22話「ナセロン、三回連続で試合してしまう!!」
ギャグとしか思えないデフォルメなカタツムリを、ナセロンの必殺技で粉砕したら中の人が出てきたぞ。
金髪イケメン長身男で、これがキュミガソ本来の姿なのだろう。
「我が投影像『偉大なる原始蝸牛』の力を思い知るがいい!!」
「望むところだ!!」
ナセロンは猪突猛進と剣を携えて間合いを詰める。
「マイマイマイマイマイマイマイ!!!!」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシィッ!!!!
本体のキュミガソは妙な連呼を繰り返して、背後の巨大なアンモナイトがイカのような無数の触手で滅多打ちを繰り出した。
ナセロンの剣戟と打ち合いになって激突を連鎖させていく。
二人のラッシュは苛烈を極めていく。
「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
「マイマイマイマイマイマイマイマイマイマイマイマイマイ!!!!」
ズババッ、バババッ、バビッ、ビババッ、ババッ、バシシッ、ズビバッ、ババゴッ、ババッ!!!!
しばしの競り合いの果てに、アンモナイトの触手の連打が押し勝って、ナセロンの全身をビシバシ滅多打ちだ。
「グハァ!!!」
ドォーンと吹っ飛ばされたナセロンはタイルを滑って闘技台を飛び出して、地面に転がって土塗れになる。
「では遠距離攻撃といくとするかッ!! ズドッゴーン光線でなッ!!!」
「そのダサい技名なんとかならないんか……」
アンモナイトは触手から光の玉を無数生み出して、ひょいひょい手玉をする。
キュミガソが手を差し出すと、光の玉を光線にしてズドッゴーンと撃ちだす。
ナセロンは慌てて転がって立ち上がって、迫って来る爆撃をかわしていく。ズドッゴーン光線の弾幕はナセロンを執拗に追いかけていった。
「シールド!!!」
間に合わなくて六角形のバリアを張って、ズドッゴーン光線を弾きまくっていく。
しかし何発も受けて耐久度を越えると砕け散った。
二発がナセロンの胴体に被弾して血飛沫が舞う。
「ガハッ!! い……以前と全く違う!!! かなり強くなってる!!!」
それでも着実と間合いを詰めていくナセロン。キュミガソは弾幕を張るのをやめて触手のラッシュに切り替えた。
「マイマイマイマイマイマイマイマイマイマイマイマイ!!!」
「負けてたまるかッ!!! うおおおおおおおおおおおーッ!!!!」
ズバババババババババババババババババババババババババババッ!!!
キュミガソのアンモナイトの触手と、ナセロンの光の剣が幾重も激突を繰り返してけたたましく衝突音が響き渡る。
すると徐々にナセロンが押していくようになる。
「ぐっ!!」
焦ったキュミガソ本体は手からドッゴーン光線を放つ。
しかしナセロンは光の剣で弾き、本体へ迫る。すると囲んでいた触手が光の玉を生み出していた。
「ダァホ!! このマヌケがッ、かかったなッ!!」
「なっ!?」
「全方位してからのズドッゴーン光線はかわせまいッ!! 喰らえいッ!! 死ねいッ!!」
ズドッゴオオオオオオオオ────ンッッ!!!!
懐へ飛び込ませておいて、ズドッゴーン包囲弾で容赦ない一点集中爆撃を炸裂させた。
連鎖する爆発が広がって凄惨な想像を呼び起こさせる。
「ナセロンッ!!!」
思わずリーナは叫ぶ。
しかし爆風から、ナセロンが血塗れでボロボロになりながらも決死の気合いで抜け出していた。
まさかの事態にキュミガソは「なにィッ!!?」と驚愕する。
勢いのままにナセロンは光の剣でキュミガソの腹を突き刺し、怒涛のオーラを流し込む。
「カミナリバクハ────ツ!!!!」
掛け声とともに、体内から渾身込めたオーラがボアアアーンッと爆発した。
その威力はカミナリトッパーの五倍以上にもなる。
「ギハアアアアアアアッ!!!!」
問答無用で腹が破裂してナニが飛び散って、白目でキュミガソは盛大に吐血し、ブッ飛んで宙を舞って闘技台外の地面へ大の字で張り付いた。
数度痙攣した後に動かなくなって死んだ。
この大会は殺しても反則負けにならないという、情け無用なルールだ。
《形勢逆転────!!!! 騎士ナセロンの勝ちだ────ッ!!!!》
歓声が湧き上がってナセロンは手を振る。
ニーナは「強敵と戦うたびに強くなってるわね」と安堵していく。
ルア・ルヴァはニヤリと笑む。煉獄竜王フレアネスドは雑魚の戦いだと一笑に付した。
アンゼルヌークは多少不満だったが「これで少しずつ消耗していく」と納得した。
こんな主人公らしからぬ酷い殺害を描いたナッセとしては黒歴史でしかない。死にてぇ……。
《しかし連続で騎士ナセロン選手はガトリング女子高生ミッチー選手と一回戦二戦目を始める事になりまーす!!!》
闘技場へ歩いてくる大胆不敵な笑みを浮かべる女子高生ミッチー。
手負いながらもナセロンはキッと向き直る。
「オーッホッホッホッホッホ!!!! 覚悟なさい!!!」
天へ向かってミッチーはオーラを噴き上げた。
そして両手のガンソードを合体させて、巨大な剣に融合していく。
「救済不能な咎人どもを阿鼻叫喚地獄に突き落とせ!!! 悍しき殺戮せし多弾連射式機関銃剣よ!!!」
「うおおおおーッ!!! カミナリトッパー!!!」
「ガトガ……」
ズバッシャアアアアーンッ!!!!
ナセロンは間髪入れず電撃のような刹那の勢いで直進して、ガトリングソードもろともミッチーを木っ端微塵に粉砕した。
「ギョエ~!!!!」
不死身とはいえ粉々になってしまえば、再生に数十分かかるらしいので試合は待ってくれはしない。
それをナセロンは見計らっていたのだ。
普通に斬り合ってダメージを与えていても再生して長引くので、初手でこの方法は有効だった。
《なんと瞬殺です!!! 続いて騎士ナセロン選手一回戦二戦目勝ち抜いた──ッ!!!》
しかしまた次の選手であるルア・ルヴァが歩いてきたのだ。
《そしてまたまた一回戦三戦目で騎士ナセロン選手は守護士ルア・ルヴァ選手と試合する事になりまーす!!!》
右が何もない白い人型で、左が黒い人型で白い髪の毛が逆立っていて鋭い目をした男。
紛れもなく魔族とも思える。
そんな得体の知れない雰囲気の魔族に、ナセロンは一筋の汗を垂らす。
「見つけた……!!」
ルア・ルヴァは薄ら笑みを浮かべた。
そしてナセロンの口へ吸い込まれるようにギュオッと飛び込んだ。ギュブギュブ強引にナセロンの体内へ入り込んでいく。
「おお……ぐっ!!! ぐううぅ……ううぅぅ……ぅぅぅ!!!!」
苦悶するナセロンはなすすべなく体内へ入られていく。
観客はドヨドヨと戸惑いをあらわにした。
《まさかのルア・ルヴァ選手がナセロン選手の口から入り込んでしまいましたー!!》
ナセロンの腹がブクブクに膨れて、体勢がよろめいている。
なおも苦悶の表情で苦しんでいる。
吐き出そうにも吐き出せない。そんなどうしようもない事態にナセロンは死を覚悟した。




