100話「再臨する騎士王ナセロン!!! そして終幕……!!」
暗黒魔竜クセアムスはうろたえていた。
かつて五〇年前に嫌というほど思い知らされた騎士王フウレツの執念深き戦い。
ギルガイス帝国を守る為に信じられない底力を捻り出して、死ぬまで戦い続けてきた恐るべき男。
「あの聖騎士が騎士王だとッ!!? バカな……こんな事が……!!?」
自信に満ちた騎士王ナセロンが威風堂々としていた。
「ルシアさん。こいつを持っててくれ」
「うむ。承知した」
ルシアは空で浮いているナセロンまで来ると、ボロボロのオーヴェを受け取って引き下がる。
ナセロンはキッとクセアムスの方へ鋭く見据えた。
「じ……冗談ではないわッ……!!! くっ……!! 黒壊玉ッ!!!!」
焦りを帯びたクセアムスは両手を左右に広げて無数の漆黒玉を散らばせてから、一斉に殺到させる。
しかしナセロンの周囲に無数の六角形シールドが現れて、漆黒玉は全て遮られて誘爆。
そして無数の六角形シールドを全て光の剣へ収束させた。
「喰らえっ!!! 結界剣ッ!!!!」
剣を突き出して、クセアムスへ凄まじいエネルギー奔流を放射した。
「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
クセアムスはそれに呑まれ、凄まじい衝撃波を伴って大爆発が空に広がっていった。
煙に巻かれながら地上へ落下していって、地表で土砂を高々と巻き上げた。
しかしボンッと煙幕から抜け出しクセアムスは唸る。
「ぬうううう~!!!! き、きさまあぁあ!!! この七つの魔王に勝てるとでも思っているのかあああッ!!!」
「うん。勝てる。勝てるさ……。かつての騎士王の力と想いを背負って戦うんだから!!」
「ぐっ……くぞおぉお!!!!」
やけっぱちになったクセアムスは漆黒の破壊玉を両拳にまとって、ナセロンへ飛びかかる。
ナセロンも光の剣による剣戟を繰り出す。
ズガガガッガッガガガガッガッガガガガガガズガガッガッガガガ!!!!
両者ともに譲らぬ激しい攻防の応酬を繰り広げ、激突の度に衝撃波が幾重も空へ響き渡っていく。
七つの魔王としての意地で負けぬとクセアムスが苛烈に攻め立てる。
それでも騎士王を背負ったナセロンとしては負けられない。カッと眼光を煌めかす。
「うおおおおおーッ!!!! ルミナス・Ⅻトラジェクトリ────ッ!!!!」
なんとナセロンは気合いを発して六芒星を描くかのような剣戟を放つ。クセアムスはまともに六撃喰らい、白目をひん剥いて「ガハアッ!!!」と吐血。
息も絶え絶えによろめくクセアムスだが、それでもキッと睨みを利かせる。
「おのれ……ッ!! ギルガイス帝国ッ!!! 騎士王ッ!!! ナセロンッ!!!」
ナセロンは三芒星型の光の盾を剣に吸収させ、オーラを纏って高速突進。
空を駆け抜けるかのようにゴオオオーッと尾を引きながらクセアムスへと渾身の突きを繰り出す。
「これで終わりだああああッ!!! 結界剣!!! ルミナス・トッパーッ!!!!」
「こ、こんなところで終わるなど……ッ!!!」
暗黒魔竜クセアムスは腹に喰らって、空に広がるほど衝撃波が大規模に爆ぜた。
「ろ……騎士王おぉぉぉぉ……ッ!!!!」
恨みづらみと呟くも虚しく、粉々と空へ溶け消えていった。
そしてナセロンの身からもわもわと騎士王フウレツが離脱。憑依する事で変わっていた容姿は聖騎士へと戻った。
《感謝する……。これでもう心残りはない》
「うん。ありがとう」
《頼もしいものだ。ギルガイスの血筋を引く子孫よ……。きっといずれ大物になるであろうな》
満足げにフウレツは空へ昇っていくとともに薄れていった。成仏したようだ。
ナセロンは快く笑って「じゃあねー」と手を振った。
それを見届けたナッセとヤマミは安堵に笑んだ。
