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103話「最強格のギルガイス皇帝を味方にしてぇ!!」

 ギルガイス帝国……。

 軍事力と経済力が最高レベルのガロンナーゼ大陸最大の国。

 大きな堅強な城が聳えているのを、ナッセとヤマミは見上げる。


 中に入ると、多くの騎士が等間隔で並んでいる。

 ナッセがバレンティア王太子だからか、奥へ進むたびに次々と敬礼してきた。

 緊迫感で息を呑みながら、謁見の間へ踏み入れた。


「ようこそ、バレンティア王国のナッセ王太子。遠路はるばるご苦労……」


 ヴェールで覆われた王座に、荘厳と人影が薄ら浮かんでいる。

 そばに大臣。その左右に三人の聖騎士(パラディン)が控えている。アーサー、グランハルト、アレフ。

 この広場の壁際に騎士が並んでいて物々しい。


「余こそがギルガイス帝国を治めるライティアス皇帝である。何用か?」

「今回、訪問を受け入れて感謝致します。そして単刀直入申し上げたい事がございます」


 ナッセとヤマミは跪き、顔を上げる。


「申してみよ」

「金色の破壊神が依然として世界崩壊を目論む手前、もはや猶予はございません。着々と侵攻は進んでおると見ています。こちらもそれに対抗するべき、皇帝陛下の力を借り戴きたいのです」

「ならぬ!!!」

「え……!?」

「我が力は絶大。故に他国の侵攻を理由に一国の王太子ごとき指図じみた進言を受け入れられるわけがなかろう」


 毅然とにべもなく断ってきたぞ。

 こちらとしては女神マザヴァスによる移転者大侵攻や金色の破壊神の世界崩壊と、立て込んでいるので余裕ないのに……。


「皇帝陛下としては悪手ね」


 なんとヤマミが立ち上がって一言。

 それだけで周囲がザワリと不穏な雰囲気を醸し出していく。


「そのように世界の危機に対して何の対策も打ち出さず静観に決め込むなど愚か。七つの魔王のダクメーアとルルナナに対しては迅速に聖騎士(パラディン)を派遣したというのに」

「おいおい!! そりゃ俺たちはダメだったけどよ」

「助けてもらった恩人に何も返せぬのは確かだが、今回ばかりは寛容に見過ごせぬ」

「……おまえら不条理だな。ハハッ」


 三人の聖騎士(パラディン)も戦意を漲らせてきている。

 騎士たちも身構えつつある。右手が剣の柄に触れているのだ。


「ちぇ……、仕方ねぇな」

「ええ」


 なんとナッセも立ち上がり、キッと牙を剥くかのように見据えた。


「クラス!!! チェンジッ!!!」


 ズアッと威圧が爆発的に膨れ上がって、烈風が所狭しと謁見の間で吹き荒れる。

 徐々に地響きが大きくなっていって騎士たちを戦慄させる。

 ナッセの衣服が神聖なデザインに切り替わって、神々しい格好になっていく。


救世主(セイヴァー)ナッセ!!!」


 まさかのクラスチェンジに、誰もがひん剥く。

 しかも巨大な威圧が席巻してて、最強格と言われた皇帝ライティアスに迫るほどだ。

 これには三人の聖騎士(パラディン)も口を開けて驚愕するしかない。


「なんとッ!!? まさかクラスチェンジできたのかッ!!?」

「そんな……!!! 更にまだ力をッ……!!?」

「こんなん不条理すぎんだろ!!!」


 しかもヤマミも笑む。


「まだ納得できないようでしたら、私もご披露させていただきましょう。クラスチェンジ!!」


 なんとヤマミから凄まじい威圧が膨れ上がって、震撼を広げていって、烈風が巻き起こる。

 周囲の誰もが絶句する最中、ヤマミは漆黒の仰々しい魔道士の風貌に変化。


支配者(クエスター)ヤマミ!!!」


 未だ震撼が続き、旋風が吹き荒れ続ける最中、二人は威風堂々と並ぶ。

 いずれも戦闘力一〇〇万クラスで、国家転覆を引き起こしかねない危機感を周囲に叩きつける。

 三人の聖騎士(パラディン)も汗いっぱいで、今更クラスチェンジしたって絶対に敵わないのは火を見るより明らかと察している。


「そッ、それでも……!!!」

「命に懸けて、ここは聖騎士(パラディン)の意地でッ!!!」

「やるしかないだろ!!! 例え覆せねぇ不条理でもよォ!!!」


 アーサー、グランハルト、アレフは死を覚悟してまで抵抗しようとするが、ヴェールの人影が「もうよい!」と鎮めた。

 ようやくヴェールから抜け出して姿を現した。

 高貴な黒い全身鎧に白いマント。細身で長身。金髪が逆立っていて凛々しい顔立ち。思ったより若い。


「え……? 皇帝ライティアスじゃねぇ!!?」

「影武者!!?」


 ナッセとヤマミは見開いて驚くしかない。

 原作のライティアスを知っているから、目の前の男が全くの別人だと分かる。


「恥ずかしながら見破られましたか……。さすがは勇者の正当な血筋を受け継ぐ王太子ですね」

「どういう事だぞ??」

「話を聞かせてもらえる?」


「遅ればせながら、確かに僕は皇帝陛下にございません。王位継承もしてません。未だ第二王子クロリアにございます。ワケあって影武者としてヴェールの奥で代わりを勤めていたに過ぎません」


 第二王子が頭を垂れ、三人の聖騎士(パラディン)も観念して戦意を収めた。

 騎士たちも剣の柄から手を離し、目をつむって黙祷するように大人しくする。


「……実はずっと前から皇帝陛下が行方不明になられているのです」


 意を決したクロリア王子は自白するのだった。




 上空は青空一面で下の雲海が見渡せる成層圏で、壮大な巨樹が広々と葉っぱを広げているドンブリ型の浮遊島が漂っていた。

 その周辺で大小さまざまな郡島が浮いている。

 大きさとしては直径三キロほどに及ぶ。


 その巨樹の薄暗い内部でドクンドクンと脈動する。上下の根っこに包まれた琥珀のような丸い宝石には大柄な男が閉じ込められていた。

 固まったように微動だにしない。


《ふう……手こずらせよるわ。この男……》


 薄らと巨大な女神マザヴァスが見下ろしていた。


《ギルガイス帝国を治める皇帝ライティアス……。この私をしっつこく嗅ぎつけてきたから、逆に永久牢獄に閉じ込め、洗脳を施したのだ》


 本当は嗅ぎつけて皇帝自ら単騎でやってきたのが幸いだった。

 金色の破壊神に対抗する為の強力な手駒が欲しかった。また世界を破壊されては、フィーリア天地の二の舞だからだ。

 とはいえ、これまで手駒として動かせなかったのは本当に苦しかった。


《この男……侮れんわ……。今日まで洗脳に抗ってきて成功できるか怪しかったものだ。先走ってナッセを抹消しにいったのは不味かったか……》


 ライティアスが洗脳できぬのなら、先にナッセさえ殺せば創作世界をパクれると踏んでのことだ。

 それも創造主ルールで弾かれて失敗した。

 仕方なく延々と洗脳処置を施し続けたら、今日になって成功したのだ。

 女神マザヴァスとしては安堵したい。


《もはやこれでライティアスは私のもの……。そして金色の破壊神の世界崩壊にも対抗できる最強の切り札よ。フフフ……ハッハッハ、ハァーッハッハッハ!!!》


 嬉しくてたまらず大笑いしていく女神マザヴァスだった。

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