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第12話 詩織に迫る脅威(前編)

 遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございますm(*_ _)m

 また、更新が大幅に遅くなり申し訳ありませんでした。


 引き続きの不定期更新となりますが、今年1年もよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

 詩織の心に深い傷を負わせた男……城西学園高校2年の阿久比(あくい) (のぼる)

 その男が僕らの行く手を阻むかのように道の真ん中で仁王立ちしながら此方を見ていた……否、その視線は僕の背中に隠れる詩織しか見ていなかった。

 僕の左右にいる朱璃と沙苗は警戒しながら、阿久比を睨みつけている。

 無論、僕も朱璃達と同じように阿久比から視線を逸らさずに睨みつけるように見ていた。



 そんな僕らの警戒の眼差しを一身に浴びているであろう阿久比はというと、視線など気にもせずに口を開く。


「せっかく俺がこうして朝から迎えに来たというのに……俺の婚約者(フィアンセ)である筈の詩織()()()は何で何処の馬の骨とも分からない男の背中に隠れてるのかな?」


 阿久比が発したその言葉に反応した詩織は、僕の背中で震えながらも頭を必死に左右に振っていた。

 ……あの男が私の婚約者な訳が無い!!っと訴えるかのように。

 まぁ、詩織の父親があんなストーカー男を婚約者にする筈もないから、阿久比が言っている"詩織の婚約者は自分だ"というのは真っ赤な嘘なのである。

 そんな阿久比の目を見ながら僕は言う。


「……おはようございます阿久比先輩。

 こんな往来で仁王立ちしながら詩織を待っていたようですが、先輩は詩織に何度も告白し、その度に断られていましたよね?

 それだけでなく先輩は詩織をストーカーしたばかりか襲ったことにより、接近禁止令が出ていた筈ですが?

 それでも懲りずに詩織に付きまとい続けてるのですか?

 ましてや婚約者を自称するなど……正気の沙汰ではありませんね」


 これに対し阿久比は短気なのか、怒りに身体を震わせながら言う。


「俺の詩織を背に庇う貴様は誰だよ!!

 俺と同じ城西学園の制服を着てるようだが、詩織と同じ1年か?

 てゆうかよ1年、俺が詩織をストーカーしてただの襲っただのと言っていたが……俺はそんなことをしちゃいねぇよ!!

 誰から聞いたのかは知らんが、デタラメ言ってんじゃねぇぞゴラァ!!

 接近禁止令なんてのも出された覚えはねぇよ!

 だからよぉ1年、詩織を俺の元まで連れて来い!

 次いでに左右にいる女共も連れて来い。

 どっちも1年のお前には勿体ないから俺が可愛がってやっからよぉ……へへへっ!」


 阿久比の予想通りの言葉に僕は苦笑する。

 詩織に加えて朱璃と沙苗にまで目をつけるのも、僕の予想通りである。

 僕の義妹である朱璃や()()西園寺財閥令嬢の沙苗のどちらも、僕から見ても美少女だと思う。

 僕がそう思ってるのだから、きっと周囲の男性陣や学園の男子生徒達も同じく思っている筈である。

 勿論、僕の背中に隠れる詩織もだしね。



 僕が心で思っていることはさて置き、阿久比の標的対象となった朱璃と沙苗の様子をチラッと見ると、これまた僕の予想通りに2とも阿久比を鋭い眼光で睨みつけていた。

 特に朱璃は今にも阿久比に飛びかかっていってしまいそうな感じである。

 流石に朱璃がブチ切れるのだけは避けたいと思った僕は、阿久比に言う。


「阿久比先輩……貴方の元に詩織を連れて行く気はないですよ。

 無論この2人も、ね。

 貴方のようなゲス先輩の元になんて連れて行ったら、詩織達はきっと深い傷を負ってしまうことが容易に想像出来てしまうので……特に心の奥底と身体に、ね。

 そうなる未来が想像出来てしまっている僕が、3人を渡すわけないんですよ。

 だから阿久比先輩、詩織達のことは諦めてくれませんか?」


 これで引き下がってくれれば良いなと思っていたのだが、僕が甘かったようだ。

 僕の言葉に更に怒った阿久比が声を荒らげて言う。


「……おい1年、先輩の言うことは素直に従えよ!!

 何で俺の命令に従わないんだよ!!

 先輩の命令は絶対なんだよ!!

 だから1年、悪いことは言わないから女共をこっちに渡せ!

 さもなくば1年、貴様は城西学園にいられなくするだけでなく社会的に抹消するぞ?それでもいいのか?

 なんたって俺の親父はあの瀬戸崎財閥グループの(ひと)つの"瀬戸崎建設"の専務なんだからな!

 俺が親父に一言言えば、貴様の人生なんて簡単に終わらせられるんだからよ!!

