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第6話 西園寺財閥グループ会長襲来、沙苗が家出した理由(1)

 詩織が何かを話し始めようとしたタイミングででのドアをノックする音。

 その音に反応した相良が口を開く。


「入ってきなさい」


『はい、失礼致します』


「今は来客中ですよ? 一体、何事ですか?」


「来客中に申し訳ございません、俊吾様、相良様、メイド長、西園寺様、桜坂様。

 それがその……西園寺財閥グループ会長の西園寺 誠二郎(せいじろう)様がお越しになられまして。

 どうすれば良いかの判断を仰ぎに来ました」


「えっ!?お父様が、ですか!?

 何故、この場所がお分かりに……」


 突然の父の来訪に驚きと狼狽えを隠しきれてない沙苗さんを横目に見ながら、僕は伝えに来たメイドに告げる。


「伝えに来てくれてありがとう。

 ……この部屋に案内してきてくれ」


「畏まりました。 それでは直ぐにお連れ致します。

 では、失礼致します」


「なんで……お父様が……」


 西園寺財閥グループ会長襲来の知らせを聞いた僕は、沙苗さんの隣に移動した。

 そして小刻みに震えている沙苗さんの背中を撫でながら、僕は言う。

 沙苗さんを少しでも安心させてあげたい一心で。


「沙苗さん……大丈夫だから僕に全て任せて欲しい」


 俺の言葉に続けて、詩織も沙苗さんの背中を撫でながら言う。


「何か良くないことが起こりそうな予感がしますが、私も沙苗さんを守ることにしますね」


 俺と詩織の言葉に対して、何故か詩織ではなく僕の胸に顔を埋めながら言う。


「俊吾さん、詩織さん……。

 ありがとう……ございます」


 そう言った沙苗さんの声は……今にも泣きそうな声だった。



 それから暫くして……不愉快そうな表情をしていたメイドに案内される形で、沙苗の父親───(すなわ)ち、西園寺財閥グループの現会長が応接室内に入ってきた。

 そんでもって、入ってきて早々に彼は口を開く。


「このような時間に尋ねてきてすまない。

 私の一人娘の沙苗が、此方の屋敷に居ることを突き止めてやって来た次第だ。連れ帰る為にな。

 それでは帰るぞ、沙苗!!」


 その言葉を聞いて、更に震える沙苗を庇うようにしながら、僕は口を開く。


「いきなり尋ねてきて、そのものの言い方はないんじゃないでしょうか?

 いささか常識に欠けるのでは?

 ましてや、こんな非常識な時間…にね」


 俺の言葉に続くように詩織も言う。


「……本当に非常識な方ですね。

 人様の家に来て早々のその発言……貴方が沙苗さんの父親であるかを疑ってしまいますね」



 そう──沙苗の父親が尋ねてきた時間は、21時過ぎだ。常識的に考えても、尋ねてくるには遅い時間だ。

 そんな僕と詩織の発言が気に食わなかったのか、沙苗の父親が声を荒らげる。


「なんだ貴様らは? 沙苗が此処に居るから連れ戻しに来たんだ。

 黙って沙苗を此方に渡せ!! さもなくば、貴様らを誘拐犯として警察に突き出すぞ?」


 その発言に対し、僕はすかさず反論を口にする。


「誘拐犯……ですか。 その前に、貴方は誰ですか?

 名乗りもせずに沙苗を引き渡せと言われましてもねぇ。名乗りもしない相手に、はいそうですかと沙苗を渡す訳にはいかないですね」


 僕の発言に同意するかのように、詩織も言う。


「彼の言葉に全面的に同意致します。

 それと、名乗りもしない貴方に……沙苗さんは絶対に渡しません!!」


 僕と詩織の発言に気に食わないといった態度を取りつつも、誠二郎が言う。


「貴様らっ……!!まぁいい、名乗ってやる。

 儂は、貴様らの真ん中に座っている沙苗の父親の、西園寺 誠二郎だ!

 西園寺財閥グループの会長をしている。

 儂が名乗ったのだから貴様らも名乗れ!」


 その言葉に、呆れた声を発しながら僕は言った。


「子供相手になんですか?そのものの言い方は……まるで常識がなっていないですね。

 ……それは一先ず置いておくとして、そちらが名乗った以上は此方も名乗らないわけにはいかないので名乗りますね。

 この瀬戸崎家の現当主にして、瀬戸崎財閥グループの現会長をしている、瀬戸崎 俊吾と申します。

 また、沙苗さんと同じ、私立城西学園高校の1年生でクラスメイトでもあります」


 僕がそう名乗った後に、詩織も名乗る。


「本っ当に非常識な方ですね、貴方という人は!!

