124話「各国の情勢!!! いざ決戦に向けて!!!」
バレンティア王国で軍備が整っていくが、各国も同様だった……。
全ては皇帝ライティアスより伝令されたので、女神マザヴァスの存在が世界に激震を走らせた。
実際にザイルストーン王国が攻め込まれた事実もあって緊張は高まっている。
ホワイデー王国でも軍備が整っていて、大勢の兵士が並んでいた。
もちろん聖女ピーチラワーとテンショウも上空の渦巻く暗雲を見上げていた。
「……いよいよですね」
「はい。この魔貴族テンショウも最後まで戦います」
第一王子ソロアもドキドキしてて落ち着かない。
「リョーコがいたら……」
そしてリョーコを追放してしまった公爵家が住んでいた大屋敷はすっからかん。
実は七つの魔王を倒した英雄としてリョーコの名が挙げられて、公爵家は逆に針のむしろにされて夜逃げしたのだ。
今まで貴族暮らしだったので、美味しそうに見えた毒キノコを食べてしまって結果はお察し。
まさにザマァ展開になったが、当人のリョーコは露知らず……。
ザイルストーン王国は再建中ではあるが、懸命に人々は奮起していた。
王様と王妃の背中を見てカナリア姫も「私も頑張らなくちゃ!!」と意気込む。
兵力を補う為に同盟国のギルガイス帝国より、騎士団を預かっているので一応万全になっている。
ギルガイス帝国の聖女である高位僧侶セーレイも残って守護に入っているぞ。
あくまで聖女って肩書きだけなので聖女ピーチラワーみたいな神がかった事はできない。
アロンガ魔法都市でもルーグを中心として、軍備が整っていく。
当のルーグは静かに上空の渦巻く暗雲を見上げていた。その後ろでアンゼルヌークが真顔で跪いていた。
「女神マザヴァスの軍勢が、フィーリア天地の時と同じように蹂躙しにくるのか……」
いつもの砕けた口調ではない。
ギルガイス帝国でも軍備は迅速に整っていた。
皇帝ライティアスを中心に聖騎士団と騎士団が足並みを揃え、ギルドと連携して傭兵が加わる形。
もちろんカカコ、レイミン、ロンナ、リュウシも傭兵として参戦。
第二王子クロリアも息を飲んで上空の渦巻く暗雲を見上げていた。
「父上が帰ってきた以上は安心できますが……、やはり女神の恐ろしさは身震いします」
ザイルストーン王国での襲撃に飛び出したものの間に合わなくて、犠牲者が出てしまった。
今回はそれ以上になるのだ。
するとライティアスが肩に手を置いてきた。
「クロリア……。心配せんでも、この余が命に代えても守ってみせる。それに頼もしいナセロンも新しく切り開けるだろう」
「はい!」
それを見ていたアーサー、グランハルト、アレフも覚悟を決めていた。
女神の不条理にも負けないよう、命を懸けてでも帝国を世界を守っていこうと……。
ナセロンとブラッドとルシアがようやくバレンティア王国へ入国した。
「物々しいな……」
「はれ。兵士たちが巡回してる」
「フン」
散策してがら話を聞いていくと、王太子ナッセが七つの魔王を従えて立ち向かうらしい。
あの混沌王アリエル、天空王ティアーメ、狂乱火星ゴルンレーヌが城に滞在していると聞いてルシアは複雑な心境に陥っていた。
「ナッセがいる城へ行こう!!」
「うむ」
「フン!!」
ギルガイス帝国のブラック通行証を見せると、難なく入城できた。
ナセロンも第四王子なのだ。
広い城の中を通っていると、見慣れた姿が視界に入った。
「あ!!」
思わぬ再会でナセロンがナッセとヤマミへ駆け寄っていく。
「はれーっ!!! ナッセだー!!!」
「ナセロン!!?」
「……私は!!?」
再会を喜ぶナセロンとナッセに、ヤマミはジト目で不満げ。
続いてルシアとブラッドも歩んできて居合わせる。
「随分長い間探していたが、ようやくナッセさまが見つかったようだな」
「……ナッセさま?」
「王太子だからな。呼び捨てするといかんのだろう?」
ルシアが珍しく“さま付け”してたのをブラッドが訝しんだが、王太子と聞いて強ばった。
ナセロンも王族なので呼び捨てしてても仕方ない。
いろいろ積もる話をした後、ナッセは明後日の方向へ顔を向けた。
「アリエルとティメーアとゴルンレーヌ来てくれ!!」
「「「はっ!!! ここに!!」」」
跪いた状態で七つの魔王三人がフッと現れた。
「こいつらをしごいてくれ。ヤマミが作った重力一〇倍&時空圧縮修行場があるから、そこでみっちり力をつけてくれ」
ルシアとブラッドは「え?」と目を丸くする。
ナセロンはのんきに「よろしくねー!!」とアリエルとティメーアとゴルンレーヌにそれぞれ握手していった。
こうしてナセロンとブラッドとルシアは七つの魔王にしばらくしごかれていった。
ちなみにリョーコはぐーたら寝してるぞ。一番だらしない。
ぱぽーん!!
