23話「暗黒君主へ進化したブラッド!!!」
騎士ナセロンはキュミガソ、ミッチー、ルア・ルヴァと一回戦で三連戦するハメになった。
そして最後のルア・ルヴァは何を思ったのか、ナセロンの口から入り込んで体内へ忍び込んだのだ。
「おぐああああああああッ!!!!」
腹がブクブクに膨れて蠢いている。
しかし徐々に痩せていって、たちまち元通りになっていった。そして眼前に六角形の光のシールドが具現化された。
それは次第に三方向に菱形を伸ばす形状へ変化した。
「さ……三芒星光翼盾……!!」
「忍者マンガに出てくる万華鏡ナントカのように、進化したって事ね」
「それは言うな。気にしてるんだぞ……」
ナセロンの真価は光の剣ってよりも光の盾にある。
つーか、メインは光の盾であって剣は副産物みてーなものだ。
最初は六角形、その次が三芒星型、そして最終的に五芒星形となる。
それこそが“光翼盾”の真髄。
それを剣に吸収させると“光翼神剣”となって途方もない威力が出せるようになる。
……という設定だったが、やっぱどこかのパクリなので投げ出してしまってる。ただ強い盾と剣が具現化できるだけになったぞ。
《ルア・ルヴァ選手がいなくなってしまったので、騎士ナセロン選手の勝ち抜けとなったー!!!》
勝手に自らナセロンに食べられて消えたようなもので、これ以上試合できないのは当たり前だった。
ようやくナセロンは三連戦を終えて、三回戦まで休める。
二回戦でやるルア・ルヴァとの試合を前倒しで連戦にしてしまった弊害のようだ。ガバガバ運営だぞ。
《さて一回戦四戦目は魔道士ヤマミ選手対剣士イグルシア選手となります!! 両者とも闘技台へ!!》
ついにヤマミが出場し、反対側から逆立ったホウキ頭でロングコートを着た長身の男がやってきた。
「フッ、君のような美人は俺と付き合うにふさわしいと思うんだ」
「そう」
《では始め!!》
イグルシアは剣を引き抜くと、嵐のようにブンブンと振り回して強さをアピールする。
そして爽やかな笑みを見せて白い歯がキラッとする。
「もはや俺の勝ちは揺るがないんだよ。だから降参していい。そして俺の胸に飛び込んでいいよ。優しく抱きしめてあげるからね」
「バカに付き合ってられないわ」
呆れたヤマミは一つの小人を生み出して地面にダイブさせた。それは黒筋となって這ってイグルシアをボガーン爆撃して気絶させた。
ばたんきゅう……。
《なんと瞬殺!!! 無名ながらも未知数の実力派だ!!! 魔道士ヤマミ選手の勝ち!!》
次の試合でもニーナがモブ選手を瞬殺して勝ち抜いた。これでヤマミとぶつかる事になる。
ニーナとヤマミが睨み合って威圧がぶつかるような気配を見せた。
彼女らが戦うのは二回戦になるのだ。
《続いて一回戦六戦目は暗黒騎士ブラッド選手対剣闘士ガルン選手選手です!! 両者とも闘技台へ!!》
いつものライバル風な冷静なブラッドが闘技台に上がり、向かい側の黒いシルエットのガルンがやってくる。
「フッフッフ! 待ちわびたぞ!! 我が宿敵ブラッド!!!」
「やはり貴様か……」
黒いシルエットを脱ぎ去ると、緑肌で竜のツノが生えた銀髪逆立てた男が現れた。
竜人と呼ばれる強力な種族だ。
「猛る竜が宿りし天上の刃よ!! 我が怒りと威光を示す為、降臨せよ!!!! ドラゴンサンダーソード!!!」
ガルンが手をかざすと天より落雷が直撃して、竜の装飾をこしらえた剣が稲光を伴って具現化された。
「これが我が誇る最強の魔剣だッ!!!」
それをひと振りすると地面が震え、大気が唸る。
ビリビリと空気が響いてくるのが分かる。
「フッ! 以前よりは鍛錬を積んでいるようだな」
「当たり前だ!! 貴様を超えるために血の滲む修行をしてきたのだからなッ!!」
「だが、それはオレにも同じ事が言える」
「ほざけッ!!」
粋がるガルンに対して、ブラッドは悠々と手をかざす。
「愚か者どもを駆逐すべき、黒の閃を描いて切り刻め!! 愚滅の漆黒よッ!!! カラミティイビルソード!!!」
漆黒の剣を具現化した。
ガルンは稲光をまとって素早く飛びかかり、互い剣を交差させた。破裂するように衝撃波が吹き荒れた。
なおも斬り合いを続け、激しい接戦が繰り広げられた。
裂帛の気合いで猛攻を仕掛けるガルンに対して、ブラッドは平然とした顔で余裕そうだ。
「ハッ! やるな!!」
「フン……」
弾き合って互い離れた。
「では、その先の力を見せよう……」
ブラッドは漆黒の剣をかざして「クラス──チェンジ!!!」と叫んで、漆黒の旋風で身を包んだ。
吹き荒れる余波で全てが震撼していく。ドドドドドドドド!!!!
ニーナは「まさか……!! ナセロン同様に!!?」と絶句する。
漆黒の旋風が晴れるとブラッドの衣服が変化して、より禍々しくなっている。
「暗黒君主ブラッド!!!」
「な……なッ……!?」
凄まじい威圧でビリビリと全身を貫かれたガルンは冷や汗たっぷりに焦りまくる。
尋常じゃないほどの強さを見せつけられて、それを認める事ができずやぶれかぶれと飛びかかる。
「ちっ……、ちくしょおおおーッ!!!」
稲光を纏う竜の剣で何度も斬りつけるが、無防備のブラッドに傷一つもつけられない。
「くそッ……!! くそぉッ……!!!」
それでも執拗に斬り続ける。
それでもビクともしないブラッドは軽く漆黒の剣を振るう。ガルンは遥か遠くにまでブッ飛んで、真っ二つに裂けていく。
「ガフォッ……」
ガルンは白目で吐血し、空の彼方へ逝った。
「おまえは弱くなかったが、相手が悪かったな」
《な、なんとぉ──!!? 聖騎士ナセロンに続いて、暗黒君主ブラッドが圧倒的チカラを見せつけて完全勝利──ッ!!!!》
ブラッドは踵を返していった。
《さてさて!! 今大会最大の注目──!!! あの七つの魔王の一角である煉獄竜王フレアネスド選手の登場です!!!》
リフレアルトを更に大柄にして老けさせた大男が闘技台に上がった。
そして戦々恐々とナッセが上がってくる。
大男と少年と体格差が大きい様子に、観客は誰もが優劣をつけてしまっていた。
《そして剣士ナッセ選手!!! どこまで粘れるか!!? さぁついに注目の試合開始です!!!》




