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129話「女神マザヴァス!!! ついに究極降臨!!!!」

 女神の声が聞こえて、ナッセを始め誰もがハッと見上げた。

 上空で赤紫の雲が渦を巻いているではないか。唸りを上げながら稲妻が迸る。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!


「あ、あれ!?」

「女神……??」


 赤紫の渦から女性の白いシルエットが下りてくる。


《我は偉大なる創造主……!! そして女神マザヴァスなり!!》


 カッと見開いて、全裸の手足を大の字に広げて眩い光線の嵐を四方八方に放ち始めた。

 嵐のように凄まじい量の光線が屈折しながら、味方であるはずのチート移転者を打ち貫いていく。


「ぎゃあッ!!!」

「ギエパッ!!!」

「うぎゃあああッ!!!」

「ぱぎゃあ!!!」

「ぎゃッ!!!」

「ぐわああああああああッ!!!」

「なんでだーッ!!?」

「たっ、助け……!!! ぎゃああ!!!」


 なおも数千万もの光線が屈折しながら、チート移転者を皆殺しにしていく。

 それに飽き足らず大陸中に降り注いで破壊しつくしていった。小さな村を消し飛ばし、森林を吹き飛ばし、山脈を砕き、湖を蒸発させ、多くの生き物の命を奪っていった。


「させねぇッ!!! 攻撃無効化ッ!!!」

「力を繋いで!!」

「おう!!」


 ナッセはヤマミと手を繋いで慌てて掌を突き出して、無効化空間を広げてバレンティア王国を包み込む。

 なおもしばらく破壊の無差別光線は吹き荒れ続けていった。

 女神のやる事かよ、とナッセは怒りに滲む。


 ズゴゴオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!


 グレチュア天地は絶え間ない破壊に荒らされ続け、噴火のように土砂が舞い上がり、火の手が上がっていく。

 まるで世界各地から噴火しているかのような地獄絵図だ。

 ホワイデー王国を包む聖女ピーチラワーは「こんな……酷い事ッ」と苦い顔をする。

 テンショウも女神の残虐行為に嫌悪していた。


「もはや、この星など破壊してもなんとも思ってなさそうですね」


 一体どれだけ多くの命が失われたか、想像したくない。

 おびただしい量の魂が、あの光り輝く女性へ吸い寄せられていく。チート移転者に飽き足らず、グレチュア天地の原住民の魂までも食らっているかのようだった。えげつねぇ。


《フハハハハハハハハハハ……!!! 我が偉大な力に畏怖せよ!!!》


 無効化の空間を広げていたナッセは「てめぇ……!!!」と腸煮えくり返っていた。

 ヤマミもリョーコも憎々しいと嫌悪の顔を見せていた。

 ナセロンとブラッドとルシアも「あれが……女神!? やっぱ悪魔だよ!!」と戦慄する。


「こうして手を下す事は創造主ルールに反するのではないのか?」

《よかろう。尋問に対して正直に答えねばならぬのも今や障害にならぬ。存分に答えよう……。この私がこうして『究極生命体』を器にした事により、この世界の登場人物になったのだ!!!》


 歓喜に満ちた光り輝く全裸女性。


「「「「なんだって──ッッ!!!!?」」」」


 まさかの事実に衝撃を受けた。

 本来、女神のままでは創造主として具現化された世界に直接干渉する事は禁じられていた。

 だから間接的にチート移転者を送り出して侵略するしかなかったのだ。


《移転者は特別な効力によって、この世界に登場人物として降臨できる。それに着目し、それらの魂を編み込んだ我が肉体でなら降臨できると確信した。これまで大量にチート移転者を送り出したのは敵を消耗させると同時に、私を登場人物にさせる為の生け贄でもあったのだ!!!》

「だが、女神の凄まじい力では器に収まりきれないんじゃ??」

《だから編み込んだのだ。大量のチート移転者の魂で編み込んで強化しているのだ。これで存分に我が力を振るって、きさまらを蹂躙してくれるわ……!!》


 もう勝ちは揺るがないと思っているのか、卑しい笑みでベラベラ喋ってくれる。

 それにしても多くの命をダシに自分本位の願望を叶えるなどゲス過ぎる。


「あんた!!! ここに降臨してどうするのよーっ!?」


 リョーコが斧を振り上げた。


《知れた事……! あの天上界じゃあ退屈すぎる!!! だからこそかつて地上で暮らしていた頃を夢見て、長らく異世界を具現化し続けてきたのだッ!!! 欲を満たせる地上界さえ思い通りになれれば、それ以上の娯楽はないッ!!! 私は娯楽に溺れたいのだああッ!!! アハハハハハ!!!》

「そ、そんな手前勝手な理由で、多くの命をッ!!?」

《ゴミどもが大量に沸くより、至高な存在である女神さま一人の方が価値があるではないか!!!》


 自惚れた笑顔で見下ろしながら女神はそう言い切ってしまう。

 メキメキと輝く全裸を覆うように白いガワが生成されていく。それはムキムキの筋肉隆々にラインを描き、背中からバキバキと八枚の白い翼が大きく広げていった。

 胸辺りに丸い紋様がズッと浮かぶ。

 美しい顔面を目と鼻と口のない白いマスクで覆い、その上部に紋様がズズズ……と浮かぶ。


《フフフ、ハハハハ、ハッハッハッハッハ!!! 見よ! どうだ美しいだろう?》


 神々しい熾天使(してんし)の羽を備える全身真っ白の人型、そして髪も目も鼻もない楕円形頭部が余計異質さを醸し出している。


《これぞ女神マザヴァス改め、究極創造神(デミウルゴス)マザヴァス降臨ッ!!!!》


 腕を組んだ直立不動で威風堂々と名乗り上げた。

 それだけで重々しい威圧が吹き荒れて嵐のように世界中を駆け抜けていった。バサバサと森林が揺れ、岩などが流され、海が荒れていく。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!!


「な、なんという事だ!!! 信じられねぇ……ッ!!!」

「ええ!! あの女神マザヴァスが……!!!」


 ナッセとヤマミがワナワナ驚き戸惑う様子に、マザヴァスは上機嫌になっていく。


《フッ……!!! 言葉も出ぬか……!? それはそうだろう》


 地上をも支配するという偉大なる女神の化身たる究極生命体にビビっているのだろう、と。

 だがもう遅い。

 これまで女神として何もできなかった鬱憤を晴らしてやる。死んだ方がよかったくらい後悔するような地獄を見せてやろうと意気込んでいく。


「「ペプシマンになったあああああ────ッッ!!!!?」」

「あっ!! ホントだー!!!」


 ナッセとヤマミが叫び、リョーコも思い当たって納得した。


《は????》

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