表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/54

第16話

 パイモンさんに案内されるがままに、おれたちがたどり着いたのは教会だった。クライデ大陸にも現代と同じようにキリスト教があるのかーと思いきや、上を見上げると本来は十字架がありそうな位置に金のシャチホコならぬ金のドラゴンの像がある。


「あれってじいちゃんがモデル?」


 姿が似ているのでとぼけて言ってみたけど、パイモンさんから「違う。あれは初代のミカド、クシャスラ様だ」とガチめのトーンで怒られちゃった。


 おれがバズったドラゴンの動画のドラゴンにも似てる気がするなあ。


「え、でも、初代のミカドって、ああいうの作ったらキレて処刑したんでしょ?」


 習ったばかりの知識を披露する。衝撃的だったから、すっと出てきた。だって、明らかに矛盾してるじゃんよ。


「よく知っておるなキー坊」

「へへへ」


 じいちゃんのすごさはおれがいちばん知っているから、そんなじいちゃんから褒められたら照れちゃうぜ。


「初代が亡くなると、クライデ大陸に再びの混乱の時代が訪れた。統治者がおらんようになって、あちこちで諍いが発生していたらしい。そこで、その男の長男が二代目のミカドとして即位した」


 世襲制なんだ。


 現ミカドのアスタロトの長男なミライが〝修練の繭〟を破壊してじいちゃんを死なせたくせにネルザっていう地方に飛ばされるだけで済んでるあたりから察するに、クライデ大陸における最高権力者のミカドの力っておれの考えている以上に強いのかも。


 となると、やっぱりじいちゃんも、なりたいのかな。ミカド。


「城での暮らしを嫌って大陸を歩き回る、吟遊詩人のような男だったと聞く。その二代目が、自らの父親である初代のミカドを神格化して崇めるようになったんじゃよ」

「本人は自分の姿を残すのを嫌がったってのに、息子は勝手なことするなあ」


 思ったままの感想をつぶやいたら、じいちゃんは「そうじゃのう」と笑ってくれた。パイモンさんは眉間に皺を寄せている。


「クライデ大陸の各都市に教会が置かれて、一週間に一度の礼拝が義務付けられた。テレスの教会は、ミカドの住まいの近くじゃからな。……ワシがいない間に、建て替えでもしたか?」

「うむ。現ミカドが即位なさった時に、盛大に公費を費やしてな」

「あやつらしいのう」


 おれは敬虔なキリスト教徒じゃないし、近所に教会があったわけでもないからあくまでイメージだけど、教会っていうとなんだか、()()っていうの? みすぼらしくても、心が豊かならいいじゃんみたいな、そういう価値観で運営しているような。あくまでイメージだけど。


 目の前のテレス教会は豪華絢爛って感じだ。なんかまぶしいしさ。ギンギラギンってほどじゃないが、壁の塗料から屋根の素材から、手間暇と工賃がかかってそうな匂いがする。


「ここに、じいちゃんのお姉さんたちがいらっしゃるんですよね?」


 一族でテレスのギルドを運営していたじいちゃんの本当の生家。じいちゃんが十二歳の春に〝修練の繭〟に入ってから、じいちゃんのお父さんが呪いで亡くなって、ギルドの運営は他の奴らに奪われて、じいちゃんの実家は売り払われた。生き残っているじいちゃんの二人のお姉さんがここにいる。どんな人たちだろう。


姉様(ねえさま)たち、ワシを覚えておるじゃろうか」


 じいちゃんがいちばん会いたいだろうに、じいちゃんがこの三人でいちばん二の足を踏んでいる。十二歳のじいちゃんとは、ぜんっぜん見た目は違うと思う。


 だって、じいちゃんの友だちだったっていうパイモンさんですら『死人を騙る痴れ者』って言ってたもんな。


 とはいえ家族だぜ。家族なら、見た目が歳食ってても気付くに違いない。おれはそう思う。


「行こうぜじいちゃん! ここでうだうだしてても何も変わんないぜ。おれもじいちゃんの姉ちゃんに挨拶しないといけねえしさ!」


 こういう時にじいちゃんの背中を押すのが孫の役目ってもんだぜ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