第18話 総理官邸と皇家への訪問・1
お爺様・兄貴・遥さんへの数時間にも及ぶ説教を終えた僕は、リビングの窓から外を見る。
既に朝日が昇ってきていたらしい。
なので僕は、このまま起きていることにした。
今から寝てしまったら、夜までは確実に起きないだろうと予想した為である。
それに、詩織と沙苗との約束を果たす為にも、総理官邸と皇家に向かい、婚約を承諾してもらう必要があるからだ。
でないと、正式な婚約者とは認められないからである。
だから今日の予定は、詩織と沙苗を総理官邸と皇家へ連れて行っての経緯説明と婚約を承諾してもらうこと。
そんな風に頭の中で予定を立てた所で、リビングに詩織と沙苗が入ってくる。
因みに僕に説教を受けた3人は既に、それぞれの職場へと出勤していきましたよ?僕と同じく寝ずにだけどね。
「詩織、沙苗、おはよう」
「おはよう俊ちゃん……って、あれから寝てないの!?
俊ちゃん、少し寝た方がいいよ?」
「おはようございます、俊吾……って、目の下に薄らと隈が出来てますよ!?
詩織さんの言う通り、少し寝た方がいいのでは?」
2人の心配に僕は嬉しくなった。
だけど、その2人に僕は言う。
「詩織、沙苗、心配してくれてありがとね。
だけどそうも言っていられないんだよね。
詩織と沙苗との約束を果たす為にも、今日は総理官邸と皇家へ行かなきゃならないからね。
でないと、僕とは婚約出来ないからね。
だから詩織と沙苗にも、僕と一緒に総理官邸と皇家に訪問して欲しいと思ってるんだけど……いいかな?」
そう言った僕に対し、詩織と沙苗が口を開く。
「うん、分かった。 俊ちゃんと一緒に行く。
一緒に行って、絶対に俊ちゃんの婚約者に相応しいと認めさせる!!
俊ちゃんと離れるって考えるだけでも嫌だから……」
「俊吾に頼まれなくとも行きますよ、絶対にです!!
そして私の事も必ず認めさせます……俊吾に相応しい婚約者であることを、です!!
俊吾とは1秒でも離れたくないですので……」
そう言った2人の目は真剣そのもので、覚悟すら伺えるものであった。
その2人の想いに答える為にも、絶対に婚約を認めさせなきゃならないなと思った。
それと同時に、承諾を得られなかったら皇太子を辞するという覚悟をもって臨もうとも思った。
僕らの覚悟が定まってから2時間後の午前9時過ぎ、僕らは瀬戸崎家のエントランスホールにいた。
何をしているかというと、皇家からの迎えを待っています。
僕が『今から向かいます!』という連絡を政府にした所、僕が皇太子だからという理由により、政府からではなく皇家から迎えがくる運びとなったからである。
流石に総理官邸と皇家に向かう、ということで僕らの格好も何時もとはガラッと様変わりしていた。
僕は3000万円程する黒色のスーツを、詩織が金糸の刺繍が施された桜色のドレスを、沙苗が金糸の刺繍が施された青色のドレスを着ていた。
詩織と沙苗が着ているドレスの値段は、両方共に4000万円程するという、正に皇族の婚約者に相応しいものとなっているのだが、膝上までの丈なのはどうなのかと僕は密かに思っていた。
風が強い日には着るべきではないドレスである。
詩織と沙苗が着ているそれぞれのドレスは、僕の母がまだ皇家で過ごしていた頃に着ていたものだったりする。
僕の母が……長いドレスやスカートを着るのが大嫌いな人だったからである。
それらの事情により、こうして僕らはエントランスホールで待つことになったのである。
僕と詩織と沙苗がいるこのエントランスホールには、屋敷に勤める全使用人が集合していた。
何でかというと、僕らを見送る為らしい。
その使用人達に囲まれる中、詩織と沙苗が僕に声を掛けてくる。
「ねぇ俊ちゃん、私のドレス姿を見てどう思った?」
「あ、それは私も聞いておきたいですね!
