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138話「さようなら!! 厨二異世界も楽しかったぞ!!」

 アロンガ魔法都市でのエキシビジョンマッチは大成功で、大盛り上がりだった。

 そのあとの余韻は続いていて連日祭り騒ぎだった。

 こうして、二週間が経った───……。



 澄み切った黄緑の大草原の上を風が撫でて波が通り過ぎていく。

 気持ちの良い青空に、地平線付近で夏空のような積乱雲が連なるのが見える。


「そろそろだな……」


 ナッセとヤマミとリョーコが並んで立っている。

 それを前に、寂しそうなナセロンたちが勢ぞろいしていた。


 アロンガ魔法都市の首脳である支配神ルーグと秘書のアンゼルヌーク。

 残りの世界三柱神の闘神ブラッディーと生命神ガーデス。

 七つの魔王アリエルとティメーアとゴルンレーヌ。

 引きこもり熾天使ヴィード、ゲマル、キョウラ、ジャキ、キルア、シシカイ、メミィ。

 何故か加わっているヒロインズのカカコ、レイミン、ロンナ、リュウシ。

 ギルガイス帝国の皇帝ライティアスと第二王子クロリア及び、聖騎士(パラディン)アーサー、グランハルト、アレフ。

 ザイルストーン王国のクバサ王とカナリア姫と移籍した聖女セーレイ。

 ホワイデー王国の王様と王太子ソロア及び、聖女(セント)ピーチラワーとテンショウ。

 エルフの国エーテリンの王様と王太子アルベルト。

 バレンティア王国のヴェレンデア国王と王太子ナッセ及び第二王子ガルンシアとマーレ姫とヤマミ令嬢とリョーコ。

 第四王子ナセロンとブラッドとルシア。

 そして金色の破壊神クゥナーレと娘ニーナ。


「実際に私は負けた……。ナッセよ好きにするがいい……」


 別れを惜しむようにクゥナーレは顔を逸らしていく。

 ニーナも「残念だね……」と背中をさする。


 するとバレンティア王妃が悲しげに前に出る。


「忘れないでね。あなたはかけがえのない私の可愛い息子なんだから……」


 全員、別れるという悲しみに暮れていた。

 するとヤマミが前に出る。素っ気ない顔で「なに辛気臭いわね。まだ方法があるから」と悲しい空気をブチ破る。

 ナッセとリョーコは「そういや聞いてなかったなぞ」と思い出す。


「これから確かに私たちは元の世界へ帰るわ……。けど」


 ヤマミはナッセへ振り返る。


「え???」


 思わず素っ頓狂な顔をする。

 ヤマミが再び異世界の連中へ振り返ると「んっ!」と踏ん張る。すると背後からスゥ──ッと透けた妖精王状態のヤマミが抜け出てくる。

 まるで幽体離脱だ。

 ナセロンたちは驚いてドヨドヨしていく。


《こっちの世界には『分霊(スクナビコナ)』という基本技術があるわ》

「それはなんだ……??」

《平たく言うと分身の術。魂を分けて意識を共有する高等技術。黒い小人は固有能力で自然とできるけど、こうして意識的にできる。こっちは肉体がないので精神体として出てるけどね》


 クゥナーレは世界大会で、ヤマミが小人を使役していた事を思い返す。

 まるで生きているかのように自由自在に地面を這って追いかけてきた。あれも分身の術の一種なのだろう。


「待てよ!!! オレは苦手だぞ!? できた試しがねぇ……」

《大丈夫よ。私がやるから》


 霊体の妖精王ヤマミがナッセとリョーコの背中に回ると、ドンと掌で押す。

 すると霊体の妖精王ナッセとリョーコが口からスポーンと飛び出た。誰もが「あっ!!」と驚く。


《え? あれ??》

「え? あれ??」

《意識繋がってる!!?》

「意識繋がってる!!?」


 二人ずつになったナッセとリョーコはハモった声を出して互い見合わせた。


《これなら同じ人格として残せるし、こっちも安心して帰れるでしょ?》

《ああ……。そっか、そういう事かぁ……》

《っていうか、分裂したままでいいのー?》


 ヤマミは振り向く。


《ナッセが分霊(スクナビコナ)させられて悪役令嬢に転生したという話を聞いて、前々から試してたからね。幽体離脱は自由にできるわ。それにそっちでも一生を終えて魂が還る時は、こっちとも融合して元の一つになるから心配ない》

《はええ……。記憶も統合されるんだっけ?》

《そうね》


 霊体のリョーコはなんか戸惑っているようだ。おろおろ。


《待って待ってー!? 異世界の自分と意識が繋がったまま暮らすのー!?》

《いいえ。お互い凄く遠い世界だから、繋がりは完全に途絶えてしまう。今は気にしなくていいわ。どっちもあの世へ行った時に魂が合体するから、その時に記憶が統合される。分かった?》

《そういや悪役令嬢のオレとも意識は繋がってないもんな……。後で女のオレと合体すんのかぁ……》

《人生を終える数十年後の話だけどね。ふふ》


 困惑するナッセの肩にヤマミは手を置く。


「あんたら人間離れしてて理解が追いつけぬわ」


 バレンティア国王は呆れつつも、安心したような笑みを見せた。

 皇帝ライティアスも「全くだ」とフッと笑う。


《あ! そろそろ時間だ……》


 最終回と同時刻はここまで……。感覚で分かる。

 原作漫画と大分違った結果になったが、これはこれで大団円のハッピーエンドになってスッキリしたぞ。

 少しずつ上空へと舞い上がっていくナッセとヤマミとリョーコ。


「ありがとう!!! こちらでも元気で暮らしていくよ!!!」


 みんな揃ってこちらに「さようなら」と満面の笑顔でバイバイ手を振る。

 奇妙だが王太子ナッセとヤマミ令嬢とリョーコ元令嬢も一緒に手を振ってくれている。

 徐々に遠のいていく自作作品のキャラに手を振られながら、オレたちも手を振り返す。


《みんな元気でな!!! じゃあな────!!!》


 遠のいていくに従って、白い雲が下降して通り過ぎて行き、黄緑に生い茂る地上もますます遠のいていく。

 そんな光景を視界に収めながら感激の余韻に浸って、成仏する気分で上昇していく。

 白い雲に覆われて真っ白に掠れていってみんなも地上も見えなくなってしまう。


《ああ……これで終わりかぁ…………》

《ふふっ、帰りたいの? 今なら戻れるわよ?》


 名残惜しそうなオレにヤマミが微笑みかける。


《え……、それはちょっと……!!》

《ええー!! 勘弁だよー!!》


 オレと揃ってリョーコは首を振った。

 三人で雲に包まれたトンネルを通り抜けながら、これまでやってきた走馬灯が脳裏を駆け抜けていった。

 女神マザヴァスによって強制的に異世界転移させられて、戸惑いながら自作の主人公とケンカしたりもした。

 しかし徐々に分かりあって、原作以上のハッピーエンドにまで導けた。


《これにて完結ってか────!!! やったぜええ────!!!!》


 完結させたと歓喜に打ち震えたオレは拳を突き出した。

 雲のトンネルの奥から眩い光が徐々に広がっていって、オレたちは感無量(スッキリ)と呑み込まれていった。


 パアアアアアァァァァァ………………!!


 こうしてオレたちは元の世界へ帰れたのだった……。

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