第3話 自身の素性を学年一の美少女令嬢に明かす(2)
何とか白蘭駅行きの電車内に滑り込んだ俺と沙苗さんは、息も絶え絶えの状態だった。
それから間もなくして電車が発車した頃、少し呼吸が安定しだした沙苗さんが話しかけてくる。
「ギリギリ発車時刻に間に合いましたね、俊吾さん」
「だな。しかし、座るところがないな」
「だね。この時間帯でも混雑してるんですね……。
初めて乗ったので、正直言って戸惑ってます……」
「帰宅ラッシュだから、仕方がないのかもな」
「そう、ですね」
周りを見回してみても、帰宅ラッシュの時間帯ということもあり、俺と沙苗さんは席に座ることも出来ずに、入口付近で立っていた。沙苗さんに気付かれないように、俺はさり気なく沙苗さんを守るように立つ。
そんな俺に、沙苗さんは更に話しかけてくる。
「ねぇ、俊吾さん?」
「ん、どうした?」
「私を守るように立ってくれて、ありがとうございます♪
そういう男子って、女子からすると評価ポイントが高かったりするんですよ? 知ってましたか?」
そう言って、首を傾げながら俺を見上げてくる沙苗さんに、俺はドキッとした。
「っ!?いや、知らなかったよ。 さり気なさを装ってたのに気付かれてたとは思わなかったよ」
「俊吾さんって、分かりやすいですからね!
それに俊吾さんって、クラスの女子や同じ学年の女子だけでなく……他学年の女子にも人気なんですよ?
これも知ってましたか?」
「えっ!?そうなのか!? 全然知らなかった……」
俺が女子達に人気だって知らなかったな。それと、沙苗さんがさり気なく俺の制服の袖を掴んでいたことに、俺の心は……穏やかではいられなくなっていく。
だがこれは、絶対に沙苗さんにはきづかれたくないなぁ。
そんなことを俺が思ってるのを知ってか知らずか、沙苗さんは更に口を開く。
「……もしかして俊吾さん、私に袖を掴まれてドキドキしてます?」
そう言って上目遣いに俺を見上げて言ってくる沙苗さんに、俺は内心で慌てながらも言葉を返す。
「い、いや!? そ、そ、そんなことあるわけないだろ!?」
慌てたように言い訳を言いながら顔を逸らせた俺に、沙苗さんは言う。
「あれれ? 俊吾さんったら照れてるんですか?
意外と可愛いところあるんですね!」
「て、照れてなんてないよ!?ってか、可愛いってなんだよ!
あ、さてはさっきの仕返しのつもりなのか!」
「ふふっ♪さあ、どうでしょうね♪」
そう言って笑って誤魔化してる沙苗さんだけど、そんな彼女の頬はほんのりと赤く染まっていた。
そんな沙苗さんが、真面目な口調で話し始める。
「俊吾さんって、いつもクラスメイトの皆が困ってる時は必ず手を差し伸べていらっしゃいますよね、男女問わずに。
だから、クラスの男子からは頼りにされてますし、女子からも頼りにされてますよね。
そんな俊吾さんを狙う女子が結構いるんですよ?城西学園にはです!
俊吾さんは凄いモテモテですね!」
沙苗からその話を聞いた俺は、照れ臭くなりつつも言葉を返す。
「それこそ、俺は知らなかったよ。 改めて言われると照れ臭いな!
だけどそもそもの話なんだけどさ、困ってる人に手を差し伸べるのは人として当たり前のことじゃないのか?
義務感だとか正義感だとかなんてのは、俺にとってはどうでもいいんだ。
ただ、周りに助けを求める人が居たら助けたい・困ってる人が居たら、その人の助けになりたい……そう思ってるだけだよ、俺はね。
だからなのかな、沙苗さんが家出して泊めて欲しいって俺に言ってきた時に思ったんだよね……沙苗さんを放っておくことなんて俺には出来ないなってさ!だから、沙苗さんを俺の家に泊めることにしたんだよね」
そうやって俺が話し終えた時、沙苗さんが急に俺に抱き着いてきて、俺の胸に顔を埋めながら口を開く──それも泣きながらである。
「…えぐ……ぐす……ありがとう…ござい……ます、しゅんごさぁんーー!!」
そんな沙苗さんに対して俺は、なんで沙苗さんが泣いてるのかが分からずに困惑しつつも、優しく沙苗さんを抱きしめる。
その時、周りにいた乗客から拍手が沸き起こる。
『兄ちゃん、よく言った!お前さんは男の中の男だなぁ!!』
『若いのにしっかりした考えを持った兄ちゃんだなぁ!!俺、感動しちまったよ!!』
『若いのに立派な男だね、アンタは!!』
『今時の若者も、まだまだ捨てたもんじゃないな!!ほんとに高校生かって疑っちまったよ、俺は!!』
『素敵!!あの子がいなかったらアタックしたのになぁ!』
などと言われた。最後のは聞かなかったことにしよう、うん。
そんな感じで周りにいた乗客達に言われて照れていた時、
『間もなく、次の停車駅である白蘭駅に停車致します。お降りのお客様は車内にお忘れ物ないように確認の上、慌てて転ばないようにお気を付けてお降り下さい!繰り返し連絡致します。間もなく───』
という車内アナウンスが流れたので、駅のホームに入って停車した電車の扉が開いた途端に、俺と沙苗さんは、降りる他の乗客に混じるように慌てて電車から降りるのだった───乗客達からの暖かい言葉に対しての恥ずかしさから逃げるように。
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