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悲劇の王はあの日託した  作者: 祇土雷明
2/2

病室にて

第2話目です。俺うぽつ

「逃げるんです!お坊ちゃま!」



聞いたことのない老爺の声が聞こえる...



「お前がこのゼイオンを、いやこの世界を...」



今度はまた違う声がする。途中で途切れてしまったその言葉は誰の物なんだ?


俺は、この2つの声に返答しようと思えばできたが、直感のまま、あえてしなかった。



「いい加減起きてよ!ねえってば!」



遠くからどこか聞き覚えのある声が俺を呼んでいる。だんだんそれは泣き声に変わりながら、反響を続けてどんどん俺に近づいてくるようだ。


俺はその声に応えないといけないような気がしたんだ。


すると、目には光が差し込んだ。起きると病院のベッドにいた。


「よかった、優希!」


俺の目の前には泣きながら笑う、紫月がいたんだ。


「1週間も寝てたんだよ」


紫月は涙を拭いながらも安堵で微笑みをこぼす。


え。1週間も?


何もかもよくわからんが、とりま上半身を起こした。


すると、俺はあの化け物に襲われた時の息苦しさと痛みを思い出し、途端に嘔吐してしまった。


それを見た紫月は慌てて重ねてあったビニール袋を取って広げながら



「大丈夫!? ねえ、あの日、私と別れた後何があったの!?答えてよ!?」


と半狂乱で俺に聞いてきた。


俺自身も何も分からない。答えられないんだ。


半ば取り乱している紫月とは対照的に、何故か俺は冷静だった。あんな非科学的なことが起こったなんて言えねえし、信じてくれねえや。


それより俺は自分の体の状態が気になった。何で俺は生きてるんだろう。


「あのさ、俺今、体どうなってるんだ?」


「非常に説明し難い状態と言えます」


白衣を纏った医者が部屋に入って来ながらそう言った。首に掛けた名札には岡村と書いてある。歳は50前後くらいだろうか。


「肺が完全に破壊され機能停止していましたが、なぜか心臓は止まっていなかったんです。私どもは輸血をしたり肺を人工物に代えたりで大変でしたよ。」


―俺の肺はいまや偽物だというのか。


「後で警察が来ます。しっかりと思い出せる範囲のことを正直に話すように。後、もう2〜3日はまだここで安静にする必要がありそうだ。勉強についていくのは大変だろうが、そこの女の子にでも教えてもらいなさい。」


真面目な言葉の後に続いた最後の冗談交じりの言葉に俺は今日初めて少し冷静さを欠いた。顔は少し赤くなったかもしれない。


「はい...」


岡村という医者は退室し、しばらく俺と紫月は何も話すことができないまま沈黙が続いた。



やがて紫月が切り出した。


「優希が倒れたって聞いて、私、すごく怖かったんだよ。優希がいなくなってしまったらどうしようって。何も喉を通らなかったし、授業の内容も全く入ってこなかった。」


「...」


「私がこんなに心配してるのにさ、今も優希は何も話してくれないの。過去のことだってそう!そんなに私が信頼できないの?」


俺は罪悪感で心が満たされるのを感じた。


また沈黙が続いてしまう...

その時だった。


「赤名優希さんで間違いないでしょうかー。」


警官2人が病室に入ってきた。


「ではここから事情聴取となりますので、よければ退室をお願いできませんか。」


警官の指示に従い、紫月はなにやら不満げな、悲しげな、そんな顔をしながら退室して行った。


俺は事情聴取に臨むこととなった。

次回も良ければよろしくお願いいたします。

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