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ドラゴンのいる異世界を、じいちゃんと  作者: 秋乃晃
この一打にかけろ!
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第9話

 テレスのギルド本部に戻ってきた。ギルド本部は天井高めで広々とはいえ、城よりは狭いし物も人も多い。じいちゃんには外で待っていてもらうことにする。


 ドラゴン形態は街中でも目立ちまくりだった。王族の証、っていうのは本当らしくて、老若男女問わず道を開けてくれる。昼時で賑わっている市場でもそうだったので、ついているだけのおれが申し訳なくなるぐらいだった。


 しかしまあ、現地民ではないおれには『ギルドでの作法』はわからない。じいちゃんみたいにフランクな感じに話しかけちゃっていいもんか。他の人たちを見てみよう。――なんだか柄の悪そうなスキンヘッドなにいちゃんとか、大剣を背負った剣士さまとかは壁に貼られた紙を眺めている。


 目を凝らして見てみると、それぞれの紙に依頼人と依頼内容と報酬金が書かれていた。掲示板ってやつかな。ここから依頼を選んでいく的な。


 受付嬢に用がある人はいないっぽい。覚悟を決めるしかないか。現代日本での社会人経験を生かして、失礼のないように、さっきも会話した受付嬢へ「あのー」と切り出した。


「あら。先ほどのおにいさん。お帰りなさい」


 お帰りなさいだって。本職のメイドさんとは城の中ですれ違ったけど、ギルドの受付嬢がメイド服を着て()()()()()セリフを言ってくれるの、いいな……。


 いいな……。じゃないぜ。


「今度はどのようなご用件で?」


 ギルド本部に訪れる人たちはだいたい掲示板のほうに用があるっぽいし、受付嬢は『ちょうどいい話し相手が来た』みたいな顔をしている。


 ちょっと待てよ。ストレートに「服をください」って頼んだらセクハラじゃんか。言い方を考えよう。


 おれが配信機材の隙間にでも着替えを入れようとしてたら、じいちゃんから「いらんよ」って言われたから、おれもこの服しかない。こっちに到着する前のじいちゃんは実家をあてにしてたんだろうし仕方ないよ。実家があるならすぐに服は調達できるもん。じいちゃんは責められない。ミライが悪い。


 ドラゴン形態からじいちゃんの姿に戻ったら全裸になっちゃうっていうじいちゃんは大至急服がほしいだろうけど、おれだってシャワーを浴びたり着替えたりしたい。っていうか、受付嬢に服を所望していいもんなのかな。買えよ、って話じゃんか。いや買う金もないや。一応、現金いくらかは持ってきてるけど、この世界に日本円が通用するのかわからん。カードはもっとわからない。


 じいちゃんも先にクライデ大陸のこと話してくれていれば……いや、そうか、お家取り潰しの憂き目にあうからダメなんだったっけ……。


「人を捜しておるんじゃが」


 おれがうーんとうなっていたら、じいちゃんが現れた。人間の姿に戻ってる!


「あっれ、服どうしたのそれ」


 しかもなんか、こっちに着てから街中でよく見かけるタイプの、こういうのは貫頭衣っていうんだっけか。ポンチョみたいなのを着ていた。ドラゴン形態で買ったわけじゃないだろうし。


「私が購入したものだ」


 じいちゃんの隣に立つ美人さん――パイモンさんがじいちゃんの代わりに答えてくれた。白っぽい軍服みたいなのを着ていて、胸元には竜のエンブレムがついている。ベルトにはレイピアが。


「なんでこんなところに、という顔をしておるな」

「まさにその通りです」

「此奴が本当に、私の旧友、アザゼルであるかを確かめたい。アザゼルではなく、アザゼルを騙る者ならば容赦なく――」


 レイピアに手を伸ばすパイモンさん。ミカドには言うの迷って言わなかったけど、この人になら言ってもいい気がする。じいちゃんはどう思う?


「ミカドからワシのお目付け役を命ぜられたのじゃな」


 じいちゃんがおれにもわかりやすいように通訳してくれた。


「なんでじいちゃんを監視しないといけないのさ。まるでじいちゃんが悪いやつみたいじゃんかよ」

「王位継承の権利を持つ者が戻ってきたんじゃから、まあ、めざわりじゃろうて」


 別にじいちゃんはミカドになる気ないのにな。……ないよね?


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