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19話「世界トーナメント大会へ参加させられた!!」

 一ヶ月ぐらいバスターモンド王国で休養した。

 もしチェルとソフィーナが生きていれば、存在が空気だったので適当な理由で離脱させる頃合である。

 魔族ルナリアも懐いていたなら、ナセロンの母妹と一緒に暮らす事になっていた。

 これらが全部なくなってしまったぞ。


「いってらっしゃい。気をつけてねー」

「お兄ちゃんがんばってー!」


 ナセロンの母と妹に手を振られながら、オレたちは旅立った。



 そして別の大陸で長い旅路を経て、とある都市へ向かう。

 ナセロンと出会ったガロンナーゼ大陸、そして故郷のバスターモンド王国があった島国はジャーパ列島で、今度はオリパンス大陸だ。


「ふう……、ここか」


 ようやくナッセたちはアロンガ魔法都市にたどり着いた。

 世界中から多くの人々が集まっている巨大な都市。そして魔法文明が発達していて世界で有数の大国。

 巨大な塔のように聳える城は、かの支配神ルーグが居住しているらしい王宮だ。


「はれー!? 世界って広いなぁ……。こんな大きな都市があったなんて」

「さて、今年に開かれる大会は『第十六回、グレチュア天地最強決定戦大会』ね。四日後に開かれるから、それまで自由にしていいわよ」


 ニーナがそう言って、オレたちは解散した。


「賑やかね……」

「ヤマミ。打ち明けるんだけどさ……」

「なに?」


 祭りムードで賑やかな喧騒の最中、ナッセとヤマミは散策していた。


「本当はさ、大会編は浮遊コロシアムがサバンナみてーな平原の上で浮いてるだけの世界観皆無な風景から始まって、唐突に開会式やって、すぐ予選が始まるって流れなんだよな」

「アロンガ魔法都市は描いていないの?」

「ああ。そのはずなんだ。こんな複雑な都市描けるわけねぇ」


 自作漫画には存在しない魔法都市に、作者のナッセは困惑している。


「もし、あなたが描いた漫画と非常に似た異世界へ転移したと考えたら自然じゃない?」

「最初に入った時の漫画的なナレーションはなんだったんだ……?」

「これまで私たちは数多の並行世界(パラレルワールド)を渡ってきたでしょ? 今回も信じられない事があっても不思議じゃない」

「どうして唐突に異世界転移したんだよ……?」

「私に聞かれても困るわ」


 ヤマミは卓上ミラーが実は奇跡Aランクのアイテムなのではないかと推測するが、黙っている事にした。

 なぜならナッセの自作漫画も読んだと白状する事になるからだ。


「とにかく、この大会に参加する条件は他の大会を優勝している必要がある。オレたちは地方の大会に参加も何もしてねぇから観戦するだけだな」

「主人公ナセロンは参加できるの?」

「それは心配いらない。第十、第十二、第十三、第十四を連覇しているニーナが推薦して特別に参加できるようになったんだ。だから今回も同じようになるはず」

「推薦ね……」


 ヤマミは目を細める。

 その晩、宿屋でナセロンとニーナと合流して食堂で晩飯を戴く事になった。


「ナセロン、ナッセ、ヤマミ、今回の大会に参加できるように推薦しておいたわ。くふっ」

「ああああああああああああああっ!!!!」


 まさか巻き込まれるとは思わず、ナッセは頭を抱えて絶叫するしかない。


「あんたら強いんだし、参加しない方がおかしいと思ってね、くふふっ」

「オレは参加したいと言ってねぇ!!!」

「……そうなるんじゃないかと思ってたわ」

「あああああ…………!!!」


 頭を抱えて俯くしかない。


「支配神ルーグが開催する大会。ひと波乱置きそうだからね。あなたたちも入れると面白くなりそうじゃない? くふっ」

「巻き込まないでくれぞ……」

「優勝するのが私たちのどっちかかも知れないわよ?」

「はれーっ!! ボク負ける前提ーッ!! ひどい……」

「くふふっ、それはそれでいいんじゃない?」


 それでもニーナは気にする様子もない。

 むしろオレたちのベールを剥がそうと画策してる感じだ。やはり(こす)いキャラだ……。




 大会当日、魔法都市の真上に浮遊コロシアムが浮いていた。

 真下中心部の宝珠から突き出てるトゲが地上へ光を放つと、観戦者や参加者が吸い込まれていく。

 作者としては設定した覚えがないので困惑しているぞ。


「でも確かに、飛べない人がどうやって行けるかも考えてなかったなぞ」

「漫画じゃ、唐突に場面が切り替わって場所が変わるなんてよくある事だものね」

「オレの漫画読んだ?」

「いいえ。読んでないわ」


 ヤマミは満面の笑顔だ。にっこり。

 本当に読んでないのならいいけど、なんか気になるんだよなぁ。

 頭脳明晰なヤマミだから読めない。


 吸い込まれた先には闘技場へ参加者が集まっていて、観戦客は階段状の観戦席で賑わい、目の前の高台には大きな聖火台があって、手前の王座に誰かが座っていた。

 そいつはツノが生えた魔王みたいな黒いシルエットの男で、目と口だけあらわにしている。


《これから『第十六回、グレチュア天地最強決定戦大会』を開催するよーん》


 風貌に似合わず、おちゃめな喋り方をしてくる。

 描いたキャラまんまアニメのように動いている感じでナッセとしては複雑な心境だった。

 異世界転移したのでなければ、そして大会に参加していないならば、と……。


《ワシは支配神ルーグ。世界三柱神が一体だよん。略してルーちゃんって呼んでね》


 緊張感のない神様である。

 それでもかなりの力を持った神で、あの七つの魔王以上だ。

 こっちの作品設定通りなら……。


《今より一時間後に予選を始めまーす。第一六回だけに本戦参加選手が十六人までなので、百人ずつブロックに振り分けて予選をしちゃうよ。頑張って最後の一人になるようバトロワを勝ち抜いてねー。約千六百人も参加してくれたのは嬉しいけど、本戦トーナメントは十六人までなのよ。ごめーん》


 てへぺろしてきたぞ。


《午前十時から予選が始まるまで、抽選でブロックに振り分ける作業しまーす。急がなくちゃねー》


 その一時間後、十六回ぐらい連続する予選が始まった。

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