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第9話 沙苗の絶縁宣言(2)

 沙苗さんが、父親である誠二郎に対しての2度目となる絶縁宣言から暫くして、誠二郎が口を開く。


「儂に2度目の絶縁宣言とは……それだけ本気で沙苗が西園寺家と絶縁したいということか」


「そうです。 それだけ私は……西園寺家に居たくないということです!!」


「………………」


 実の娘からハッキリとした拒絶の言葉を聞いた誠二郎は無言になる。

 あれだけハッキリと拒絶されれば無言になるのも仕方が無いよなと思いつつも、僕は口を開く。


「沙苗さんの意思が変わらないのは、もう分かっていただけたかと思います。

 それでもまだ、沙苗さんを政略の道具として連れ戻そうとしますか?道具としてでしか……沙苗さんを見ないつもりですか?

 いい加減に認めて下さい!沙苗さんは政略の道具ではなく、1人の人間だという事を!感情を持つ人間である事を!!」


「俊吾さん………」


 沙苗さんの言葉に被せるような形で、誠二郎が何かを呟く。


「………黙れ……」


「……はい?」


 沙苗の父親が何か言ったようだが聞こえなかったので、もう一度聞く。


「聞こえなかったので、もう一度お願いします」


「黙れと言ったんだ!!」


 言われたことが理解出来なかった僕は、問い掛ける。


「………は?黙れとは?」


 この問い掛けに対し、誠二郎は荒らげた声で言う。


「沙苗が感情を持った人間だと?巫山戯たことを言うなよ若造が!!西園寺家にとって、沙苗など唯の政略の道具だ!!儂の立場を守る為の道具に過ぎない!!儂が1番なのだ!!西園寺財閥グループが財閥グループの中の頂点なのだ!!だから、沙苗を渡せ小僧ーーー!!」


 そう言ったと思った瞬間には、僕にではなく沙苗さんに飛び掛る。

 だが、僕は咄嗟に沙苗さんと誠二郎の間に立ち、沙苗さんに飛び掛ってきた誠二郎を一本背負いで投げ飛ばす……沙苗さんを守る為に。


「ぐふっ……」ガシャーーンッ!!


 テーブルの上に投げ飛ばしたせいか、ティーカップが宙を舞った後に床に落ちて割れる。

 それを冷めた目で見ながら、僕は誠二郎に言い放つ。


「女性に手を挙げようとするとは……男の風上にもおけない男ですね貴方は。

 沙苗に手を出そうとするものは、僕が絶対に許さない!!」


 僕の言葉に同意するかのように、詩織と沙苗さんも冷めた目で誠二郎を見ながら言う。


「女性に手を上げようとして、貴方は男として恥ずかしくはないですか!!

 ましてや実の娘である沙苗さんに飛びかかろうとするとは……最低ですね」


「……貴方はもう、私の父親なんかではありません。

 唯の他人です……」


 沙苗さんが言い終えた所で、僕は誠二郎に言う。


「権力を使うのは好きじゃないが、沙苗さんに手を出すと言うのなら……政略の道具に利用すると言うのなら……沙苗さんを守る為ならばっ!!」


 そこまで言ってから、僕は拳を握りしめながら宣言する。

 テーブルの上に倒れつつも僕の方を見ている西園寺財閥グループ会長へと。


「瀬戸崎財閥グループ会長として貴方を───西園寺財閥グループを潰すことをここに宣言するっ!!!西園寺財閥グループ会長、首を洗って待っておくがいい!!!」


 そう宣言した僕をチラ見してから、詩織も誠二郎に宣言する。


「では私共、桜坂財閥グループも瀬戸崎財閥グループに協力する形で、西園寺財閥グループを潰させて頂きますね」


 僕と詩織の……"西園寺財閥グループを潰す"と言う宣言に驚いた誠二郎は、ガバッと起き上がってから動揺した声で言う。


「な、な、なっ!?潰すというのか!!儂を!!西園寺財閥グループをか!?たかが政略の道具の為だけにか!!」


「ああ、徹底的に潰す!!沙苗さんは───沙苗は感情を持った1人の女の子だからだ!!実の娘を政略の道具としてでしか見ていない貴様には一生分からないだろうがな!!

 沙苗の感情も一生の人生も───全ては沙苗自身の物だ!!

 沙苗自身以外の誰にも、感情や生き方を決める権利などありはしないんだよ!!

