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18話「聖騎士ナセロン始動!!」

 なおも吹き荒れる旋風の中心で、ナセロンは青いマントをなびかせて自信満々に満ちた顔をしていた。

 額には黄金に煌く星マーク、両頬に黄金の筋が左右対称で走っている。

 余波が吹き荒れる最中でナッセは感激した。


「それにしてもリアルで自作のキャラが変身するのを見れるとは!!」

聖騎士(パラディン)ってより、アメコミのヒーローっぽいわね」

「それは言わんでくれぞ……」


 ヤマミのツッコミがグサッと刺さる思いだ。

 本来なら白銀の鎧とかつけててもいいのに、描くの楽したいからと普段の衣服をバージョンアップしたようなビジュアルにしてたのだ。


「フン、決められた答えでクラスチェンジができるのではない。ヤツの魂の強さに応えたからこそだ!!」


 なんかうつ伏せのブラッドが不敵な笑みでそんな事言ってるけど、まぁいいか。

 実際はどのようにしても失敗する事はない。どうせナセロンは聖騎士(パラディン)に変身できるようになる運命にあるのだ。

 これも適当な設定あるある。


「すごい……! こ……これがボクの新しい力なのか……!!」


 信じられない力が溢れてきてナセロンは笑んでいく。

 少し足が浮いて、飛行能力を得た事を示唆する。そしてナセロンは驚くスペリオルへ顔を向ける。


「行くぞッ!!!」


 オーラを纏って空を高速で飛び上がり、スペリオルへ向かう。


「不遜なる神を断罪すべき、軌跡を描いて切り裂け!!! 神殺しの光輝よーッ!!!!」


 そう叫ぶと、なんと前のよりバージョンアップして大剣の形状となる。

 それで思いっきり横薙ぎして、スペリオルを高速で吹っ飛ばす。斜め下へと森林へ激突して高々と飛沫を吹き上げて木々が散る。


 ズガアアアアンッ!!!!


 ただの一撃なのに、凄まじい破壊力だ。

 騎士(ナイト)ナセロンの攻撃力が七八〇〇なら、聖騎士(パラディン)では十倍の七八〇〇〇相当と見てもいい。


「おのれーッ!!!」


 オーラをまとってスペリオルは飛び出し、ナセロンと激しい空中戦を繰り返す。

 一撃一撃のたびに大気が爆ぜて、振動が周囲に響き渡っていく。


 ズガガッ、ズガッ、ガガガッ、ガキッ、ズガガガガッ!!!


 しかし聖騎士(パラディン)クニロンは凄まじいオーラを纏ったまま徐々に押していく。そんな圧倒的な力にニーナとブラッドは嬉しそうに笑む。

 ナセロンの繰り出した袈裟斬りがスペリオルを弾き飛ばす。痛烈だ。


「ぐっ!!!」


 劣勢に追い込まれたスペリオルは苦い顔で空中で踏ん張る。

 完全に勝っている様子にも、ナセロンの兄であるビクターは浮かない顔だ。


「金色の破壊神はこんなもんじゃあない。ヤツの本来の力は中級魔族程度には収まらない。あの七つの魔王以上のとてつもないパワーを持っているんだ」


 ズガッ!! ドガッ!! バキキッ!!!


