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122話「七つの魔王も味方になっちゃったー!!?」

 七つの魔王である混沌王(カオスロード)アリエルは、どこか地中に埋もれたらしい遺跡を根城にしていた。

 かつて大昔に繁栄してたらしい城の朽ち果てた王座に腰掛けていた。


天空王(ヘヴンロード)ティアーメか……。なんの用なの? ないなら帰って」

「はっはっは。そう邪険にしないでくださいよ。お互いニーナさんからクビにされてニートですし」

「ニートって言うな!! 私ら魔王でしょ!!」


 ピクピク眉をはねてアリエルは不機嫌そうだ。


「いつも余裕ぶってるあなたが機嫌悪いのはニーナさんのせいでしょうかね」

「当たり前でしょ。ナセロンは金色の破壊神の半身。それを目覚めさせる為に協力するって話だったのに世界大会後に「あんたらは要らない」って一方的に切ったからねぇ……」


 恨みがましくアリエルは悪い笑みを見せて、憤慨しているのが伝わる。

 それでもティメーアは依然とにこやかな顔を絶やさない。


「まぁまぁ……。ナセロンに会ってきましたけど、確かに強くなってましたよ。もう我々と互角って感じです」

「そんなに強くなってるのぉー!?」

「はい。私も驚きましたよー」


 アリエルは目を細めて親指の爪を噛む。

 七つの魔王は基本的に戦闘力二〇万クラス。クセアムスやダークメアとルルナナのように工夫して上昇させる以外はそういう水準だ。

 ちなみにアリエルは二八万。ティメーアは二四万。ゴルンレーヌは二六万。

 それと互角っていう事は、ナセロンたちの戦闘力も二〇万クラスに達してるとも言える。


「むぅ。ついに金色の力を引き出してきたのね……」

「いえ、引き出さずとも強いですよ」

「マジなの!?」

「はい。マジです」


 するとドオンッと壁が粉砕されて大穴が空いてしまい、そこからもう一人が現れる。パラパラと破片が散らばっていく。

 思わずティメーアとアリエルは「!!?」と振り向く。


狂乱火星(フレンジースター)……ゴルンレーヌ!?」

「どうしてここに……?」


 地面から数センチ浮いたままの強気な女性。橙色のロングヘアーで身軽な衣服。右手には七又に枝分かれする剣。左手には糸のない弓。

 ただならぬ戦意に漲った立ち振る舞いに不敵な笑み。


「いつも唐突すぎるかない。アポとってから来てよぉ。ゴルンレーヌ」

「こっちもヒマになってたから遊びに来たよ」

「おや……まぁ……。これでニートが三体集いましたねぇ。はっはっは」

「ニート言うな!! 言うなら魔王三体でしょーが!!!」


 実はこいつらニーナの仲間としてナセロンへちょっかいかけて、金色の力を引き出す役目をやろうとしてたのにクビにされてヒマを持て余しているのだ。


「そんな事より、外が大変な事になってたよ。何か起こるの?」


 ゴルンレーヌは空いた穴を親指で指す。

 ティメーアとアリエルはそこを覗くと、竜の群れが空を横切ってるのが見えた。

 数千数万もの大群で飛んでいて異様な雰囲気を出している。


「おやまぁ、竜族が集結していますねぇ」

「どういう事か説明してよ!! 私ら蚊帳の外なの!?」


 のほほんなティメーアにアリエルは苛立っている。


「金色の破壊神がついに世界崩壊……って思いましたが、ちまたで噂になっている女神マザヴァスですかね」

「はぁ!? 女神ですって!!?」

「あたし聞いたよ。ザイルストーン王国に妙な軍団が襲撃してた話さ。女神の率いる神軍なんとかってヤツ。でもナセロンたちがやっつけたって」


 アリエルは「ぐぬぬ……」と置いてかれる疎外感を覚えていた。

 ティメーアは情報通なので、色々事情を話してくれた。七つの魔王は実はここにいる三人だけになってる事。

 バレンティア王太子ナッセとヤマミ令嬢が急に現れて世界大会を優勝したり七つの魔王を倒したりなど大手柄をあげている事。

 ナセロンたちが幾多の激戦をくぐり抜けている事……。


「アリエルさん遺跡に引きこもってるから世間知らずなんだよねぇ。はっはっは」

「ぼっちで遺跡めぐりばっかりしているからな」

「ティメーア、ゴルンレーヌ、黙ってて!!! これでも気にしてるからぁー!!」


 ぼっちで引きこもりなのを気にしていたアリエルは赤面してがなり立てる。


「そこで提案があるんです」

「なによ!?」

「ほう?」

「バレンティア王様にアポ取ってますから、ナッセたちに取り入れましょう。妖精王だから快く雇ってくれるかもしれません」


 アリエルは不機嫌な顔でズカズカ歩み寄ったと思ったら、満面の笑顔で親指を立てた。


「よくやったわねぇ!! 今すぐ行きましょう!!」

「ではさっそくレッツゴー!!」


 七つの魔王三人はフッと転移していった。




 バレンティア王城の謁見の間で七つの魔王であるアリエルとティメーアとゴルンレーヌが跪いていた。

 呆気に取られる王様と王妃。


「まさか本物の七つの魔王が来るとは思ってもみなかったわい……」

「そうですね」

「で……では何用か?」


 アリエルは久しぶりの交流にドギマギしてて目が泳いでいた。顔を上げる事すら緊張しててできない。

 ゴルンレーヌは空気を読んでか妙に静かだ。

 ティメーアが顔を上げた。


「私ら無職なんでナッセさまに取り入れようと思って」

「私たち七つの魔王じゃない!?」

「ティメーアはいつも単刀直入だね。まぁいいけどさ」

「そこ納得しないでよ!!」


 王様は「実はナッセはまだ……」と言いかけたら、ナッセとヤマミとリョーコがフッと転移してきた。

 タイミングが良すぎるくらいだが、ナッセは白々しく素っ頓狂な顔を見せた。


「あれ? お取り込み中なんか?」

「「「ナッセェェェエ!!?」」」


 王様と王妃、ガルシアン王子、マーレ姫が声を上げて再会を喜んだ。

 更に幼い弟と妹たちが駆け出してきて「「「ナッセ兄様あああああ!!!!」」」と涙目で抱きついてきたぞ。

 よしよしと撫でるナッセを見て、アリエルたちはポカンとする。


「あ、あれが……妖精王ナッセ!?」

「そうですよ。バレンティア王太子ナッセさまです。次期国王と期待されているお方です」

「そっちの女は?」

「黒髪姫カットのツンとした方がヤマミ令嬢ですね。金髪オカッパのお調子者は()令嬢リョーコです」


 リョーコはジト目で「お調子者で悪かったわね」とぶすくれる。

 ワイワイする幼い弟と妹に囲まれながらナッセは七つの魔王三人へ振り向いた。


「なぜここへ来たか分からんけど、ちょうどいい。力を貸してくれ」


 するとアリエルとティメーアとゴルンレーヌは「はい喜んで!!」と二つ返事で引き受けたのだった。

 ヤマミはジト目で「あんなキャラだったかしら?」と呆れる。

 原作漫画ではアリエルがネチネチちょっかい出したり仲間を殺害したりしてナセロンを怒らして金色の力を覚醒させたりと暗躍していたのに、今や道化っぽくなってしまってる。


「やったわ!! これで堂々と国に引き込もれるわねぇー!!」


 嬉しすぎてアリエルが踊り舞いしていた。ルンルン!

 ナッセは後頭部に汗をたらして「こんなキャラだっけ?」と作者としても困惑したぞ。

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