16話「破壊神の一部が復活!! 邪神スペリオル!!」
ニーナは断崖絶壁の麓の祠を見つけて、冷淡な笑みを見せていた。
気の遠くなる年月で経年劣化して破損してて分からないものの、破壊神の像が建ってある。
「フフフ……、そろそろ騎士からパワーアップさせとかないとね。さて」
黒魔法で像を砕き、中から出た黄金の宝石。それをニーナは掴む。
騎士ナセロンは妙な男と対峙していた。
「私は僧侶ヨスイだ!! 貴様からは血の臭いがする……!!」
「じゃあ殺してやるよ!! 不遜なる神を断罪すべき、軌跡を描いて切り裂け!!! 神殺しの光輝よーッ!!!!」
ナセロンは鞘から剣を引き抜く仕草して光の剣を具現化させた。
「ほう! 伝説の魔剣ゴッドスレイヤーソードか……!!」
不敵に笑むヨスイに、ナセロンは素早く間合いを詰めて光の剣を振るう。
「死ねッ!!!」
「我は敬愛する女神様に祈る!! 邪なる者を拒絶せし光を宿せ!! 中位階梯白魔法『神聖波動』!!!」
ヨスイが腕を交差させて聖なる光が放射状の障壁を発生させて、光の剣が受け止められた。
その激突で足元から余波が吹き荒れる。
ナッセとヤマミが追いついてきて、足を止めた。
「これ霊界探偵の……」
「もろパクリでゴメンなさーい!!! 色違いのアイツでーす!!!」
恥ずかしくて悶えたいナッセであった。
それに構わずナセロンとヨスイは激しい激戦を繰り広げていた。素手なはずのヨスイは神聖波動を操って両手に宿して格闘をしているのだ。
いかなる攻撃も弾く防御魔法を逆に武器へ応用している。
「猪突猛進でつまらんな……」
「毎回毎回言ってくれやがって!! 殺すぞ!!!」
ブラッドにも同じ事を言われた挙句、ナッセにも敗れているので激情任せにヨスイへ突進する。
「我は敬愛する女神様に祈る!! 邪悪を滅する聖なる光弾で討ち滅ぼせ!! 中位階梯白魔法『輝煌弾』!!!!」
ドドドドドドドドドドドンッ!!!!!
ナセロンへ光弾の連射が鋭く炸裂し、数メートル吹っ飛ばされてバウンド数度して地を転がっていった。
まともに食らったので「ゴブアッ!!」と吐血して意識を失った。
ヨスイは「口ほどにもない……。買いかぶったか」と不敵に笑う。
「負けちゃったわよ?」
「え? まだ続くはずなんだけど?? その後ナセロンが立ち上がって防戦一方になるけど反撃のカミナリトッパーで押し切ろうと気合いを入れる展開になるぞ!」
「ピクリともしないわね……」
「そんなはずは!!? ハッ!!」
勘違いして挑んだチェルとソフィーナが倒されてて、ナセロンが戦う事になる。
その時に今のような攻撃がくる手前でチェルが「危ない!!」と叫んだから、光のシールドで軽減してた。
だが、チェルはいないので初見でまともに食らってしまった。
「そうか……、空気だったチェルの役目がなかったから、ナセロンは咄嗟に防げなかったんだ!!」
「そこしか役目がないとはいえ、これ致命的ね……」
「そこの二人、まさかコイツの仲間か?」
不穏にヨスイがこちらへ歩んでくる。
「一応仲間だが、今はそれどころじゃねぇ!! 近くの封印の祠が壊されて解けちまうんだ!!」
「む? 貴様はなぜそれを……?」
「そろそろ金色の破壊神の封印が解かれちまうっ!!!」
ちょうどタイミングよく、向こうの切り立った丘のふもとの森林から光柱が噴き上げていく。
遅れて地鳴りが地面を伝ってきた。ズズズズ……!!
「ち……!! おまえらは何者か知らんが敵ではないようだな!? 私はそこへ行く!!」
「ああ! オレたちはコイツを治してから行く!!」
ヨスイは急いで飛び立っていった。
ナッセとヤマミは急いでナセロンに回復魔法をかけて全快させていく。
回復してきて目を開けたナセロンは「はれ……?」と起き上がる。
「強いヤツが出てくる!! 行くぞ!!」
「は、はれ??」
「いいから行きなさい!!」
ヤマミが巨大な『偶像化』を出してきたので、ナセロンは竦んで頷いて一緒に走る事になった。
一足先にたどり着いたヨスイは戦慄していた。
「遅かったわね。ついに金色の破壊神の一部が解き放たれたわよ」
ニーナの前に、全身全裸が金色に灯っている恐ろしい女神が立っていた。胸と額にモミジのような紋章が浮かんでいた。そして両肩に小さな翼。
眉もない無機質な両目がヨスイを射抜かんとする。
「ククク……!! 我は金色の破壊神の一部!! 名づけて“邪神スペリオル”とでも言おうか!! 封印されて幾千年……久しぶりの地上よ……!!!」
「貴様!!! 復活したかッ!!!」
島国中に吹き荒れる威圧。地響きが耐えず、森林が揺れる。
戦慄するがヨスイは単身飛び出して、両手に神聖波動を帯びて挑みかかる。
しかしスペリオルは片手でヨスイの一撃を止めた。
「なッ!!?」
ニーナは薄ら笑みを浮かべて「中級魔族レベルだからね~」と呟く。
あの下級魔族ルナリアでもナセロンを負かすほどなのに、この中級魔族の威圧はそれ以上。計り知れない強さが秘められている。
「我は敬愛する女神様に祈る!! 天界を照らす神聖なる破邪の奔流よ、邪悪なる魔を跡形もなく滅ぼせ!! 上位階梯白魔法『破邪聖光閃』!!!!」
ヨスイの両手から放たれた、眩い聖なる奔流が真っ直ぐスペリオルへ直撃。
キラキラ光礫を撒き散らしながら、バーナーのように激しい光柱がヴアアアアアアッと噴き上がっていく。
「効くとでも?」
なんとスペリオルを呑み込んでいた光柱がバチッと破裂して霧散していった。
「莫迦な!!! 単体のみだが、あの『最終崩壊』に匹敵する威力の白魔法がッ!!?」
「では消えろ!! 滅びの神滅球!!!」
スペリオルが手をかざすと、稲光を発する濃密度の小規模爆発球がヨスイを呑み込み「グギャアア!!!」と跡形もなく消し飛んだ。
この圧縮された破壊力は山を消し飛ばす最終崩壊以上だ。
例えナセロンと同格の実力者でも即死レベルなのだ。
「ああッ!! しまった~ッ!!!! ヨスイがッ……!!!」
ナッセとヤマミとナセロンが馳せ参じるも、ヨスイが先に逝っちまった。
「くそ~~!!! まだヨスイは生き残る予定だったんだぞ~~!! なんて事してくれたんだああ~ッ!!!」
「嘆いたって仕方ないわよ!!」
ニーナとスペリオルは薄ら笑みを浮かべている。




