105話「女神の神軍による大虐殺!! 誰か助けて!!!」
女神マザヴァスから与えられた『無限樹』という大樹が生えた巨大な浮遊島が戦艦のように、ザイルストーン王国へ空から侵攻してきたのだった。
洗脳された皇帝ライティアスは女神より雷霆天尊という名を授けられ、神軍司令となった。
そしてチート移転者部隊を神軍として率いてきた。
「これよりザイルストーン王国を攻める。存分に力を振るうがいい」
雷霆天尊のご命令にもチート移転者は嬉々とする。
「「「おおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」」」
「初バトル待ってましたあああ!!!」
「ようやく初陣だ!! 思いっきりチート振舞うぜ!!!」
「初の異世界攻略だ!!!」
「ひゃっほー!! すげぇ力が沸いて何も怖くねぇ!!」
「まずは砂漠の国を落とすんだな!!」
「おおお!!! このスキルを試したいぜ!!!」
オーラを纏って神軍は喜々とザイルストーン王国へと押し寄せた。
あまりにも軽率で幼稚な進軍だ。まるでゲームをしている感覚で侵略を楽しんでいるのではないか。
これも女神が精神汚染してまで虐殺をやらせているのだ。
「……こういうのは好かんな」
無限樹の司令室で一人、雷霆天尊は顔をしかめた。
元は皇帝として重い責任を背負って大国を治めてきた身なので、今の違和感しかしない心身の軽さに加えて、女神の幼稚さに辟易しているからだ。
それでも責任を持って女神さまの命令を遂行してみる事にしたが……。
「余りにも一方的な侵略。これに何も正当も正義もない。しかも神軍とやらに信念も誇りも持ち合わせていない」
本来なら、自らも出陣して制圧するべきなのだが気が進まず、神軍に戦線を任す事にした。
勝ち負けなどどうでもいい。
もはや心にあらずと雷霆天尊は冷めた目で戦況を見守る。
強襲を受けたザイルストーン王国では爆撃に包まれて、業火が貪る地獄絵図になっていく。
人々は混乱して逃げ惑う。
王宮からは慌てて軍隊が守衛に出張ってきた。
「一体何が起きておるのだ!?」
「あの大きな浮遊島から、見た事のない軍勢が押し寄せてくるぞッ!!」
「魔族でも魔貴族でもねぇ!? あいつらは一体何者だッ!!?」
「それよりも虐殺を食い止めろッ!!」
将軍を筆頭に、大勢の兵隊が槍を抱えて迎撃に向かう。
しかしチート転移者はゲーム感覚で襲撃する。
「この柴木タイさまの力を見せてやるッ!! チートスキル『轟鞭』!!!」
悪辣な笑みで、具現化したムチを振るうと生き物のように縦横無尽と暴れまわって破壊を撒き散らす。
長くしなる音速を超えた連撃を繰り出し、建物や人を破裂させていく。
それに対して兵士は得物ごと狩られて絶叫するしかない。
チート移転者はそんな悲痛な悲鳴にも構わず、左右の腕を超高速で振るいまくって虐殺を楽しむ。
「ケッ! 岡市テヤルも負けてられねーぜ!!! チートスキル『毒流実』!!!」
木の実ぐらいの大きさの紫に染まった毒玉を無差別に乱射する。
毒に侵された人々は「ぐああああ……!!!」と苦しみもがき、目や口から血がドバドバ流れて死に絶えていく。
慌てて神官や僧侶たちが解毒の魔法を唱えるが、通じない。
そんな人々を嘲笑って毒玉を振りまく。
「異世界転移たのちー!!! この座栗イクゾウのチートスキル『血刃剣』で無双虐殺だー!!」
全身から自在に血のトゲを生やしたり、左右の手から血の剣を生成したりして、兵士たちをことごとく惨殺していく。
全身刃物みたいな感じで始末に負えない。
「笛美ニストも楽しむわよ!! チートスキル『押忍捨蔑』で男どもは殺し合いな!!」
