114話「ギルガイス聖騎士団の呼びかけ!!」
厳かに佇む雷霆天尊の周囲を無数の光の菱形がヒュンヒュン周回している。
高出力のエネルギー結晶ともいえるギルガイス王族のユニークスキル。普段は強固な光のシールドとして具現化されるが、固有能力も備える。
「ここは父上の目を覚まさなくてはなりません!!」
クロリアは第二王子として、洗脳された父を取り戻そうと決意する。
例え、亡き兄者であるビクターにも遠く及ばぬとしても、第四王子ナセロンを守る為に戦わなければならない。
今は父と弟を取り戻す事が使命と心得る。
「だったら、やるしかねぇな!!」
「ああ。せっかく皇帝陛下と再会したのだから、敵として捨て置けない」
「不条理ばかりで嫌になるが、どちらにしても命を懸けて全うする事に変わらねぇ!!」
アーサー、グランハルト、アレフも身構えていく。
雷霆天尊はアイマスク越しで目を細める。
高位僧侶セーレイは全体回復魔法の光でナセロンとブラッドとルシアを癒し続けていた。思ったより傷が深い。シュワアア……!!
「行くぞ!! 天より光を授かりし聖なる力を我が手に!!! ライトソードッ!!!!」
クロリアもナセロンとライティアス同様に光の剣を具現化し、眩い刀身が唸る。
「……ギルガイス帝国の王族特有のユニークスキル。最初はそのような口上と基本的な形状で具現化する」
「そこは覚えておいてですね……。父上」
「知識そのものは変わらん。ただ、思い出などが抜け落ちている。忌々しいがな」
クロリアは厳かな父上らしいなと感じた。
ギルガイス帝国の為に重荷を背負って皇帝として働き続けてきた。その背中を見続けてきた。
彼は不審な事を許さない性分だから、洗脳されている自分さえも毛嫌いしている。
「ルミナス・パースリーシールド!!!」
クロリアもナセロン同様に、三方向に菱形を連ねる三角形の光の盾が前方に現れる。
かつて王太子ビクターもルミナスシールドを最終進化させて、金色の破壊神と渡り合っていた。
しかしそれも痛み分けの後遺症で失ってしまった。
……そして世界大会で死んだ。
「大したものだな。ルミナス・シールドは同じ王族でも展開できるとは限らない。ましてや第二段階へ進化できる事も稀だろう」
「父上と兄者と比べればそんな事ありませんが、精一杯やらせていただきます!!」
クロリアはカッと眼光を煌めかす。
「“火樹銀花”!!!」
三角形だったのが三方向へ菱形がパカッと分割し、その中心で光球が膨らんでいく。
そこから尾を引く光弾を超高速連射して、一直線と砂漠を突き抜けて飛沫を吹き上げながら雷霆天尊へ弾幕が覆う。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
爆発球が幾重も連なって連鎖していく。
凄まじい余波が吹き荒れて砂塵が高々と巻き上げられていく。相当な威力だ。
「まだだ!! 聖騎士団、頼みますッ!!!」
「「「おう!!!!」」」
クロリアに頼まれてアーサー、グランハルト、アレフが飛び出す。
全身全霊と戦意を漲らせて「うおおおおお!!!」と吠える。
アーサーは大聖剣ギガトンカリバーを正眼に構え、左右に残像でブレていく。
「北闘豪剣流奥義・無双夢幻閃ッ!!!」
雷霆天尊を残像で囲むように包囲した後、一斉に大聖剣を振るう。
グランハルトは二刀流の聖剣を振るい、雷霆天尊へ幾重の剣戟を炸裂させていく。
「全力で行かせてもらいますッ!!!! 幾万塵斬ッ!!!!」
嵐のように絶えない幾重に連ねる剣戟を繰り出し続ける。
「旋波・絶槍殺ッ!!!」
アレフは凄まじいオーラを纏いながら螺旋状の渦を纏って突進。一直線と突き刺さるような槍が雷霆天尊へ襲いかかる。
この一斉攻撃が轟音を伴って炸裂する瞬間。
「だが余に遠く及ばぬッ!!! “三千世界”!!!!」
雷霆天尊から後光のように光輪を伴う輝きが膨れ上がり、菱形の乱舞が再び荒れ狂う。
その凄まじさで天地をも揺るがすほどの震撼が響き渡った。
「「「「うわああああああああああああああッッ!!!!!」」」」
なんとクロリア、アーサー、グランハルト、アレフは呆気なく菱形の乱舞を浴びて、破片を散らしながら上空へ舞っていく。
縦横無尽に飛び交い、幾度も打撃を与えてくる菱形の乱舞になすすべがない。
四人揃ってドシャッと無残な姿で砂漠に沈んだ。
「……故にナセロンの時よりも手加減はしておいた。これから精進する事だな」
うつ伏せでボロボロにされたクロリアは右手を伸ばして震わせる。
「ち……父上……!!!」
既にアーサー、グランハルト、アレフは気を失って微動だにできない。
それでもクロリアは必死に手を伸ばし続ける。
例え、届かぬとも父上を取り戻したいという一心で……。
「すまぬな。余はこれからもっと悍ましく凄惨な虐殺を世界に行う事になる。うぬらに討たれるのもやむなしと思う。……許せ!」
アイマスク越しに悲しげな視線が見えた。
クロリアは見開き「ちっ……父上……!! だ、ダメだ……!!! どうか……!!!」と掠れ掠れに声を発して止めようとする。
これから女神マザヴァスの傀儡として虐殺を重ねて欲しくない。
「そっ……そんな事……させるもんか!!!」
なんとナセロンが震えながら立ち上がり、俯いていた顔を上げた。
毅然と見据える視線で雷霆天尊を定める。
「ナセロン……まだ立つか!?」
「これ以上、父さんを悪党にさせてたまるかーっ!!!」
完全に傷が癒えたわけではないのに、ナセロンは気力を振り絞って光の剣を具現化して牙を剥く。
父さん、と呼ばれて雷霆天尊は見開く。
ドクンと動悸して熱い感情が湧いてくる。
「こっちもルミナス・ペンタグラムシールドだあああッ!!!!」
なんとナセロンの前方に現れた三角形の光の盾が形を変え、拡大化して五芒星形の最終形態へ進化したのだ。ドンッ!!!
さしもの雷霆天尊も電撃が走ったかのような衝撃を受けた。




