第5話 自身の素性を学年一の美少女令嬢に明かす(4)
「それはね──僕が、日本最大規模の瀬戸崎財閥グループの現会長だからだよ。」
「は?……はあぁぁぁぁぁぁーーー!?」
僕の素性を知った沙苗さんの叫びが屋敷内に木霊する。
それから沙苗さんは、物凄い剣幕でテーブルの上に身を乗り出しながら、僕に聞いてくる。
「俊吾さん!!瀬戸崎財閥グループの現会長って、どういうことなのですか!?
俊吾さんは私と同じ、高校1年生ですよね!?
それに、俊吾さんの父と母は何処にいるのですか!?」
「さ、沙苗さん!? 順を追って説明するから落ち着いて!
その、怖いから…」
「あ、ごめんなさい。 私ったら、あまりの衝撃発言に我を忘れてしまいましたわ……」
それから暫くして、沙苗さんが紅茶を一口のんで落ち着いた頃に、再び僕は話し始める。
「沙苗さんが落ち着いてきたから、僕が会長になった経緯とかの説明をしたいんだけど、いいかな?」
「先程は本当にごめんなさい!もう落ち着いたので大丈夫、です……」
「それじゃ話し始めるよ。 この話には、この場に居ない父さんと母さんの話にも繋がるんだけどさ。
僕の両親はね、僕が中学を卒業する日の朝……交通事故で亡くなったんだよね。
ニュースにもなったから、交通事故の話くらいは知ってると思う」
「うそ………嫌なことを思い出させてしまって、ごめんなさい!!
ですが、そのニュース自体は見たことがありますがその事故で亡くなったのが俊吾さんのご両親だとは思ってもみませんでした……」
「沙苗さん、心の整理はついてるから気にしないで。 だろうね。
世間一般には、僕の存在は伏せられてたからね。
話の続きだけど、両親が亡くなった後、財閥の引き継ぎやらなんやらで休む暇もなかった。
本来であれば、財閥の会長職には僕の親族が引き継ぐ予定だったんだけど、その人が財閥の金を横領してることが発覚したんだよね……それも、就任式当日にね」
そう言って僕は紅茶を一口飲み、呼吸を整えてから再び話し始める。
「就任式当日に不正が発覚したもんだから、就任式の内容が次の会長は誰がやるという話し合いの場と化してね。
その話し合いの結果、満場一致で僕が父の跡を継ぐ形で、瀬戸崎財閥グループの会長に就任したというわけだよ。
必要な知識だとか、瀬戸崎財閥グループで何をやってるかとかなのは全て学んでいたし、僕の頭の中にも叩き込まれてたから、問題なく今でも会長としての職務をこなせてるんだけどね。
ただ、僕が瀬戸崎財閥グループの会長に就任したということは、まだ世間一般には公表してないんだよね。
まぁ、こんな感じかな」
僕の話を静かに聞いていた沙苗さんは、紅茶を一口飲んでから口を開く。
「俊吾さんの説明で、大体のことは分かりました。
なんて言っていいのかは分かりませんが、その……会長職、頑張って下さい!」
「沙苗さん、ありがとう。 それでさ、今更感はあると思うんだけど、執事とメイド長の遥さんのことを沙苗さんに紹介するよ。
2人共、自己紹介を沙苗にお願い」
「畏まりました、俊吾様。西園寺様、この瀬戸崎財閥グループ会長である俊吾様専属執事の相良 宗正と申します。また、過去に瀬戸崎ホールディングス株式会社の会長をしておりました。以後、お見知り置きくださいませ」
「相良さん、こちらこそお見知り置き下さい」
「次は私ですかね! 瀬戸崎家メイド長をしております、望月 遥と申します。
歳は、今年で21歳になります」
「……遥さん? 自分の年齢まで紹介する必要はないんじゃないのかな?って、僕は思うのだけど?」
「別に言っても良いではないですか、俊吾様! ということで西園寺様。
私のことも以後、お見知り置きくださいませ!!」
「遥さん、こちらこそお見知り置き下さい」
無事に2人の自己紹介が終わった所で、扉をノックする音が聞こえる。
その音に反応した相良が応対する。
「来客中ですが、まぁ入ってきなさい」
『はい、失礼致します』
そう言ってから入ってきたメイドが、僕らに一礼した後に口を開く。
「俊吾様、桜坂財閥ご令嬢の桜坂 詩織様が来ておりますが、こちらにお通ししても宜しいでしょうか?」
そう、僕にお伺いを立ててきたメイドに僕は言う。
「こんな時間に詩織が?」
「はい……それもお1人ででございます」
「1人で尋ねてくるとは……一体、何の用なんだろう。
とりあえず分かった。 こちらにお通ししてくれ」
「畏まりました。 直ぐにお連れ致します」
俺の返答を聞いたメイドが一礼してから、詩織を案内する為に部屋から退出していく。
それから程なくして再びドアをノックしてから入ってきたメイドの後方から、詩織が入ってくる。
そして、詩織を案内したメイドが一礼してから退出したのを見届けた詩織が口を開く。
「夜分遅くにごめんね、俊吾君」
「こんな時間に来るとは珍しいな。
何かあったのか?」
「俊吾君の家に表情が優れない沙苗さんが入っていったのを、たまたま部屋の窓から見えたから、気になってかな?」
「そういう事か。 まぁ、家が隣だから見えたって感じか。
一先ずは詩織も座ってくれ。
立ったまま話すべきことではないだろうからな」
俺の返答を聞いた詩織は、沙苗さんに声を掛けてから隣に腰掛ける。
「こんばんは、沙苗さん。 隣に座ってもいいかな?」
「こんばんは、詩織さん。 はい、どうぞ」
詩織が沙苗さんの隣に腰掛けたのと同じタイミングで、遥さんが紅茶の入ったティーカップを詩織の前のテーブルの上に置く。
「ありがとう、遥さん」
そう遥さんにお礼を言った詩織は、紅茶を一口飲んでから口を開こうとした時、再びドアをノックする音が聞こえてくるのだった───
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