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ドラゴンのいる異世界を、じいちゃんと  作者: 秋乃晃
試される知識

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第20話

 孫として、これ以上の狼藉(ろうぜき)を認めるわけにはいかない。


 おでんが実際にはどういった経緯でおでんって名前になったのかは知らなくてもだな。この、じいちゃん含めて、クライデ大陸の住民たちのピュアで純粋な瞳と、ちょっと尊敬混じりのヒソヒソ話が耳に入ってきちゃうと、ね。身体がむずかゆくって仕方ないぜ。


「やめてくれよばあちゃん!」


 おれはできるかぎり声を張り上げた。ばあちゃんをばあちゃんと呼べるのはこの場ではおれだけだ。じいちゃんもばあちゃんをばあちゃんって呼ぶことはあるけど『早苗』って呼ぶほうが多い。ばあちゃんって呼ぶのはおれに忖度してのことだ。


「ほわあああああああああ!」


 寸銅鍋がドスンと落ちて、ばあちゃんの黒い靴を踏みつけた。


「あぎゃあっ!」

「あっ……ごめん……」

「うぅっ、うぅ……神様仏様バース様……痛いの痛いの道とん堀に飛んでいけ……」


 ばあちゃんじゃねえか!


 神様、はいるかもしれないけど。仏様はクライデ大陸にいないだろう。それに、クライデ大陸の一般人がランディ・バース様を知っているわけがない。だって、阪神タイガースの助っ人外国人だよ? クライデ大陸に野球はないんだろ?


「早苗なのか……?」


 じいちゃんも立ち上がってこっちに寄ってきた。


 確かにさ、あの頃のばあちゃんよりずっと若いよ? なんならおれと同い年ぐらいなまである。半泣きで足をさすっている姿は、まさしく『村一番の美女』のそのご尊顔。


 クライデ大陸には若返りの魔法があるじゃんか。パイモンさんがいい例だよ。ばあちゃんだって、その若返りの魔法で若返っていたとしたら。


「あっあっ、チ、チガイマース! あたし、そのサナエと違う!」


 だいぶ無理があるよ、ばあちゃん。じいちゃんは「本人が違うと言っておるのなら、違うのじゃろ」と信じちゃっている。じいちゃん……。


「わかったよじいちゃん。みんなを待たせているし、あとで追及することにして、メシにしようぜ」


 特に灯さんからのブーイングがおれの背中にビシバシと伝わってくる。灯さんにしてみりゃ、ごちそうを前にしておあずけを食らってるんだもん。そりゃあ怒るよ。


「もうっ!」

「母上……」

「バエルもおなかすいたでしょう? まったく。くだらないケンカで、みんなの大事なランチタイムを奪わないでほしいわ」


 そうだそうだ、と同調する声がある。


「すいませんっした」


 こういう時は悪くなくても謝っておくに限る。灯さんは腕を組んで「まあいいわ」とそっぽを向いてしまった。好感度が下がる音がする。


「ステラ、クレア。サナエがやってきたのは、今から二年前、だったよな?」


 黙ってことの次第を眺めていたパイモンさんが、ひたいに人差し指を当てながら喋り始めた。


「そうですわ」

「その通りですわ」


 二年前。じいちゃんが『時空転移装置』を作動させて、失敗した年。すなわち、ばあちゃんが行方不明になった年。


「サナエは住み込みのメイドとなり、これまでクライデ大陸になかった料理を次々と作り、話題となった、と」

「そう! お城にも『料理上手なメイドがいる』というウワサが舞い込んできてね!」


 灯さんが話に割り込んできた。灯さんもおれと同じ現代日本人なんだっけか。


「なんじゃパイモン。サナエを知っておったのか」

「アザゼルの言う『早苗』の外見情報と、私の知っている『サナエ』とが結びつかなくてな」


 パイモンさんがそれ言うの?


「……それじゃあ、やっぱり、あのサナエさんって、ばあちゃんなんじゃない? ほら、パイモンさんもお使いの若返りの魔法でさ?」


 料理の腕前といい、あの慌てふためきようといい。状況証拠は揃っている。というか、教会に入った段階でじいちゃんを見て「げげっ!」って言うの、おかしいじゃん。じいちゃんを知っていないとできない反応だよ。こんなにかっこいいじいちゃんを見て、バケモノを見たようなこと言っちゃうのは、おかしいもん。


「サナエ、若返りの魔法を気にしてたわ」

「いちばんに使えるようになっていたわ」


 ほらほら、証言が出てくる出てくる。一緒に暮らしていたステラさんとクレアさんが言うなら、そうじゃん。


「しかし、本人が違うと言うとるからの……」


 じいちゃんはそこがひっかかるのね。


 おれとじいちゃんは、ばあちゃんを捜しにクライデ大陸に来たけども、ほぼ確定ばあちゃん疑惑の『サナエ』さんはばあちゃんであることを否定している。


 つまりは、ばあちゃんは、じいちゃんと会いたくなかったってことなのかな?


 それは、じいちゃんが『時空転移装置』を『時空転移装置(改)』正式名称『異世貝』にアップデートするまでの二年間の努力を、無駄にするみたいで、やだな。

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