137話「金色の破壊神 対 ナセロン三人衆!!!」
ナッセは観戦席で、映像に映し出される金色の破壊神とナセロンたちを感慨深く見ていた。
「原作漫画と違ってしまったわね……」
「ああ」
原作漫画では、ニーナの姿でクゥナーレは金色ナセロンを完封するように強力な魔法を連発していったが、それを上回ってきて金色の破壊神にならざるを得ないほどに追い込まれた。
一度はナセロンたちが敗北するも、他の七つの魔王や世界三柱神が加勢に駆けつけてくれた。
それでも金色の破壊神はそれすら粉砕して、ついに究極の破壊神へと変貌して世界全てを無に変えるほどに至ってしまう。
その時のクゥナーレは絶望に濁った目をしていた。
だが、今の金色の破壊神クゥナーレは晴れ晴れとした顔で目に潤いが窺える。
優しく快い笑みが口元を走っていた。
「全力で勝負だッ!!! うおおおおおおッ!!!!」
「委細承知!!! ぬううううんッ!!!」
「フンヌウウウウウウッ!!!」
ナセロンは変身する。額の星マークが金色の破壊神の額紋章と同じ形へ拡大変化していく。胸にも紋章が現れ、両肩にも小さな羽が伸びる。それに伴って金色のオーラに切り替わって更に勢いを増す。
「これがボクの最強形態!!! 金色の光輪騎士ナセロン!!!」
ルシアの魔獣のような仰々しい全身が銀色に変色して、凄まじい高次元オーラが噴き上げていく。
「最終進化した超合金魔獣王ルシアだッ!!!」
ブラッドの全身をバチバチッと稲妻が迸り始め、逆立っていた茶髪がグググ……と伸びていって輪郭を白に染めた黒髪に変色していく。二本のツノに加え頭上から一本が伸びて三本のツノに揃った。
「これが究極ブラッドだ!!」
「それがうぬらの……最強か!!! 受けて立とう!!! 存分に来るがいいッ!!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!」」」
ナセロンとブラッドとルシアが一斉に飛びかかって、クゥナーレと剣を重ねた。
ド ン!!!!
その凄まじい衝撃波で周囲が震撼に震え上がっていって、溶岩の大津波がドッパーンと高々と噴き上げられた。
上空へと飛び上がりながら、激突の連鎖が連なって轟音がけたたましく鳴り響いていった。
「うおおおおおおおおッ!!! クゥナーレッ!!!」
「ぬうううッ!!! 今度こそ魔王を超えるッ!!!」
「フンヌウウッ!!! 我が魔王の力に震えろ!!!」
しばし互角かのように激突し合っていた。
「フッ! まだ甘い!! この程度では超えられぬぞッ!!」
金色の破壊神クゥナーレは感慨深く快く笑みながら、激しい黄金の雷を迸らせて三人を圧倒していく。
これまでとは一転して、神滅シリーズの技を次々と披露してきたのだ。
「「「ぐわあああああああッ!!!!」」」
「……だけどッ!!」
「うむッ!」
「負けられるかーッ!!!」
一気に追い込まれようとも、ナセロンたちは憤怒の表情で堪えて反撃に転ずる。
必死に破壊神を超えるべき全力を尽くす。
三人揃って凄まじいオーラを放って、限りなく闘志を燃やした。
「結界剣!!! ルミナス・トッパーッ!!!」
「拳王奥義!!! 轟魔爆炎破ッ!!!!」
「降魔・深淵刺殺剣!!!!」
最初の頃より愛用し続けてきた技を繰り出し、勢いよく真っ直ぐ走る三つの軌跡が唸りを上げてナセロンとブラッドとルシアがそれぞれ渾身の一撃を繰り出す。
裂帛の気合いを漲らせて「おおおおおおッ!!!」と吠えた。
ドゴアアアアアアアッッ!!!!!