悪辣ババアがハンドガンでピンクの弾丸を撃つ。それに当たった男は操り人形と化して、他の人々を殺戮していく。
おまけに自殺もさせる事も可能だ。
しかも男の意識はそのままで、体が勝手に虐殺してしまうので精神的にキツい。
「男のクズども、苦しいだろー!? もっと苦しめー!!! あっはっはー!!!」
男どもが嫌々泣きながら虐殺をしていくのを笛美ニストは喜々と嘲笑う。
こうして誰もチート移転者にはなすすべがなかった……。
「ぎゃあああッ!!!」
「げぶうっ!!」
「うげええ!!!」
「あぎゃああ!!」
「助け……っ!!」
「うぎゃーッ!!!」
さっきまで青空の下で平和だった王国は、今や血飛沫が飛び交う地獄絵図だ。
将軍も兵隊も歯が立たず虐殺されていく。
あまりにも一方的な大量殺戮だ。
「「「ひゃっははははははーッ!!!!」」」
チート移転者は大笑いしながら、罪もない住民や兵士を虐殺していく。
快楽に溺れて悪辣と殺戮ゲームを楽しんでいく。
そんな悍ましい侵略行為を雷霆天尊は顔を歪ませ、怒りで拳が震えていく。
こんなのが女神のやる事か……!? なぜ無益な殺生を楽しめる!? もはや堪えられんッ!!
「やめろおおおおおお────ッ!!!!」
そんな折、希望かと思えるほどの光が走った。
多くのチート移転者が目を丸くし、驚愕するままにその光に呑まれていく。
「ルミナス・トッパアァァァア────ッ!!!!」
聖騎士ナセロンが光の剣を突き出したまま、超高速突進してことごとくチート移転者を蹴散らしていった。
血飛沫とともに砕き散らされて、チート移転者は肉片となって飛び散る。
そして、追い込まれていた住民と兵士たちは「あっ!!」と笑顔になっていく。
「なんだ!? てめぇッ!!!?」
「楽しい虐殺を邪魔すんなよ!!!」
「我々は女神さまの──」
チート移転者は怒り狂う。
「断じて許さんッ!!! そして思い知るがいい!!! この大魔獣王の力をなッ!!!」
今度は憤怒の顔をしたルシアが豪腕を振るって、ことごとくチート移転者を殴り砕いていく。
まさに魔獣がごとくの獅子奮迅だ。
「な、なんだッ!!?」
「あの大男はああッ!!?」
「いいから二人ごとき、我らで蹂躙できんことないだろッ!!!」
「「「おおおおおおおおおッ!!!」」」
しかし三日月の漆黒刃が無数と飛んできて、チート移転者を次々爆撃していった。
なんと漆黒の剣を振るう暗黒君主ブラッドが降り立ってきたぞ。
現れた三人に対してチート移転者は「テメーら、なにものだッ!!?」と吠える。
「ボクは聖騎士ナセロン!!!」
「我は超魔獣王ルシア!!!!」
「オレは暗黒君主ブラッド!!!」
なんと満を持してナセロン、ルシア、ブラッドが揃って登場したのだ。
しかしそれでもチート移転者四人は殺気立って「生意気な!!! ぶっ殺してやらァ!!!」と飛びかかる。
「この柴木タイさまの『轟鞭』でしばいてやるッ!!!」
「座栗イクゾウの『血刃剣』で死ねいッ!!」
「岡市テヤル自慢の『毒流実』で苦しみ悶えろッ!!!」
「ギャオオン!! 笛美ニストの『押忍捨蔑』でアンタらゴミども苦しみながら死になッ!!」
しかし虐殺に対する激怒を力に変えるが如く、ナセロンとルシアとブラッドは一斉に憤怒の攻撃を繰り出した。
ナセロンの光の剣が、ルシアの爆炎拳が、ブラッドの漆黒の剣が大気を切り裂くかのように振るわれて、唸りを上げて烈風が巻き起こる。
ド ンッ!!!!!
四人のチート移転者は豪快に吹っ飛ばされて、破片を散らしながら空へ舞っていく。
「「「「ぐわあああああああああああああああああッッ!!!!!」」」」




