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第21話 総理官邸と皇家への訪問・4

 総理官邸を出て皇居に向かっていた僕らなのだが……車内では桃花によるマシンガン暴走愚痴話が繰り広げられていた。

 よっぽど阿久比の言動と行動にご立腹の様子。


「ほんとに何だったんですかっ!あの男は!?

 弟が警察に捕まったのも、罪を犯したからでしょうに!

 それなのに……捕まったのは俊吾様が嵌めたせいだと逆恨みする始末。

 逆恨みの末に亡き者にしようとするし……。


 大体はクズ弟が詩織様を襲い、執拗に付け回したのが、そもそもの捕まった原因な筈なのに、それがどうして俊吾様がでっち上げた事になるのですか!

 あの男の頭の思考回路はどうなってるんですかね。


 自分に都合が良いように解釈し行動する男。

 自分の欲望に忠実に行動する男。

 そして何よりも、女性を物扱いする男。

 私は嫌いです、これらに該当する男性は。

 世の中の男性の全てが同じ……じゃないとは私も思ってはいますが、先程の件の後では信頼も信用もすることは出来ません。


 俊吾様のような男性なら信用も出来ますし、信用することも出来るのですが……。

 はぁ~……私、益々男性不信に陥りそうです。

 ですが私があの男を一番許せないし許すつもりがないことがあります。

 それは私の────を、未遂とは言え亡き者にしようとしたことです!!

 それ以外でも……というよりもあの男の全てが許せないですが。

 連行されて行った今でも、私のあの男に対する憤りが消えることは一生無いです。



 っと、長々と愚痴ってしまい申し訳ありませんでした」



 そう、最後に言って僕らに頭を下げる桃花。

 瀬戸崎家に就職する際、桃花は自らが男性不信であることを打ち明けていたのを思い出す。

 過去に何があったのかについて知りたくない、と言えば嘘にはなるが、桃花自身や姉である遥さんが話さない為、僕から聞くことは決してしないつもりだ。

 話したくなれば、桃花や遥さんから話してくれると信じているから……。

 それぐらいの信頼関係は築けているとは思っているが、慢心だけはしちゃダメだと、今一度自身を戒める。


 だけどね桃花……最後ら辺に小さな声で呟いた言葉はしっかりと僕に聞こえていたから、正直に言って恥ずかしかったよ。

 僕としては嬉しかったんだけど、それ以上に今は、ね……。




 桃花が愚痴った以降の車内では誰も言葉を発しないまま、気付けば僕らが乗ったリムジンは皇居の正面玄関前へと到着していた。

 微妙な空気を漂わせたまま降りた僕らに、自ら出迎えてくれた女性が声を掛けてくる。

 というよりも、僕に向かって突撃してくる。


「っ!?うわっぷっ!?

 ぐ、ぐるじぃっ!!」


「俊吾~っ!会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったわぁ~!!

 久しぶりの私の可愛い俊吾ちゃんの匂いだわぁ~!!」


「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」


 この女性の突然の行動に、僕らを出迎えてくれた職員達や警備員や詩織達一同は揃って唖然としていた。

 人間、誰しもが突拍子もない行動をする人が1人でもいれば唖然とするのも無理はないのである。

 が、いい加減に苦しさの臨界点に到達しそうになっていた僕は、女性を引き剥がしながら口を開く。


「い、いい加減に離れて下さい、天皇陛下!!

 ……いや、()()()()()!!」


 僕の発言を聞いた詩織と沙苗の、


「「て、天皇陛下だったのーーーーーーー!?(でしたのーーーーーーーー!?)」」


 という驚きの声が皇居の敷地内に木霊するのだった。

 まぁ、2人が驚くのも無理はないよね……。

 僕に思いっきり力強く抱き着くこの女性が、まさか天皇陛下だとは誰も思わないよね?

 僕が2人の立場だったとしても驚くだろうしね。

 ……本当に驚いて欲しかったのは別の事だったんだけど、2人にとっては天皇陛下という発言の方がインパクトが強過ぎたみたいだし。


 2人に驚きの声を上げさせた張本人である未来叔母上は、渋々ながら僕を離しながら口を開く。


「んも~っ!! 久しぶりの再開だというのに……。

 もう少しだけ孫成分を補充しておきたかったのに~っ!!


 まぁでも、そちらのお嬢さん方を驚かせることには成功したわね♪♪」


「叔母上……お戯れが過ぎますよ?

 それよりも2人に自己紹介をして欲しいんですが?

 悪戯ではなく、じ・こ・しょ・う・か・い・を、ね」


 そう促すと、叔母上が詩織と沙苗の方に向き直って言う。


「2人の反応、とても良かったわよ?

 俊吾が来るって連絡をもらってから公務そっちのけで考えた甲斐があったわ~♪


 さて、と。 詩織さんに沙苗さん、初めまして。

 皇居へようこそお越しくださいました。

 第66代天皇の徳田川 未来(とくだがわ みらい)と申します。

 私は、俊吾の母親である瀬戸崎 美菜(みな)の妹で、俊吾からみれば叔母になります。

 2人共、よろしくお願いしますね。


 ……俊吾、私の自己紹介はこれで問題なかった?」


「さ、ささ桜坂 詩織と申します!!

 こちらこそよろしくお願いいたします!!

 (まさかいきなり天皇陛下に対面することになるとは思わなかったから、緊張感が半端ない)」


「西園寺 沙苗と申します!!

 こ、こここここちらこそよろしくお願いします!!