上空を強烈な衝撃波が広々と広がっていった。
これまで以上の威力だと、観戦席にまでビリビリと伝わって来る。
「その程度では越えられぬぞ!!! 神滅大爆裂!!!!」
世界中をも駆け巡るほどの、金色の破壊神たる全身全霊の雷が四方八方に放たれて、全てを破壊し尽くさんと轟音を鳴り響かせた。
惑星をも穿って破壊する程の威力だ。
「「「ああああああああああああああああッッ!!!!」」」
ナセロンとブラッドとルシアはまともに喰らい、極大な雷に流されていく。
あちこち地形を穿ち、破片が飛び散り、粉々へと消し飛ばしていく。いくつもの火山が吹き飛び、溶岩の海が舞い上がり、多くの大地を粉々に消し飛ばす。
もはや決着したか、と思うほどの破壊力。観客を黙らすほどだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
皇帝ライティアスですら「むうっ、これほどとは……!!!」と青ざめるほどの威力だ。
世界の頂点に立っているとも過言ではない金色の破壊神。
誰も超えられようがない絶大な戦闘力で、並み居る強者を寄せ付けない。
しかし!!!
「まだまだーッ!!! 結界剣!!! Tライジング!!! ルミナス・XXIトラジェクトリ────ッ!!!!」
こらえ切ったらしいナセロンが必死の形相で七芒星を描く剣閃を三連発と全身全霊で繰り出す。
それは間違いなくクゥナーレの全身を穿つほどに決まる。
「強くなったな……!! 本当に…………!!」
半身たる金色の破壊神の力を持ったナセロンが見事使いこなし、それを昇華させた。
これまでは憮然と不満だったが、今となってはどうでもよくなっていた。
むしろ心地がよく感激するばかりだ。
ルシアもブラッドもそれに追いつかんとナセロンを通り過ぎて、クゥナーレへ渾身の技を喰らわした。
「降魔・大魔神螺旋玉ッ!!!!」
「我が魂をかけた拳王秘奥義!!! 終極・灼熱獄炎破ッ!!!!」
永久に吹き荒ぶ獰猛な黒刃による大嵐を閉じ込めた巨大な漆黒玉と、灼熱を右手に収束させて太陽がごとしの眩い光を込めた拳が同時に炸裂した。
ドガアアアアアッ!!!!
ナセロンとともに命を懸け続けてきた親友もここまで強くなれた。
これからももっと強くなるであろうと想像に難くない。
「天地無双の夢は……!!!」
「ボクが代わりに叶えてみせる────ッ!!!!!」
ルシアとブラッドに背中を押され、加速したナセロンが一直線とオーラを引きながらクゥナーレへ最後の力を込めた突きを繰り出した。
しかも胸の中にある女神マリアンヌスより授かった光球が光り輝いた。カッ!!!
「「「「あれは────ッ!!!?」」」」
誰もが驚く。クゥナーレもブラッドもルシアも見開く。
それはクラスチェンジ昇華となり、光で覆われたナセロンはさらなる進化を遂げた。
金色の力も取り込んで変質した究極の極致……。
そして戦闘力は一〇〇万を超えた。
「これが……これがあああッ!!! 守護神ナセロンだああああッッ!!!」
ブラッドやルシアに限らず、ナッセやヤマミ、リョーコ、皇帝ライティアス、更に兄ビクターまでもが後ろに浮かび上がってナセロンと一丸となって凄まじい高次元オーラで倍増させた。
大勢の人に支えられ引っ張られて、ここまで極致に達したと言わんばかりの剣幕に、クゥナーレは驚きつつも満足げに笑んだ。
「ファイナル・ルミナストッパ────ッッ!!!!!」
キィンッ!!!!
なんとナセロンの突きが金色の破壊神を通り過ぎて、神々の没落の切っ先が折れて宙を舞った。
更に金色の両翼が四方八方に飛び散り、ボロボロのクゥナーレは空中を舞っていった。
敗れたにも関わらず彼は安堵の笑顔を浮かべていた。
「見事だ…………“天地無双”ナセロン………………!」
もはや悔いなし、と広がっていく青天を視界に意識を手放した。
《なんとお──ッ!!! ついに金色の破壊神敗れる!!! 真の天地無双はナセロンだあああああッ!!!!》
「「「「どわあああああああああああああああああああッッ!!!!!」」」」
大興奮した観客が大音響で歓声を上げた。