かなーりギリギリだったが、原作通りになって安心した。
「かっなりギリギリだったじゃないのー!!」
リョーコは安心しつつもヒヤヒヤだった。
「しかし……」
ナッセは神妙な顔をする。ヤマミも頷く。
ルシアに見守られ、ナセロンに抱えられた血塗れのオーヴェ。掠れた目で虫の息だった。
「そう……か……。やったんだ……な…………」
ナセロンは頷き、オーヴェは安堵した笑みを見せた。
するとカカコたちがザッとやってきた。
「オーヴェ……!!?」
「そんな……!!! もう命の火が……!!!」
「その様子じゃ回復魔法も効かないな」
「うむ……。あの大きな漆黒玉を必死に受け止めてた代償は軽くなかったか」
悲しそうな顔でカカコとレイミンがオーヴェのそばに屈む。
ロンナもリューシも近くに寄って僅かな悲しげな顔を見せていく。本来なら四人ともオーヴェのことが大好きになる設定なのだ。
今になって涙が出そうになっている。
「レ……レイミン……父を済まなかった…………。あの世で……謝ってくる…………」
「そんな不謹慎な事言わないでよ!! あんたはこれからも生きて償っていかなきゃ許さないんだからっ!!!」
「そうだ!!! あたしだって許さない!!! だから死んでも死ぬなーっ!!!」
カカコもレイミンも辛くて涙が溢れてくる。
「へへ……すまねぇ…………」
四人のヒロインに看取られながら、徐々に意識が薄れていく。
だが、それでも守りきれたと誇らしい気持ちを抱きながら逝けることに感無量していた。
そして最期に無双ハーレムらしく、最高の美女に囲まれてご満悦だ。
ガクッ……!
「「「「オ────ヴェ────ッ!!!!!!」」」」
四人のヒロインは溜め込んだ想いを吐き出すように泣き叫んだ。
ナセロンとルシアも黙祷する。
満足した笑顔で永遠に眠るオーヴェ。まさに燃え尽きたって感じだ。
その後、ギルガイス帝国の騎士や聖騎士たちが黒竜人を残らず片付けていった。
ちなみにヴィードたちにも共同で働いてもらったぞ。
……そして一週間が経った。
ギルガイス帝国の前でカカコ、レイミン、ロンナ、リュウシは和んだ笑顔でナセロンとルシアに向き合っていた。
「あたしたちはこの帝国でやっていく事にしたよ」
「私も天涯孤独の身ですし、カカコたちと一緒に冒険者になるわ」
「ま、そんなこんなで世話する事になった」
「うむ。あっしも四人でなら上手くやっていけるだろう」
ヒュウウ……煙幕が流れながら、カカコ、レイミン、ロンナ、リュウシは帝国へ入っていった。
それを見送るナセロンとルシア。
「行くか?」
「うん」
ナセロンとルシアは顔を見合わせて、彼女らとは反対方向へ歩き出した。
いざ、新しい冒険の旅へ……。
そんな二人を祝福するように空の太陽が眩しく照らしたのだった。
ヴィードの魔城にて……。
「……またな! じゃ!」
ナッセは気楽に片手を挙げて、ヤマミとリョーコを連れてフッと消えた。
「「「「ま、待ってくれええええええええ~~~~ッ!!!!」」」」
ヴィードたちは涙目で、掴み取ろうと手を差し出すが空を切った。
シシカイがカッと腹の魔眼を開くが、しっかり監視をガードされているのか行方が掴めなかった。
妖精メミィに「頑張るのよ!!! 教祖さまを探してっ!!! このままじゃ無職だしっ!!!」と炊きつけている。
キョウラ、ジャキ、キルアは嘆いていた。
「うおおおお!!! ナッセさまに弟子入りしたかったのだが……!!!」
「僕もです!!! 冒険者登録もしてないので完全に無職です!!」
「お……オデも……!!! 働いたこと……ない…………!!!」
神官ゲマルは「やれやれ」と首を振って、爽やかな笑みをヴィードたちに見せた。
「さて、就活だな!!!」
次で最終章へ突入!! もうすぐ完結だぞー! お楽しみに!




