カラメラ&ラフィス世界線「第二次大破局回避」
「魔道機文明アル・メナス」、高度に発達した魔道機文明は永劫に栄華が約束されたと謳われていた。しかし、発達した文明は、いずれ来る文明の終焉をも予見していた。今の文明が破壊されることに留まらず、人類の滅亡までが何人もの賢者たち、当時にして完成形とされた、魔術師魔道技師によって告げられ、もはや確実なものであるとされた。一度目の耐えることは叶うだろうが、二度目にて終末を迎えることは明らかであった。しかし、どんなに高度に発達した文明であろうと、あるいは高度に発達しているが故に、この終わりを回避する手段がないことがないことについて明確であった。少なくとも当時では。「今の我々に、未来を約束することはできず、おろか自らの身で奪いかねん。で、あるならば、未来の守り人、希望の紡ぎ手の為に用意しよう。最期の奇跡。糸を、織機を、時間を、場所を、我々に託されてくれ。」そうして迎えた「大破局」ののち、1700年間続いた「魔道機文明アル・メナス」の灯は消えた。
現代、賢者たちの予言の通り人類は滅びず、火種は300年の時を経て再び大火に返り咲かんとしていた。同時に迫りつつある二度目の「大破局」にこの文明は何の対抗策もなく、滅ぼうとしていた。終末の時、奇跡はただゆっくりと起動し、絶望し、理解した。文明が蹂躙される姿を傍目に、自らの遅すぎる起床に、救えた命に、一度目の結果に、ただ理解をした。自らの役割は明確だった、再び300年、二度目の世界、次に託す。そうして人類は滅亡した。
これは二度目、託された記憶がそう告げ、自分の役目を理解する。守り人を探し希望を紡がせる。その為の活動を始めた。
リセット、リセット、リセット、リセット。繰り返すこと幾千年。ついに、未来の守り人は誕生を迎えた。カラメラ・ラーキンズ。彼女は魔剣を携え、約束された終わりの糸を切り落とすことに成功する。蛮族を退け、これにて終幕。長く続いた物語は終わりを迎えるはずだった。
しかし、未来は紡がれることはなかった。一つ、「第二次大破局」を凌いだ後に再び復興するだけの体力は人類にはなかった。二つ、カラメラ・ラーキンズは魔剣の力に耐えうる肉体を持ちえず、魔剣共々消滅した。三つ、「第三次大破局」により人類は滅亡した。
リセット、リセット、リセット、リセット。なんの問題もない。ただ単に人類が復興可能な程度の影響で済むまで被害を落とし。カラメラ・ラーキンズをその程度の破壊力を魔剣が出せるまで耐えうる肉体にする。そして永遠と「大破局」を対処し続ける。リセット、リセット、リセット、リセット。何度繰り返しただろうか。何度繰り返したのだろうか。自分ではない自分の記憶の衝動に突き動かされるがまま、薄々結果の見えている未来の為に思考を続ける。これはエゴだ。人類を存続されるという大義名分を掲げた。自分の存在意義の否定ができない自分のエゴだ。人類は滅亡する運命なのではないか。過去の賢者たちが託したものはとんだゴミだと吐き捨てる。どれだけの人の運命を歪めたか。どれほどの運命を人に命じたか。自らも運命の傀儡であり、どれだけ生き汚いのか。終わらせるべきじゃないのか。この思考すら今の自分のものでなく、過去の自分のものであり、己自身を歪ませる。それでも、だけども、希望はあった、確かに、漠然としていて、毅然としていて、殺伐としていて、どうしようもない今の状況ですら、自分の終わりを選ばない。これは未来からの希望の種、逆説的未来観測、世界は確かに救われる。今の自分ではない。次の自分も、まあ無理だろう。しかし、永劫、今後登場しえない最高の賢者たちが成し遂げた永遠は、不可能の否定を容易く行う。可能なのだ。なにも諦める必要はない。光はこれより見出され、希望はこれより紡がれる。400年前の予言された運命は動き始めた。
ついに、最高傑作、我々の積み重ね、希望の紡ぎ手、ラフィスが誕生を迎える。幾つかの日月の経過。そして、カラメラ・ラーキンズを乗せた始まりの船がレーゼルドーン大陸に着港した。
カラメラ・ラーキンズは順調に力を付けていった。キマイラを討伐し、裏切られ、村を「第二次大破局」の最前線の位置まで移動させてからは更に戦いは熾烈を極めた。予定調和の聖堂にて過去を繋ぎ、祝祭にて魔剣を授けた。中央大陸に移動し、名声と責務をその手にし、一度目の「第二次大破局」を迎えた。怠惰なドレイクは、第二の剣イグニスを振るい破滅を起こした。カラメラでは扱いきれない魔剣に膝を折る。400年前の魔剣、今の時代の人間の魂では耐えうるはずもない。これは仕方のないことだ。だから、これから彼女らには300年間の長い旅路が待っている。しかし安心してほしい、たった300年間の短い期間だ。次の目覚めは世界を救うとき。存分に力を振るって欲しい。
ここからはラフィスに任せてしまう。我々の知識は我々が引き取ろう。ラフィスが知るのは結果だけで良い。何故なら彼女は我々であっても、前提一人の人間であるからだ。これ以上の責務は必要ない。
300年前の世界にて、カラメラは、初代ラーキンズの体に入った。ラーキンズがドレイクから回収した魔剣は、400年前の賢者が作りドレイクにした魔剣であり、それを聖堂にて封印を施した。その際に、魔剣の空間にてラーキンズの魂は封印され現代にて封印が解かれた際に魂がカラメラに移動した。これにより魔剣の空間は300年前と繋がり、ラーキンズと入れ替わりになる形で、カラメラはラーキンズの肉体に、300年前の肉体に入り魂を定着させた。これにて未来の守り人は完成に至った。あとは、再び現代まで戻るのみ。同時に、我々が300年前に用意したラフィスの肉体に入ったラフィスの魂が、カラメラを未来に送り出す。
そして再び迎えた一度目の祝祭。カラメラの魂が300年間の封印より帰還を果たした。
ここに未来の守り人、希望の紡ぎ手は揃い現れた。
「第二次大破局」は、カラメラが存分に魔剣を振るったことで然したる被害を出すこともなく終わりを迎かえ、人類存続の為にラフィスは世界を一新した。これからも人類が存続する運命に。この運命に我々が付いていくことは叶わない。運命は変わった。我々は滅びの運命、最期の奇跡。魔道機文明アル・メナスは今をもって本当の終わりを迎えたのだ。これ以降に、奇跡の出張る余地はない。
君らの運命は、本当の冒険は、たった今始まったのだから。