 (緊張感と圧が凄すぎて、心臓が今にも破裂してしまいそうです……)」



 叔母上の自己紹介に対し、2人はガチガチに緊張した声で頭を下げながら挨拶を返していた。

 それよりも、最後になって何で僕に確認してくるんだと溜息を吐きながら答える。


「問題はないと思いますが叔母上……最後に僕に確認をしてきたのは減点ですね。

 だから毎回毎回、母さんに怒られていたんですよ?

 それをまさか、お忘れになられたわけではないですよね?」


 そう僕が切り出すと、叔母上は明後日の方向を向きながら口を開く。


「そ、それは、ほら、ね?

 け、決して忘れてはいな…………俊吾ちゃん、私が悪かったからその圧を止めて欲しいです……」


 言い訳をしようとしていた叔母上は、無言で圧を放つ僕に気付いた瞬間、涙目になりながら項垂れる。


「はぁ…………まあ、この位で威圧するのは止めておきますね」


「ありがとう俊吾ちゃんっ!!

 でも、本気でその圧は止めてね?

 お姉様よりも俊吾ちゃんの方が強いから……」


 そう言って許した瞬間に花が咲いたような笑顔で僕に抱き着く叔母上なのだが、母親よりも恐ろしいと言われた僕は苦笑いする。


「分かりましたから叔母上、直ぐに抱き着くのは止めて欲しいのですが?」


「やだっ!!」


「はぁ………この抱き着き癖はもう治りそうもないかなぁ。

 ………………それと2人も叔母上に対抗して抱き着かなくてもいいから、離れて欲しいんだけど?」


「「天皇陛下が離れたら離れます!!」」


 そうです、叔母上に嫉妬した詩織と沙苗も僕に抱き着いている状況なんだよね、はぁ……。


「叔母上、このような場所にずっと立ちっぱなしはどうかと思いますので、移動しませんか?」


「それもそうね。 だったら私の私室に行きましょ?

 そこでならゆっくりと腰を落ち着けて話が出来るはずだからね♪

 そうと決まれば向かいましょ?

 3人とも遅れずに私についてきてよ?

 皇居内は広いから、私を見失ったら迷子になっちゃうからね」


 そう言って僕から離れた叔母上がスタスタと皇居内に入っていくので、僕らは苦笑しながら後に続く。




 皇居内は相変わらず広く、廊下を歩く僕らに対してすれ違う度にスーツをビシッと着こなした職員やメイド服を着たメイド達が頭を下げてくる。

 それに片手を上げて答えつつも廊下をズンズン進む叔母上。

 そして一つの扉の前で歩みを止めた叔母上が僕らに振り返って言う。


「此処が私の私室よ。さ、遠慮なく入って頂戴♪」


 そう口にした後に扉を開け、私室内に僕らを入るように促す。

 私室内は広いのだが、設置されているテーブル等のインテリアのどれもが安い家具店で買える物ばかりだった。

 この光景に僕や遥さん、桃花にとっては何度も見ていたから驚くことはないのだが、初めて見た詩織と沙苗は驚きいた表情をしていた。

 詩織と沙苗の表情を見た叔母上は、僕らにソファーに座るよう促し、全員が座ったのを確認してから2人に言う。


「その表情を見るに、詩織さんと沙苗さんには意外に感じたみたいね。

 初めて私の私室に入った誰もがその驚いた表情をするのよ?

 皇族……それも天皇の私室らしく高級なインテリアが置かれている筈だという先入観からね」


「は、はい、とても驚いています。

 無礼を承知で言いますが、質素過ぎだと思ってしまいました」


「わ、私も同じことを思ってしまいました……」


「詩織さんの発言で無礼にはしないから安心してね?

 それから沙苗さんも同様にね。


 確かに2人が言ったり思ったりしている通り、設置されているテーブル等のインテリア類は値段も最安だし見た目も質素よ?

 だけど私は思うのよね……皇族だからといって贅沢する必要があるのか?ってね。

 実際にこの私室内にあるインテリア類は最大でも4万円位よ?

 俊吾ちゃんの屋敷内のインテリア類も同じ位だったわよね?」


「確かにその通りなのですが……ベッドだけは最大で10万円位の物を使用しています。

 まぁ、それもサイズのせいで高いだけなんですけどね」


「深くは聞かないでおくわ。


 話を戻すけど、質素倹約が1番だと私は思っているの。

 本来であれば、公務で着る服にもお金を掛けたくはないのよ。

 現に私がいま着ているこの桜色のセーターや薄緑色のスカートだって、ドルティアで売られている服なのよ?

 だけど他国が関わってくるような公務やパーティー用のだけは、見栄の為にはどうしてもお金を掛けなければならない……。

 皇族は国民から集めた税金で衣食住を賄って暮らしている。


 そんな生活が嫌になったからこそ、お姉様は皇家や政府の制止を振り切って皇居を飛び出したんだろうなって私は思っているの。

 生前にお姉様は妹である私によく言っていたわ……『質素倹約をモットーとして自由に働きながら生活し、少しでも世の中に貢献したい』『そして好きな人と結ばれて幸せに暮らしたい』ってね。

 だけどそのお姉様はあの日に起こった交通事故で帰らぬ人となってしまった……。

 私のことは心配しなくても大丈夫よ?

 お姉様の死は受け止めているし心の整理も済ませているから。

 だけど本音を言えば………お姉様には長生きして欲しかったって思っているわ。

 きっとお姉様も本当は────」



 そう最後に締め括った叔母上の瞳からは、一粒の涙が零れ落ちるのであった────








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