20話「波乱万丈な予選!!! リフレアルト生きてた??」
ついに『第十六回、グレチュア天地最強決定戦大会』の予選が始まった。
百人でバトルロワイヤルを行って、最後の一人まで勝ち抜けば本戦進出できるのだ。
ナッセもヤマミも参加してしまった大会に何かが起きる予感……。
「ガトガトガトガトガトガトガトトトトトト!!!」
なんとガトリング女子高生ミッチーがガトリングソードで九九人の選手を蜂の巣にして勝ち残ったぞ。
おまけに不死身設定なので、勝ち抜くのは必然であった。
相変わらずファンタジー世界ぶち壊しのキャラである。
《ガトリング女子高生ミッチー選手、本戦進出!!!》
「回転ドッゴーン!!!」
どう見てもギャグっぽい風貌のカタツムリが回転しながらのビームで選手を蹴散らしていった。
《弓兵キュミガソ選手、本戦進出!!!》
右側が目も口も見えない真っ黒で、左側が白くて鋭い目をしていて髪の毛が逆立っている怪しい男。
そいつは左右に突き出した両手から二つの紅葉型の光の盾を生み出して、その反発作用で選手を一斉に吹き飛ばしてしまった。
《守護士ルア・ルヴァ選手、本戦進出!!!》
ニーナは冷たい目で腕を組んでいる。その周囲で選手が死屍累々だ。
容赦のない魔法を連発して殲滅したのだ。
《魔道士ニーナ選手、本戦進出!!!》
ついに主人公ナセロンが出るが、紛れ込んでいた中級魔族が他の選手をあっという間に皆殺しにしてしまう。
「ククククッ!! この中級魔族クラスの妖魔士ピエールさまが、貴様を殺すぞ!! 冥土の土産に大道芸を楽しむがよい!!」
道化師の長靴、手袋、胴体、ピエロ顔が独立して浮いてて、人型のように並んでいる魔族だ。
ナセロンはその威圧に震えていく。
「死のサーカスボール!!!」
ピエールの真上の黒い渦から降ってきたサーカスボールが三つボヨンボヨン縦横無尽にはねて、ナセロンを容赦なく弾きまくっている。
一方的にフルボッコされて「ゴフッ!!」と吐血する。
あのスペリオルと同等の魔族を相手に騎士状態では敵わない。
「もう容赦しない!! 行くぞ!! クラス!!! チェンジ!!!」
ナセロンはそう叫ぶと、光柱が勢いよく天を衝く。
闘技場を震わせて旋風が荒れ狂う。そしてナセロンの風貌が純白の衣服に変わり、青いマントが風になびく。
「こいつが聖騎士ナセロン!!! 不遜なる神を断罪すべき、軌跡を描いて切り裂け!!! 神殺しの光輝よーッ!!!!」
ゴッドスレイヤーソードを引き抜く感じで具現化するとともに、ピエールを袈裟斬りでドンと真っ二つに切り裂いた。
その凄まじい衝撃が周囲に広がって誰もが戦慄した。
あっと言う間の瞬殺。ピエールは「ば……莫迦な……!!?」と左右に分かれていく。
ナセロンはキメ顔できびすを返し、それをバックにピエールはドガアアッと爆散した。
《なんと最上級クラスに昇華した聖騎士ナセロン選手!!! 堂々の本戦進出!!!》
「やはりナセロン勝ち抜いたか……。ナッセの前座としては上等だ」
不敵に笑むブラッドは、周囲の選手を既に殲滅させていて余裕だった。
《暗黒騎士ブラッド選手、本戦進出!!!》
ナッセは「はぁ」とため息をついた。
「この枠って、本来ならヨスイがやる予選だったんだよな……」
「何ワケの分からん事をほざいてやがる!?」
「おう!! こっちの話!! じゃあ始めっか!」
ナッセは星光の剣で旋風のごとく軌跡を描いて数十人を軽々と吹き飛ばして瞬殺。
無名だったのに、ニーナやブラッドなみの強さを見せつけられて観客が沸いた。
ダークホースとなるか、と期待が寄せられた。
《無名の剣士ナッセ選手、本戦進出!!!》
無数の黒筋が地面を走って、選手それぞれを状態異常魔法で気絶させて殲滅。
クールなヤマミを囲む六人の黒い小人が踊りながら周回する。ナッセ同様に余裕の勝ち抜きだ。
見た事もない妙な技に観客はざわざわとどよめいた。
《同じく無名の魔道士ヤマミ選手、本戦進出!!!》
実はソフィーナの枠を彼女が埋めた形になっている。
支配神ルーグのように黒いシルエットで包まれた男が地面を走る衝撃波を放って選手を吹き飛ばしていく。
《剣闘士ガルン選手、本戦進出!!!》
なんと木こりの娘と同じような黒髪姫カットの女神官が、魔法で具現化したトゲを乱射して、選手たちを惨殺してしまった。
実はこれが真の姿のようだ。木こりの娘に変装していたという設定なのだ。
《高位僧侶アンゼルヌーク選手、本戦進出!!!》
途端に灼熱の火炎地獄が高々と噴き上げて選手たちが消し炭にされていく。
観客もビックリ唖然の圧倒的すぎるパワーは戦慄しかない。
ナセロンもニーナも予想外の強者に驚くしかない。
「グハハハハハーッ!! 全て焼き尽くしてやるぜぇ!!!」
そればかりかリフレアルトそっくりの姿である。生きていたのか!?
《今大会一番の強さを見せつけた煉獄竜王フレアネスド選手、本戦進出!!!》
「これも竜殺し魔法ラノベに出てきた赤眼大魔王の五大腹心のアレみたいね……」
ヤマミがジト目で見てきて、ナッセは「うああああ!!! やめろォ!! パクってるキャラがまんま具現化とか死にてぇ!!」と黒歴史に悶える。
実はリフレアルトが死ぬと、長年の転生により封印され続けてきた七つの魔王『煉獄竜王フレアネスド』が解放されるって設定だった。
本当はずっと先に出てくるヤツだったが、序盤から死んだので大会に登場するハメになったのだ。
「オレは絶対勝ぁーつ!!! 完全勝利閃!!!!」
ナセロンの兄貴ビクターが左右の腕を肘を起点に交差させて放つV字の光が一気に膨らんで、選手たちを全員吹き飛ばした。
とある特撮ヒーローが光線を放つポーズと酷似している。
《引退したはずの“問答無双”戦闘狂ビクターがなんと復帰して、堂々の本戦進出だーっ!!!》
最後に黒いマントに顔を覆うフードの男がズンと大きな足を踏み鳴らす。
かなりの大男で三メートルほどだ。そいつがオーラをまとった正拳突きを繰り出すだけで、激しい光線が放たれて選手を蹴散らしてしまった。
一体誰かは分からぬが、魔王かと思うほどの恐ろしい威圧が感じられる。
「フハハハハ~ッ!!!」
《神聖拳匿名希望者選手、本戦進出!!!》
時間がかかったが、死に物狂いで瀕死になりながらも勝ち抜いた青年の男が剣をかざして勝利宣言した。所詮は偶然勝ち抜いただけのモブである。
《剣士イグルシア選手、本戦進出!!!》
後は同じようなモブ選手が二人勝ち抜いて、予選は終了した。
ようやくトーナメント本選が始まると、観客の歓声が湧き上がっていく。
「「「わあああああああああああああああああああああッッ!!!!」」」




