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117話「帰ってきた皇帝ライティアス!!! そして誓い!!」

 ナセロンは“極光(きょっこう)震天動地(しんてんどうち)”を受け止めるだけで大半の力を使ってしまった。

 それでも父の想いがこもる激流を受け止めたいと思った。だから五芒星形の盾で耐え忍んで逆に吸収し得た。

 もし、それが単なる攻撃技であればナセロンは木っ端微塵に消し飛んでいただろう。


「父さんッ……!!!!」


 溢れるほどの高出力エネルギーが、ちゃんと『結界剣(シルアブレード)』によって自分の剣に収まりきって確信した。

 本当は大切な息子を殺したくなかった。

 だが、それでも巨悪である女神と戦うのならば、この程度の余を勝たなければ未来はないと、極大技を敢えて放ってくれたのだ。

 その父の想いを汲んだからこそ、息子であるナセロンは吸収し得た。


「目を覚ませええええええええええッ!!!!」


 ナセロンは叫び、一直線と空を駆け抜けながら渾身のひと振りを雷霆天尊(ライテイテンソン)へ繰り出した。

 全身全霊込めた一刀が神々しい軌跡を描く。


「ぬうおおおおおおおおッ!!! “三千世界”ッ!!!」


 雷霆天尊(ライテイテンソン)も必死の抵抗と周囲から菱形の群れを殺到させ、ナセロンの極大結界剣(シルアブレード)と激突。眩い閃光が溢れた後に、空を大爆発が覆った。


 ドガアアアァァッ!!!!


 そしてついに雷霆天尊(ライテイテンソン)のアイマスクを断ち切った。パキンッ!!!




 その激戦を見守っていたナッセとヤマミは固唾を呑んだ。


「あいつ……やりやがったぞ……!!」

「ええ!!」


 雷霆天尊(ライテイテンソン)を縛っているであろう女神より授けられたアイマスクの破損……。

 ナセロンの一太刀が女神に届いたのだ。




 それを見てしまった女神マザヴァスは愕然と崩れ落ちそうな顔でワナワナ震えていた。


雷霆天尊(ライテイテンソン)が……!!! 私の雷霆天尊(ライテイテンソン)があぁ……!!!!》


 アイマスクによって洗脳を強固に維持させていた。

 洗脳に成功はしたが、時間の経過により打ち破られる懸念があった為だ。だからこそ女神パワーを受信できるアイマスクを被せたのだ。

 しかし並大抵の威力では決して砕けぬ洗脳装置のはずが、極限にまで高められた結界剣(シルアブレード)によって断ち切られてしまった。


《というか、なんで雷霆天尊(ライテイテンソン)の極大技を吸収できるんだよッ!!!? 一番ありえないだろがあああッ!!!》


 思い通りにならない失意と苛立ちで地団駄を踏む。

 悲しいかな、独り善がりの女神が父と子の絆を理解するなど永遠になかった。


《くそがあああああああああッ!!!!》





 静まり返った凍てつく夜の砂漠にそよ風が吹き、砂塵が少し流れていく。

 そして眩い朝日が昇ってくる。

 それと同時にライティアスは目を覚ましていく。


「あなた起きられたのですね……」

「む……? マドレーヌ……??」


 エルフみたいな耳が横長な金髪ロングの優しい妻がライティアスを膝枕に乗せていた。

 その周囲をナセロンたちが取り囲んでいて見守っていた。

 ライティアスは自然と涙が頬を伝って、砂漠にポタンッと滴り落ちた。


「余は思い出した……。全てを…………」


 目を瞑り、これまで消えていた重厚な思い出が脳裏に流れて感涙している。

 女神のアイマスク越しで呪縛していたものが消し飛んだのだ。もはや女神の洗脳はない。


「ナセロンよ……。いつの間に大きくなったな。そして強くなったな」

「えへへ……。でもみんなの力があってこそだね」


 ナセロンは照れくさく笑いながら、カナリア姫を見やる。


「っても絆を繋げたのナセロンでしょ? 私はきっかけを与えただけよ」


 カナリア姫は快くウィンクする。

 ナセロンが「ありがとな」と笑顔で言うと、カナリア姫は赤くなって「そ、そんな事ないから」と慌てた。

 アーサー、グランハルト、アレフは快い笑顔で見下ろす。


「お帰りなさいませ。皇帝陛下……」

「父上。随分待ってました」


 クロリアも和やかに笑む。


「しかし、余は雷霆天尊(ライテイテンソン)として虐殺戦争をザイルストーン王国に……」

「やったのは神軍……転移者どもであろう?」


 今度はザイルストーン王国の王様が厳粛と言い放つ。


「もはや神軍はナセロンたちが蹴散らした。そして洗脳されていたライティアスを救出した。それでいいではないか?」

「だがッ……!!」

「父さん!! 敵は女神マザヴァスってヤツでしょ!!? 一緒に闘ってくれ!!」


 なんとナセロンが屈み込んでライティアスの手を取る。


「ナセロン……」

「頼むよ!!」


 しばし離れて触れる事はおろか会話すら交わせていなかったのだが、久しぶりに息子と接して熱く心が温まっていく。

 このまま軽率に罪悪で自らの命を軽んじては本末転倒。

 皇帝としても父としても責任を持って、この後をどうするかが自分の責務と考えた。


「余とて、あの女神マザヴァスには大きな借りがある。それに今回だけで侵略戦争が終わるとは思えぬ……。分かった力を貸そう」

「よかった!! ありがとう!! 父さんっ!!!!」


 明るくなる息子に、ライティアスは感激する高揚感を覚えた。嬉しいという気持ち。


「敵は女神マザヴァスにありだな!!」

「「「「ああ!!!」」」」


 ザイルストーン王国の王様が明確な敵を述べ、一致団結したようにみんなは頷いた。

 ナッセ、ブラッド、ルシア。

 クロリア、セーレイ、アーサー、グランハルト、アレフ。

 ザイルストーン王国のみなさんとカナリア姫。

 皇帝ライティアスと王妃マドレーヌ。

 昂ぶる戦意を持って、明るくなっていく空を見上げた。まるで諸悪の根源たる女神マザヴァスが浮かぶかのように見えた。


「女神マザヴァス……絶対に倒してやる!!!!」


 ナセロンは誓うように光の剣をかざした。

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