 ……まぁ、俊吾君が名乗ったので私も名乗りますね。

 俊吾君と沙苗さんと同じ高校で同じクラスメイトでもあり、桜坂財閥グループ現会長の娘の、桜坂 詩織と申します」


「瀬戸崎財閥……グループだと!?しかも、その会長だとー!?

 更には桜坂財閥グループ現会長の娘だとっ!?」


 僕と詩織の正体を知った沙苗さんの父親である誠二郎は、驚きの声をあげる。

 だが、信じられなかったのか、僕の真後ろに控えてる執事の相良に確認をとる為に声を掛ける。


「瀬戸崎財閥グループの会長が、こんなガキの筈がない!!

 おい、そこの執事!!このガキ共が言ったことは本当の話しか?」


「…俊吾様の言ったことに嘘偽りは御座いませんよ?全て真実で御座います」


「そんな…バカな!?瀬戸崎財閥グループといえば、知らぬ者がいないと言われる程の、日本最大規模の財閥グループ。そこの会長宅に儂は……。

 それに、桜坂財閥グループのご令嬢に対しても儂は……」


 僕や詩織が言ったことに嘘偽りがないことを確認した沙苗さんの父親は、膝から崩れ落ちる。

 そんな父親に僕は言う。


「……先程までの貴方のものの言い様は、聞いていて余りにも不愉快極まりないものでした。

 人様の家にやってきて早々のあの発言。 とてもではないが、財閥のトップの発言としては有るまじきことです。

 普段から、そのような言動の発言をしてらっしゃるのでしょうか?」


「財閥の会長として、誰に対してもこの態度をとってきた。

 複数ある財閥の中でも、儂が1番偉いと思って、この態度を今までとってきた。

 無論、取り引き相手の瀬戸崎財閥グループや桜坂財閥グループに対してもだった。

 それを変えるつもりは……今後もない!」


「「「…………………」」」


 その発言を聞いた僕と詩織は……いや、この場にいる全員が唖然とした。

 沙苗さんなんて、まるでゴミを見るかのように自分の父親である筈の誠二郎を冷めた目で見ているくらいだ。

 ……僕の右腕にベッタリと抱きつきながらだが。

 詩織はいつの間にか僕の左側に移動しており、僕の左腕に抱きついていた……本当にいつの間に移動を?

 そんな両手に花状態となっていながらも、僕は再び口を開く。


「……貴方の考えは良く分かりました。

 貴方は───人として終わってることがね!」


「貴様! その発言はどういうことだ!!」


「ん?そのままの意味ですが? 僕の正体が、瀬戸崎財閥グループの会長──貴方と同じ立場であることを知った上でのその態度。

 貴方は人の上に立つ資格がない!!って、言ってるんですよ!!

 自分が1番偉い?自分が頂点に立ってるから、相手を見下してもいい?

 巫山戯たことを言ってんじゃねぇよ!! 貴方は──瀬戸崎財閥グループと桜坂財閥グループを敵に回すつもりですか?」


「若造が……儂に対して舐めた態度をとりおってからに!!

 敵に回す? 貴様らを敵に回した所で、儂にも財閥にとっても痛くも痒くもないわい!!」


「………分かりました。 それと確認したいことがありますが、いいですか?」


「……ふん、何を聞きたいんだ?」


「沙苗さんを連れ戻す理由をお聞きしたい。

 答えてくれますか?」


「沙苗を連れ戻す理由か? そんなの、政略結婚の道具にする為に決まってるだろう?

 瀬戸崎財閥グループのトップを名乗ってるのに、そんなこともわからんのか貴様は」


「えっ………そんな………お父……様…………」


「沙苗さん!?」


「っ!? しっかりして下さい、沙苗さん!!」


 実の父親に言われた言葉が余程ショックだったのか、沙苗さんは僕の胸に顔を埋めながら意識を失ってしまう。

 そんな沙苗さんを心配しながら声を掛けていた詩織は、誠二郎をチラ見した後で小声で言った。


「……このっ下衆が」


 その詩織の低い声を、僕だけがハッキリと聞いた。

 そして、そんな詩織の低い声を聞いてしまった僕は心の中で思うのだった。

 詩織が完全にぶちギレちまったなぁ……と───







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