 何度かモロに喰らいスペリオルは徐々に傷ついていく。

 精神生命体(アストラル)なので斬撃でも斬られる事はないが、ダメージは蓄積する。


「くっ!! いい気になるなぁ!!! 神滅砲(ラグナブラスト)!!!」


 電撃のような無数の光弾がナセロンへ次々と着弾し、最後に「神滅球(ラグナフォトン)」と圧縮された破壊球が炸裂して大気が震える。

 しかし耐え切ったナセロンにスペリオルは「なっ!?」と驚愕する。


「邪神スペリオルッ!!! ここまでだ!! 観念しろーッ!!!」


 ナセロンの思い切った振り下ろし一撃で、スペリオルを真下の森林へ叩き落とす。

 ドガガーンッと高々と飛沫を吹き上げて木々が粉々に飛び散る。

 それでもスペリオルは飛び上がって、稲光を集めていって、巨大な黄金の剣に象っていく。


「おのれええええッ!!!! なら、これを喰らえッ!!! 神滅剣(ラグナスレイヤー)!!!!」


 山脈をも切り裂いた強烈な一撃を、ナセロンは敢えて受けた。

 被弾の際に天地を繋ぐほどに電撃が爆ぜた。

 ナセロンから血飛沫が吹き出るが、それでも微々たるダメージだと誇示していた。完全に負けたとスペリオルはおののく。


「こんなもの……効かねぇ!!! 喰らえええええ!!!! カミナリトッパーッ!!!」


 空を翔る稲妻のような超高速突進がスペリオルに炸裂した。


「グアアアアアアア────ッ!!!!」


 空中で炸裂したにも関わらず、その凄まじい破壊力で衝撃波が爆ぜて大地が震え上がるほどだ。この一撃でスペリオルは粉々に消し飛んだ。

 しかし密かに、その飛び散った粉末がニーナへと吸収されていった。

 そんな流れをナッセとヤマミは見逃さなかった。


「さて!! この力で、おまえを殺してやるーッ!!!」


 なんとオーラを纏って急下降して、ナッセへと飛びかかる。


「そう来ると思ったぞ」


 ナセロンの振り下ろした光の剣を、太陽の剣(サンライトセイバー)で受け止めた。ズン、と足元の岩盤が捲れ上がって飛沫が高々と噴き上げる。

 それでも平然と受け止めたナッセにナセロンは焦りを帯びた。


「稽古したいんなら、付き合うぞ?」

「な!!? うおおおおおおーッ!!!!」


 ズガガガガッガガガガガッガガガッガガガガガガガッ!!!!


 一撃一撃が凄まじい破壊力で嵐のような凄まじい剣戟を、ナッセは澄まし顔でことごとく捌いていった。

 周囲に凄まじい衝撃波が吹き荒れているのにも関わらずナッセは変身もせず、相当パワーアップしたナセロンの激しい攻撃を普通に捌いていた。


「なぜだあ────ッ!!!!」

「気持ちは分かるけど、上には上がいるって事だぞ」


 聖騎士(パラディン)ナセロンの攻撃力が七八〇〇〇なら、ナッセは一〇万級である。


「さあて、もういいでしょう」


 ヤマミの巨大な『偶像化(アイドラ)』が仰々しく聳えて、ナセロンを鷲掴みにした。

 いくらもがこうとも抜け出せずナセロンは「うぐ……!!」と信じられない顔で焦る。

 以前より十倍も強くなって、自信がついていたというのにナッセとヤマミにはまるで通用しない。


「これくらいにしてくれる? それとも私がやっていいかしら?」

「そ……そんな……!!? ボクすごく強くなったのにッ……!?」

「悪いな。実は封印の『刻印(エンチャント)』で過剰な戦闘力を自ら抑えていたんだ。一定レベルの強さを持った相手と戦う事になったら封印が自動で解けるぞ」


 ナッセは太陽の剣(サンライトセイバー)を肩に乗せて、説明してやる。

 その一部始終を見てブラッドは「そうか……まだ更に力を隠していたのか……」とうつ伏せのまま項垂れた。

 遺跡での戦いで届くかなって力の差だったのに、天地の差ほどに突き放された思いだ。


「そう……、まだ今でも本気じゃないのね」


 ニーナは歯軋りする。

 そして同時に安心もした。迂闊に本気を出して片付けようとすれば、ナッセとヤマミが本気出してきて手痛い目に遭っていたかもしれない。

 どこまで力が隠されているか分からない。

 少なくとも聖騎士(パラディン)ナセロン程度では全然歯が立たないレベルだ。




 こうして破壊神が解放された戦いは終わり、ナセロンの家で一晩を明かす。

 とはいえ、この時点では死ぬはずのないヨスイまで死んでしまった事にはナッセたちも苦慮するしかない。


「確か、次は世界大会編になるんだっけな」

「ヨスイもリフレアルトもソフィーナもいない状態でね」

「あー。どうしよっか?」


 空いた部屋でナッセとヤマミはベッドに腰掛けて話し合っていた。

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