139話「後日談……! 久しぶりの我が家!!」
ハッと目が覚めた。
もう朝になっている明るさで、見慣れた天井が視界に入る。
「戻ってこれた……!?」
身を起こすと、いつもの地元の家で自分の部屋が見渡せる。
側でヤマミも身を起こしてキョロキョロ見渡す。
枕元には卓上ミラーも添えられていた。女神マザヴァスが引き込んだという魔鏡。たぶんもう効力はないと思う。
「お、おはよう……」
「うん。おはよ。戻ってこれたわね」
「ちょい寂しいけどさ」
もうナセロンたちには会えないって分かってるから、ほんのり寂しさを感じる。
ヤマミも察していてかクスリと笑う。
ナッセは積まれていた漫画を一冊手に取る。
「これじゃ読まれるのも仕方ねーよな……」
「うふふ。ごめんね」
「もういいや。後の祭りだし」
弟ズが嫌がらせに卓上ミラーと一緒に漫画を置いてきたのだ。
ナッセが寝入っている隙にヤマミが読破していたのは想像に難くない。こんな恥ずかしいの読まれたくなかったが、読破されてんなら仕方ない。
ピラッとめくると恥ずかしい黒歴史が目に入って「イタタタ」と閉じてしまう。
するとバタンとドアが開かれて弟二人が現れた。
「あれ? やっぱり魔鏡はウソだったんだな」
「だろうと思ったよ」
「……おい! 何の話だ!?」
ジト目で弟ズを見やると、二人揃って目を泳がせて「な、なんの事かなー?」としらばくれる。
「「おはよう。そんじゃ」」
ピューッと元気よく去っていく。
しばし開いたドアが自然と閉まっていくのを見てから、ヤマミに視線を移す。
「言わない方がいいって事ね……」
「もう大丈夫だと思うが、あいつら異世界へ飛ばされると困るだろうから黙っておこうか」
「そうね」
弟ズの様子から時間はひと晩たった程度のようだ。あっちでは何ヶ月も過ごしていたというのに、不思議な感覚だった。
もしあっちでの時間経過がそのままこっちの世界にも引き継がれてたらと心配してたが、杞憂だったようだ。
とりあえず一緒に着替えて、いつもの衣服で落ち着けた。
「さて……我は命ず、異なる次元を繋げる道を開けよ。記憶に刻まれし地へ。界渡来」
一階の食卓をイメージして唱える。
しかし何も起きない。あっちの世界では頻繁にワープしまくってたけど、この世界では黒魔法の適用外なので発動しないみてーだ。
念の為、『一日一唱の儀式』をやってみたが、存在しない魔法として何も起きなかった。
他の魔法は普通に発動できていたが……。
「クラス!!! チェンジ!!! ……救世主!?」
感覚が全く感じられない。
あっちの世界で『証』からダウンロードされて変身能力を身につけたはずが、ここでは失われていた。
……いや、元からなかったかのような感じだぞ。
「ちぇ……、これもかよ!? クラスチェンジと妖精王合わせりゃ四首領なんて楽勝なのに!!」
「やっぱりね。そんな都合の良い事はないって事」
ヤマミは目を細める。
「……だなぁ」
黒魔法に限らず、あっちの概念そのものが適用外なのだろう。
まるで夢を見ていたかのような感覚だ。夢の中では当たり前にできていた事が、目が覚めた時には無くなってて奇妙だと思うみたいなものか。
「今でも、あっちで異世界として存在しているのか分かんねぇな……」
「女神マザヴァスによって具現化され、創造主ゲームに勝った事でナッセのモノとなった。今は遠すぎて分からないだけで、現実にどこかで実在してるんでしょ」
「どんくらい遠くにあるんだろうな?」
「さぁ?」
とりあえず両親と弟ズと一緒に囲んで朝飯を食べた。
たわいもなく実家でくつろいでいったぞ。昼飯の素麺とかうめぇ。冷たい麦茶も良き。
午後、燦々と照らす太陽の下で、ナッセとヤマミは広い庭で軽く手合わせをしていた。防御タイプのオーラで全身を包んで格闘をするやつ。
するとブロロロロロロ……と見慣れぬ車がやってきて止まった。
「んん……誰だ?」
中から現れたのは黒髪ブサメンのデブでタンクトップ着てた。手を挙げてくる。
「やぁ」
「まさか、おまえ!! 大我オーヴェ!!?」
「久しぶりだな。異世界覚えてるか?」
「え!? 覚えているんか!!?」
「ああ。あの時はスマンかったな……。でもシゴかないでくれよな」
他のチート移転者はもう覚えていないはずなのに、漏れた?
「願いで『女神がこき使ってきたチート移転者は』ってたから、オーヴェはその対象外だから覚えてて当然よ」
「ああ~、そっかぁ……」
「っていうか、あの後何があったんだ??」
その後、転移者オーヴェが死んだ後の話を語った。
女神マザヴァスが皇帝ライティアスを洗脳したり、多くのチート移転者で世界を攻めてたり、冗談にならない大事件などを聞いてオーヴェは目を丸くした。
「……そうか。あと、それはそうと……変身できるんだよな? チートもらってないって言ってたし」
「ああ。見ろよ。おおおおッ!!!」
ボウッと高次元オーラを噴き上げて、足元に花畑がポコポコと広がって、背中から四枚の羽根が浮き、銀髪がロングに舞い上がっていく。
凄まじい威圧で吹き荒れて、地響きと烈風が広がっていった。
周囲の家がミシミシ揺れる。
「うわあああっ!!!! マジかよおおおっ!!? マジで超サイ◯人みてーだっ!!!!」
「ふう……」
妖精王を解いて一息を付いた。
驚いていたオーヴェはしばし硬直していたが、納得するように相づちを打つ。
「そうか……。本当に強いんだな……」
「聞いてねぇんか? 四首領ヤミザキとアメリカでドンパチしたり、インドで四首領ダウートともやりあったり……」
「今となったら信じるよ……。おまえ恐ろしい事に巻き込まれていたんだな……」
「私もその四首領ヤミザキの娘なんだけどね」
「ひえええっ!!?」
ヤマミにジト目で言われ、オーヴェは飛び上がった。
あれから積もる話を長々として、夕方頃にはオーヴェは帰っていった。
「もう疎遠したのに、再会できるなんて不思議だな」
「そうね。あの人も……変わったみたいですし」
「だな」
夜になって、携帯でリョーコと話していた。
やはり覚えていて「やっぱ夢じゃないんだー」「あんな事あったよねー」「楽しかったよー」とか和気藹々と談笑していった。
「今度漫画見してー!!!」
「じゃあ、そっちの小説ヨロ!!」
「えー!!!」
はははっ、とナッセとヤマミは笑う。
向こうでリョーコはぶすくれているかもと想像した。
田舎真っ暗の寝静まった深夜、屋根の上で二人並んで夜空を眺める。天の川が斜めに横切っていて美しい星々の煌きに余韻を感じていた。
異世界はもちろんのこと、あの無数ある星々に地球みたいな惑星があったりするかな?
どんな人々がどう暮らしているかな?
知らない魔法とか技術とかあるんかな?
ヤマミと一緒にたわいもない話を続けながら夜空に見入っていた……。