 もし、それが嫌なのであれば……黙って詩織達を渡せ。

 安心しろ、3人共俺が可愛がるからよ。

 もっとも、飽きたらその限りでは無いけどなw」


 とまぁ、好き放題言ってきた阿久比。

 その中でも僕が聞き逃せない言葉があった。

 それは、阿久比の父親が"瀬戸崎建設の専務"という言葉だ。

 瀬戸崎建設は、僕が会長の座にいる瀬戸崎財閥グループの傘下企業の1つで、日本国内の約6割の建設事業を一手に引き受けている東証一部上場企業である。


 国からの絶大な信頼を得ている企業なだけに、阿久比の言葉は僕にとっても看過できない問題……いや、グループ全体の問題にまで発展する内容である。

 現に僕らがいるのは通勤通学ラッシュの時間帯であり、人の往来が多い道な為、何人もの通行人が阿久比の言葉を聞いていたはずだ。

 だから僕はすぐさま懐からスマートフォンを取り出し、相良に電話を掛け始める。

 この時、僕と同じく阿久比の言葉を聞いていた朱璃と沙苗は、僕が電話を掛け始めただけで全てを察した表情をしたのと同時に口を開く……阿久比や周囲に聞こえないくらいの声量で。



サイド:朱璃&沙苗&詩織



 お兄様が電話を掛け始めたのを見ていた私は呟く。


「はぁ……やってくれましたね、あの阿久比というゲス男は。

 往来の場だという自覚はないのですね……。

 現にお兄様がこうして即座に電話を掛け始めましたしね」


 私の呟きに反応した沙苗さんが口を開いて言いました。


「あの阿久比という男、詰みましたね。

 まさか目の前にいる1年の俊吾が、自分の父親が勤める会社の親会社の親会社の会長だと分かった時の顔が見ものですね。

 ほら朱璃さん、あの男……自分を放っておいて電話を掛け始めた俊吾を睨んでますよ?」


「……ほんとですわね。

 あっ、お兄様に罵声を飛ばし始めましたわ」


「聞くに耐えない言葉ばかりで、本当に五月蝿いですね!

 「その電話をぶっ壊すぞ!」「電話なんてしてる暇があったらさっさと私達を渡して消えろよ!!」「お前を社会的に抹消することに決めた。だから今更謝っても遅いからな!」「素直に命令に従わないからお前の人生が終わるんだよ」

 とか言っていますけれど、朱璃はどう思いましたか?」


「沙苗さんの言う通り、とても耳障りな暴言の数々過ぎて……お兄様に対する侮辱に対する怒りを通り越して呆れましたわ。

 後々、自身が言った言葉の殆どが自分に返って来るでしょうに……哀れ、としか言いようがないですね。

 まぁ、同情は一切致しませんが」


「私も同情なんて一切するつもりはないです。

 それに、私は俊吾以外の男には触れられたくないです。

 今もこの先の未来も、私に触れていい男性は俊吾だけです」


「沙苗さんのその言葉には私も同意致しますわ。

 私の全てはお兄様だけに……ですわ」


 この私の言葉に続くように、お兄様の背中に震えながらも抱きついていた詩織さんが、私と沙苗さんにしか聞き取れないであろう声量で呟きました。


「……2人と同じように……私に触れていい男の子は俊ちゃんだけだから。

 今も未来も……ね。

 あ……家族なら……頭を撫でたり程度なら触れても問題ない、ね」


 詩織さんが最後に付け足した言葉を聞いた私と沙苗さんは同時に声を発していました。


「「俊吾のことで頭がいっぱいで、家族のことを失念していました……」」


 そう言った私と沙苗さんの言葉を最後に、私達3人の会話が終わるのでした。



サイド:俊吾&相良



 阿久比の言葉を聞いた直後に僕は相良に電話を掛ける。

 僕の電話に対し、相良は1コールで出た。


『通学時間帯にも関わらずのこの電話……何かあったようですね俊吾様』


 普段は掛けない時間帯に僕が電話を掛けてきたことに対し、何か重大な問題が発生したのだろうと察した相良がそう言ってきた。

 相良が察したことに心の中で褒めつつも、僕は言う。


「詳細を詳しく話してる時間はないのだが……事は瀬戸崎財閥グループ全体の信用問題に関わってくる話だ」


『なっ……なんですと!?

 ……それで私はどのように動けばよろしいのでしょうか?』


「ああ、直ぐに瀬戸崎建設の専務である阿久比について調べてくれ。

 時間的猶予はないから急ぎで頼む!

 それからSPの派遣も頼みたい!」


『畏まりました、直ぐに調べます。

 SPは5分以内に俊吾様がいる現在地に到着するように手配致します……いや、手配致しました』


「流石は瀬戸崎家の筆頭執事だな。

 それからもう1つ頼みた──」


『──SPの手配と並行して警察にも通報致しました。

 警察については俊介様自らが急行するとのことです。

 因みに俊介様も5分以内で到着する見込みにございます』


「……相良の気遣いには頭が上がらないな、ほんと。

 にしても兄貴自らがか……警視正は暇なのか?」


『いえ、警視正は決して暇などではないかと思いますが……。

 俊介様は弟である俊吾様のことになると、人が変わりますからなぁ。

 それ以前に俊吾様は"政府にとっても護衛対象"となっていますから、尚更かと』


「……確かにそうだったな。

 しかし政府も大袈裟なんだよなぁ。

 いくら例のアレだからってのもな」


『いやいや俊吾様!?

 流石に貴方様のみ───』


「───おっと相良、それ以上は最重要機密だからな?」


『これは私としたことが……失礼致しました。

 一先ず、阿久比については現在進行形で調査中であり、後10分以内に完了致します。

 ですので、後程またお電話致します』


「分かった。 また後程な」


『それでは失礼致します』


 相良のその言葉を最後に通話は終了した。


 相良との通話を終え、スマートフォンを懐に仕舞ってから朱璃達の方を見ると、何故か2人の顔が仄かに赤くなっていた。

 まぁ、大体は察しましたとも、うん。

 相良との通話中に僕を抱きしめる詩織の腕の力が強まったからね。


 それから僕は、阿久比の罵声を聞き流しながらSPや警察の到着を待つのであった────








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