 だから僕は、合法的に西園寺財閥グループを徹底的に潰させていただく!!!」


 そこまで言った僕の胸に抱きついてきた沙苗が言う。


「こんな私の為に……ありがとうございますっ!!……俊吾さん、詩織さんっ!!」


 そして、沙苗は誠二郎の目を見ながら言う。


「最後に一言だけ。 お父様、16年間育てていただきありがとうございました。

 これだけが、お父様に対して唯一……感謝していることです。

 だから私は、瀬戸崎 俊吾さんと桜坂 詩織さんという素晴らしい方々に巡り会うことが出来たのです。

 だからもう、私は貴方とは2度と顔も合わせたくもありません。

 会うのはこれが最後です。 そしてこれを言うのも、これが最後です……さようなら、お父様」


 そう締め括った沙苗は、僕の胸に顔を埋める。

 誠二郎の顔を2度と見たくないと言わんばかりに。

 その沙苗の背中を、詩織は優しい手つきで労わるように撫でる。



 沙苗と詩織を見ていた僕は、後ろに控えていた相良の方に顔だけ向けてから指示を出す。


「相良、西園寺財閥会長にお帰りいただいて。

 顔を見てるだけでも不愉快だから」


「畏まりました、瀬戸崎会長。

 ……というわけですので、西園寺財閥会長はこの屋敷からお引取りを」


 相良がそう言った時にパチンっと指を鳴らした瞬間に、黒服達が入ってきて西園寺財閥会長を立たせると、応接室の外へと丁重?に連れ出して行く。


「お、おいっ!!離せ!!離さんか無礼者!!小僧!!儂にこんな事して只で済むと思うなよ!!って、儂を無理やり引っ張って来んじゃない!!聞いてるのかおいっ!!まだ儂の話しはおわ……っ………て…………」


 そう喚いていた西園寺財閥会長の声が遠くなっていく。



 それから暫くして、相良が応接室に戻ってくる。


「ただいま戻りました。ご命令通りに西園寺財閥会長には()()にお帰りいただきました」


「ご苦労様。 ふぅ、ようやく静かになったね」


「左様でございますね。 しかし、西園寺財閥会長には失望致しました、私は」


「俊吾君、私も相良さんと同じく西園寺財閥会長には失望してしまいました」


「それは僕もだよ。 財閥会長としても失格だし、父親としても失格。

 よくもそんな環境で沙苗は耐えてこれたなと思ったよ」


「本当に俊吾君の言った通り、沙苗さんは今までよく耐えてきたと思ったわ……」


「俊吾様と詩織様の言う通りでございますな。

 ですが、それも今日までの事。

 明日からは、自由な日常を沙苗嬢は送ることが出来る。

 これも俊吾様のおかげでございますね」


「それは違うよ、相良。 あくまでも僕は手を差し伸べたに過ぎない。

 この先どのように過ごすかは、全て沙苗自身が決める事。

 僕らは唯、それを見守るだけだよ」


「……そうですな。 全ては沙苗嬢次第、ですな。

 ……しかしまぁ沙苗嬢は俊吾様の膝枕で穏やかに眠っておられますなぁ。

 余程、ゆっくりと休むことが出来ない環境だったのでしょうな」


「ふふっ、沙苗さんったら。 俊吾君の膝で寝れて幸せそうね

 こんな安心した顔は、西園寺家では一切見れてないでしょうね」


「だと思うよ。 そうじゃなきゃ、こんな穏やかな顔をしながら寝れないと思うよ。

 ……まぁ、可愛い寝顔が見れて、僕は幸せ者だと思うけどね。」


「俊吾様と詩織様の仰る通りでございますなぁ。

 沙苗嬢は本当に可愛い寝顔で寝てらっしゃる」


 そう───西園寺財閥会長が応接室から連れ出された直後に沙苗は僕の膝に頭を乗せて寝入ってしまっていた。

 よっぽど酷い環境だったのだろうなと察せられる。

 そんな沙苗を起こさないよう注意しながら、沙苗に膝枕をしつつも、詩織や"誠二郎を見送って?"から戻ってきた相良と話をしてたというわけである。

 勿論、沙苗を起こしてしまわないように小声でね!



 それから暫くの間、応接室に戻ってきたメイド長の遥さんに沙苗を客室に運んでもらうまで、俊吾は沙苗に膝枕をし続けてながら詩織と相良と小声で話し続けていたのだった。

 自身に襲いかかってくる睡魔と闘いながら───







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