俊吾、私のドレス姿を見てどう思っていますか?」
「2人共、よく似合っているよ。
というよりも、いつにも増して可愛くて綺麗だよ」
2人からの容姿に関しての感想を求められた僕は、見惚れていたのを隠すようにしながら僕が思った素直な感想を2人に言った。
その2人はというと、僕の素直な言葉を聞いた瞬間に顔を真っ赤に染めていた。
そして更にそれを隠そうとしたのか、はたまた使用人達に見られたくなかったのか……僕の胸に顔を埋めながら同時に口にする。
僕が2人の反応を見るに、両方だろうと思うけどね。
「「……恥ずかしいっ!!」」
この2人の反応を、周りでニヤニヤしながら使用人達は見ていた。
特に詩織は僕以外に素顔を見せないから尚更かもしれない。
そんな僕らの所へ桃花が近付いてきて告げてくる……ニヤニヤ顔で。
「俊吾様、イチャイチャしてる所を邪魔をするのは気が引けるのですが、皇家からのお車が到着致しました。
ですので、直ぐにお乗りいただきたく思います」
「報告ありがとね、桃花。
そういうことで詩織、沙苗……行くよ。
あまり先方を待たせるわけにはいかないからね」
「……まだ恥ずかしいからこのままで歩く」
「……詩織さんと同じく、です」
「僕が非常に歩きにくいんだけど……仕方がないからこのまま歩くしかないか。
2人共、転ばないようしっかりと僕に捕まっててね?」
「「……はいっ!!」」
そのやり取り後に僕らは歩き出す。
それと合わせるように遥さんと桃花が両開きの玄関の扉を開ける。
僕らが出てきたことに気付いた黒服を着た男性運転手が、リムジンの後部座席側の扉を開ける。
乗るメンバー……というよりも一緒に行くメンバーは、当事者である僕と詩織と沙苗、それから護衛として遥さんと桃花の5名がこのリムジンに乗る。
今回は皇家付きの警護隊と警視庁の警護隊が僕らの警護を担当する為、瀬戸崎家付きの警護部隊は屋敷にて待機となる。
リムジンに辿り着いた僕らは、遥さんから順番に乗車していき、最後である僕が乗車しようとした所で、使用人達が一斉に声を揃えて言う。
「「「「「「「「「行ってらっしゃいませ!!」」」」」」」」」
「見送りご苦労!
留守中の屋敷の守りを頼んだ!!
では、行ってきます!」
そう、使用人達に言った僕が乗車したのを確認した運転手がドアを閉める。
そして僕らを乗せたリムジンは総理官邸へ向けて瀬戸崎家を後にするのだった。
俊吾達が瀬戸崎家を後にしたのと同時刻の総理官邸内のとある執務室内では、ある人物が落ち着きなく部屋の中をウロウロしていた。
「あの方はまだご到着なされないのか!
出発したとの知らせもないし……まさか襲われたのではあるまいなっ!?
もし、それでまだ到着してなかったとしたら……私の首だけでは済まぬぞ!?」
と、そんな心配をする私がいる執務室のドアをノックする音が響く。
「っ入れ!!」
私がそう言うと、職員が入室してきて私に頭を下げてから言う。
「失礼致します!
たった今、皇太子様一行を乗せた車両が瀬戸崎家を出たとの知らせがありました!
道が渋滞していなければ、30分後にはこの総理官邸へとご到着する見込みでございます!」
「っ!!分かった!
今一度、警備体制を確認するよう指示を出せ!
皇太子様一行が襲われる、なんてことは絶対にあってはならん!!
それと、不審人物が紛れ込んでいる可能性もあるから身分照合も合わせて実行しろ!!
万が一の事が起これば、私の首だけでは済まされないと肝に命じて事に当たれ!!
よいなっ!!!」
「は、はいっ!!!
では失礼致します!!!」
そう言ってから、知らせに来た職員は退出していった。
それを見届けた私は呟く。
「皇太子様、どうか何事も無くご無事にお着きになられることを祈ります」
そう願わずにはいられない私なのであった────
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