「ナッセさま!! 修行場が破裂しました!!」
「……四時間くらいで限界? 時空間圧縮はやはり難しいわね」
「して、どうだぞ!?」
僅か四時間で三ヶ月くらい修行してボロボロになったナセロンたちが帰ってきたのだ。
アリエルとティメーアとゴルンレーヌに顔を向けたら、片目を瞑って親指を立ててくれた。
どうやら修行はバッチリらしい。
「ナッセー見ててくれ!!!」
ナセロンは「はあああッ!!!」と気合を入れると、ドンッと光柱を噴き上げて威圧が膨らんでいった。
額の星マークが金色の破壊神の額紋章と同じ形へ拡大変化していく。胸にも紋章が現れ、両肩にも小さな羽が伸びる。それに伴って金色のオーラに切り替わって更に勢いを増す。
「これがボクの金色の光輪騎士ナセロンだよ!!! ついになれたんだー!!!」
「おお!! さすがは七つの魔王コーチだぞ!!!」
アリエルとティメーアとゴルンレーヌは「えへん!!」と得意げに胸を張って鼻を伸ばした。
「こっちも新たな形態になれるようになったぞ!! ぬうううんッ!!」
ルシアの魔獣のような仰々しい全身が銀色に変色していった。
それにともなって凄まじい高次元オーラが噴き上げていった。新たに進化した超魔獣王の形態だ。
「魔王に鍛えられた結果オリハルコンに変質できた!! 名づけて超合金魔獣王ルシアだッ!!!」
「その理屈……分からねぇ……」
まさかの金属化に、誰もが驚き返る。
硬くなっただけではなくオーラも数倍以上に膨れ上がっているのだ。
「フン……。こっちも同じく変身できるぞ!! はああああ……!!!」
ブラッドの全身をバチバチッと稲妻が迸り始め、逆立っていた茶髪がグググ……と伸びていって黒く変色していく。外側が白で内側が黒という不思議な髪の毛だ。
しかも二本のツノに加え頭上から一本が伸びて三本のツノになったぞ。
どこぞの某少年漫画の超なんとかスリーっぽいような……。
「これが超絶究極王ブラッドだ!!」
親指を自身に指して自慢げに述べてきて、ナッセは「ぐあああ……!!!」と悶えた。
原作でもそんな感じに最終形態へ変身させていたのだ。まんま再現できてた。
実際はヒトが最高レベルに達する時に種族レベルが上がって、新たに進化するという密かな設定故である。
「はれ……。壊滅的にネーミングセンスないや」
「うむ同意。せめて魔神王ブラッドとかにすれば……!!」
「そこ黙れッ!!!」
ブラッドは怒りマークをつけて怒鳴る。
こうして戦力が十分に整ったようで、ナッセは安堵して顔を綻ばせた。
「……後は最終決戦だな!!」
「ええ」
ナッセとヤマミは精悍に笑みながら、バッと上空の暗雲を見上げた。
一方でリョーコはベッドの上で寝相悪いまま「ぐかーすかー」寝ていたぞ。




