かんできた三つ首の赤き竜が急激に膨らんできて巨体を現してきた。
旋風が吹き荒れて煉獄竜王は吠え猛る。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
そして核となっているフレアネスドは両目を赤く輝かせ、怒り心頭だ。
「よくもやってくれたなあああああああッ!!!! この七つの魔王を怒らせた報いを受けろおおおお!!!!」
巨体の竜王が素早く迫り、ナッセは「くっ!」と咄嗟に横へ飛ぶ。
そのまま体当りしてきた長い首が観戦席へ直撃して衝撃波が爆ぜた。しかし障壁が張られていたので観客には影響がない。
ナッセは空中で屈折して跳ねて、ムチのようにブンブン振ってくるフレアネスドの首をことごとくかわしていく。
「速いッ……!!!」
「くたばれやああああああッ!!!」
一つの頭が素早くナッセに噛み付いて、そのまま障壁へ押し込む。衝突の際に爆ぜた衝撃波が広々と散った。
さらにゼロ距離で火炎ブレスを吐いて大爆発が轟音を伴って膨れ上がっていく。
その威力は山脈ごと吹き飛ばすほどだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
「ナッセェ!!!」
ヤマミは思わず叫ぶ。
すると地鳴りが大きくなっていって、噛み付いていた竜の頭が破裂して閃光が広がった。
なんと銀髪ロングが舞い上がったナッセが背中に四枚の羽根を浮かし、真下の地面に花畑がポコポコと沸騰するみたいに広がっていく。
破裂した破片が散り散りと流れていく最中、妖精王に変身したナッセが花畑に降り立った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
「わりぃな。ちっと苦しいんで妖精王に変身したぞ」
「きさま……!!?」
砕かれた竜王の頭が復元されつつ、フレアネスドは見開いていく。
ナッセもこの世にあらざる姿に変身したのだ。
観客もニーナもナセロンもブラッドも支配神ルーグもアンゼルヌークも驚きを隠せない。
《ど、どういう事でしょうか!!? クラスチェンジとは違うようです!! 妖精王、一体何なんだ──ッ!!?》
まるで美しく清らかな天使が舞い降りたかのような神秘的な光景。
観客は「おお……!!!」と感嘆を漏らしていく。
この世に存在するとは思えない高次元生命体が目の前にいるのだ。容姿は中性的で端麗とした細身。たゆたう白銀ロングヘアーは常に舞い続けている。紋様が入った四枚の青白い羽が背中で優雅に羽ばたく。彼の周囲を緩やかに花吹雪が舞う。
これでは見惚れるのも仕方がない。
「妖精王ナッセ……ッ!!?」
ニーナはギッと歯軋りする。
エルフや妖精の上位的存在みたいなもんで、圧倒的な魔力と威圧は人智を遥かに超える。
なおかつ剣術など卓越した武力も併せ持つ脅威的存在……。
神秘的な容姿とは裏腹にナッセは人間的に「はぁ……」と項垂れてため息をつく。
「やっぱ不意で流星進撃で倒すんのムリかぁ……」
「何者だよぉッ!!! テメェェェ!!! どっかから来やがったァ!!? まさか天界からやってきたとでも言うのかあああッ!!!?」
「地球とだけ言っておくぞ」
「チキュウだァ!!?」
「ああ!」
花吹雪が舞いながら凄まじいフォースを噴き上げるナッセ。
フレアネスドを『偶像化』のように包む三つ首の赤き竜王が「グオオオオ!!!」と吠えて、高速突進する。
同時にナッセも地を蹴った。
互いの激突により、天が叫び、地が唸る、爆ぜた凄まじい衝撃波が闘技台を完全に粉砕。
しかしナッセの袈裟斬りが巨体を弾き飛ばした。
「グオアッ!!?」
そのまま煉獄竜王は闘技場の端までぶっ飛ばされて障壁に激突。土砂が舞い上がった。
ナッセは悠然と太陽の剣をブンと横に素振りする。
「ならば……ッ!!! フレイムエッジ!!!」
なんと三つ首の口から炎の刃を乱射し、まるで嵐のように周囲に余波をまき散らしながらナッセへ殺到する。
まさかリフレアルトだった頃の技をも放ってきたのだ。
地響きとともに大津波のように押し寄せてくる炎の刃の嵐に、ナッセはキッと見据える。
「おおおおおおおおおおッ!!!!」
気合いを入れて、それに反応するかのようにナッセの足元の花畑がボココココッと荒ぶる。
毅然とナッセは太陽の剣で身構えた。




