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120話「お怒りの女神さま、転移者にパワハラする!!!」

 ヤマミの時空間部屋で暇を持て余していたリョーコがぶすくれるように頬杖をついていた。

 フッと転移してきたナッセとヤマミにジト目でじろり。


「聞いてくれ!! あの皇帝ライティアスが味方になったぞー!!」

「リョーコ差し入れ持ってきたわよ」


 既に貴族でもなくなったリョーコでは皇帝に会えないので置いてかれたのだ。


「機嫌なおせよ。ヴィード連れて行った時に聞いてみて「一般人はダメですね」って言われてるんだし」

「こっちもギルガイス帝国の城で寝泊りしてくれと言われてたけど、断って帰ってきたからね」

「はいはいー。いいご身分ねー」


 リョーコはヤマミが持ってきた差し入れにガツガツ喰らいついていた。

 豪勢な料理だったので、余った分をわざわざ頂いたのだ。皇帝にも断りを入れているから大丈夫。

 向こうは後で食べるのかと思ってるだろうけど……。


「ともかく、女神マザヴァスには時間の猶予はないわ……」

「ああ。最終回までの時間が限りだからな。せっかく洗脳できた最強格でゴリ押しができなくなっちまった。そして時間をかけて戦力を準備する(いとま)もねぇ。今頃焦ってっかもなー」

「そうね。破れかぶれでチート移転者大軍団を世界にリリースしそうだわ」

「……それだけで勝てねぇよ。女神(アイツ)がバカじゃないなら分かってるはずだ」

「ええ」


 こっちには最強格ライティアスも味方につけた磐石の布陣……。

 ナセロンたちも急速に成長しているし、金色の破壊神だって女神を倒す事に優先する。

 これでは例え、チート移転者を大量にしかけても全滅するだけだ。こっちだってクラスチェンジ済ましてるし、よほどの強敵じゃなければ余裕で勝てる。

 どうあがいても女神マザヴァスに勝ち目はない。


「チート移転者が女神の手駒なんでしょー? だったらチートレベル上げればいいじゃないの?」


 口元に食べかすを付けつつ、リョーコは振り返りながら言ってきたぞ。


「それは多分ムリだぞ」

「できてるなら、わざわざ最強格であるライティアスを時間かけて洗脳しようと考えないもの」

「即答ぉー!!?」


 きっぱり言い切られて逆にリョーコが仰天する。




 一方で、女神マザヴァスのいる雲海と青空の亜空間では『無限樹』が綺麗に整列して浮いていた。

 洗脳ライティアスに授けたのは、その中の一つに過ぎない……。

 そしてそれよりも巨大すぎる『神樹』が雲海に根を張って高く高く聳えていた。

 その根元で巨大な女神が佇み、豆粒ほどの転移者が縦横に整列していた。


《うぬう……!!! チートレベルを限界以上に上げてやるッ!!!》


 怒りが収まらない女神は両手から女神パワーを送っていた。

 コオオオオ……!!


「ち、力が沸き上がってくる……!!!」

「信じられないパワーが……!!?」


 メキメキと移転者の体格が膨らんでいく。

 しかし風船が破裂するみたいにパンと弾けてしまう。次々と移転者は爆ぜて肉片が飛び散った。

 後方で控えていた移転者は「ひっ!!」と尻餅をついた。


《なぜだ……!? なぜ壊れるッ!!? なんてヒトは脆弱すぎるんだあぁぁあ!!?》


 女神が怒り任せに拳を叩きつけて、移転者をグシャッと潰してしまう。


《何度やっても、この私のパワーを受け入れられずに爆ぜちまうッ!! オーヴェを始めとして他の移転者も限界ギリギリで、あの(てい)たらく!!! さっきの移転者どもも矮小なザイルストーン王国を攻め落とせぬほどゴミかッ!!! きさまらもゴミと同じなのかあああッ!!?》

「そ……そんな事を俺らに言われても……!?」


 怯んでいる移転者を鷲掴みにして、女神の顔まで寄せた。


《きさまらがゴミすぎるから悪いんだあああッ!!! なんで強くなろうとしなかったッ!!!?》

「あがが……苦し……ぃ」

《どいつもこいつも、この私の思い通りになってくれない!!! きさまらも弱すぎて思い通りにならないのが悪いんだからなああああああッ!!!》

「ぎえぱっ!!!!」


 移転者をグシャッと握り潰し、血飛沫が飛び散る。

 他の移転者も「ひいっ」と青ざめて怯む。中には逃げ出す人もいたが、しっかり女神の左手に収まってて同じく握り潰された。グシャアアッ!!!


《答えろッ!!! どうすれば思い通りになってくれるんだああッ!!?》

「だっ、だったら女神さま直々に攻めればいいじゃないですか!? 誰も敵いませんよ!!」

《愚問しかできないのか!? ああ!?》


 口答えしたらしい転移者を握って顔に引き寄せる。女神の血眼で睨む形相が恐ろしい。


《そんな事ができてたら、きさまら役立たずを転移させたりはしなかった!! 始めっから私一人で皆殺しできてるんだからなあああああッ!!?》

「がぱべっ!!!!」


 また握り潰して鮮血が飛び散った。

 逃げられないと悟った移転者は腰が引けてブルブル震えるしかない。


「いやだ……!! 帰りたい……!!!」

《帰りたい!? ああ!? きさまらゴミどもが元通りの世界へ帰れると思うかッ!? この時の為に『究極生命体』を創っておるのだあああッ!!!》


 女神が指さす先に、宝玉のような水晶玉が浮いている。

 中は液体で満たされていてゴポゴポ気泡が上昇していく。その中で蹲る姿勢の人型が見えていた。


《私の力に耐えうる肉体を創るべき、きさまらの死後は『究極生命体』の生贄となるように回路を設定した!!! 魂を編み込む事で頑強な精神の鎧を作る為になッ!!!!》

「そ……そんなッ!!?」

「私たちは単なる材料でしかないの!?」

「異世界転移した先が、こんな……ッ!!!」

「いやだー!! 帰りたーい!!!」


 逃げ出す転移者を掴み、ボキボキと砕いてグシャッと血の雨を降らした。

 ますます竦み上がって青ざめていく移転者たち。


《きさまらに何も必要はない!!! 全ては、この女神の思い通りになるか否かでしかないッ!!!》


 広げた白い両翼から羽毛のような破片を散らばせて、それを収束させて楽器ハープを生成する。それを女神はポローンと糸を弾く。すると不気味な音色が広がっていった。

 怯えていた転移者は徐々に目の焦点が合わなくなり、意思が消失した。

 そして今度は牙を剥き出しに怒りの形相に変わっていく。


「「「「グワアアアアアアアアアアアーッ!!!!」」」」


 ヒトの持つ暴力性を限界まで引き出され、ただの獣のように成り下がったのだ。

 それが何千万人もの移転者に広がっていった……。

 女神は狂気に歪んだ笑みを見せ、後ろ髪がザワザワと不気味に舞い上がっていく。


《最終決戦だあぁあ……!!! 妖精王ナッセェ!!!!》

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