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第10話 西園寺財閥グループ会長襲来から一夜明けた朝

 西園寺財閥グループ会長の突然の襲来から一夜明けた朝、僕は自室で目を覚ます。


「あの会長が突然に襲来してきて、昨日は疲れたなぁ……ほんと。

 いや、16年間生きてきて1番疲れた日だった……って、ん?」


 昨日の出来事を振り返っていた僕は、左右の腕に違和感を感じ、布団を(めく)る。


「………は?えっ!? なに……この状況。

 なんで沙苗と詩織が僕の布団の中で!?

 何がどうなったら2人が僕の布団の中で寝てるって状況になるんだよっ!?

 しかも僕の両腕に抱きついている上、幸せそうな表情で寝てるし!?

 寝る時は当然、僕以外の誰もこの部屋には居なかったはずなのに……。

 なんで、それぞれに宛てがわれた客室で寝てる筈の沙苗と詩織が僕の布団の中に?」


 布団の中で詩織はともかくとして、沙苗までもが寝てることに驚く僕。

 詩織は小さい時から、僕の布団の中に潜り込んで寝ているのが日常化している為、今更感があるのだけれど……。

 沙苗までもが僕の布団の中で寝ているということに理解出来ずに混乱する僕。

 そして女の子特有の匂いと両腕に感じる胸の柔らかさに、必然的に僕の心臓の鼓動が早くなるのを理解する。

 そんなことになってる僕をよそに、沙苗と詩織は未だに気持ち良さそうな表情で僕に抱きつきながら、規則正しい呼吸で眠っている。


「なんで僕、詩織まで意識してしまってるんだろうか……。

 詩織が僕の布団の中に潜り込んで寝てるなんてことは、日常茶飯事な筈なのに、ね」



 それから暫くの間、自身の理性と闘ってると、沙苗が先に目を覚ました──のだが……。


「ん、ん~!!あれぇ、なんで俊吾が私の隣にいるのですかぁ~?

 こ、これはもしかしてもしかしなくとも……よ、夜這い、に来たのですか!?

 俊吾からの夜這い……嬉しいですぅ~!ギューっ♡」


 そんなことを言いながら更に密着してくる沙苗。

 どうやら完全に寝ぼけている様子。

 頼むから僕に密着しないでくれないかなぁ!?……でないと僕の理性が……。

 自身の理性が崩壊しかけつつも、寝ぼけた沙苗って可愛いなぁ!と、一瞬だけ思ってしまった僕だったが、ハッ!として我に帰り、沙苗を起こすべく肩を揺する。


「沙苗、寝ぼけてないで起きて!!朝だよ!!ほら、早く起きないと遅刻しちゃうよ!!」


「もう朝ですかぁ~?……ん、朝?……俊吾がなんで私の隣に……って、きゃーーーーっ!!!?」


「そんなの、僕が知りたいくらいだよ!?」


 と、朝から騒ぐ僕と沙苗の声が煩かったのか、詩織がようやく目を覚ます。

 そして僕を見上げて言う。


「……朝から騒がしいなぁ、もぅ!!って、沙苗さんが何でこの部屋にいるのかな?

 それと()()()()、おはよ♪」


 こんな状況にも関わらず僕に朝の挨拶をしてくる詩織に、僕は簡単な説明をした。

 僕の説明に納得した様子の詩織が言った。


「……つまり、沙苗さんが客室と間違えて俊ちゃんの部屋に入り、そのまま俊ちゃんのベッドに潜り込んで寝入ってしまったって感じ?」


 詩織の言葉に沙苗が口を開く。


「……多分、詩織さんの解釈で合ってるかと。

 私が間違えたということが分かった所で何ですが……何故、詩織さんが俊吾のベッドで寝ていたのですか?」


 沙苗のこの問いには詩織が答えた。


「私と俊ちゃんが”幼馴染み”の間柄で、幼少の頃から一緒に寝ていたからかな。

 だから私は、高校生になった今でも俊ちゃんのベッドに潜り込んで寝ているのです!」


 その言葉の先を引き継ぐ形で僕が言う。


「要するに詩織は、極度の甘えん坊なんだよ……僕限定で。

 年頃だから一緒に寝るのは可笑しいって言っても聞き耳を持ってくれないから……僕が折れたんだよ」


 僕がそう言った後に、詩織は更にとんでもないことを暴露し始める。


「実際は寝るだけでなく着替えも俊ちゃんの前で良くするし、俊ちゃんと一緒にお風呂も入ってるかな……今でも」

「はいダウトーーーーーっ!!

 いくら何でもオープン過ぎるぞ詩織!!」


「あのね、俊ちゃん……沙苗さんがこれから俊ちゃんの家に住むなら、直ぐにバレることだよ?」

「…………そう………だった……」


 詩織のその言葉に項垂れた僕の横で、沙苗が小さい声で何かを呟く。


「……俊吾と詩織さんが…………でしたら私も………」


 声が小さ過ぎて聞き取れなかった僕は沙苗に聞く。

 何故かその時、詩織と声が被ったが。


「「……えっ、何て言ったの?」」


「俊吾と詩織さ……詩織がそうしているのなら、私も今後は俊吾の前で着替えもしますしお風呂にも一緒に入ることにしますね!!

 後は毎日、一緒に寝ます!!

 これはもう決定事項です!」


「「………………」」


 そう宣言した沙苗は僕に抱きつくのだが、沙苗の宣言に僕と詩織は無言となる。

 ……詩織さんや、君までもがナチュラルに僕の背中に抱きつくのは止めようか……胸の感触が、ね。


 と、沙苗と詩織の2人に抱きつかれたタイミングで、僕の部屋のドアをノックした後にメイド長の遥さんが部屋に入ってきた。


「俊吾様、詩織様、起こしに参りま……………」


「「「えっ……………」」」


俊吾「……………」


沙苗「……………」


詩織「………てへっ♪」


遥「……………」


 遥さんが部屋に入ってきたその瞬間、僕と沙苗と詩織と遥さんの時間が止まる。



 それから暫しの間、無言になる4人……詩織だけが可愛らしく『てへっ♪』と言っていたのだったが、僕と沙苗と詩織がベッドの上で抱き合っていることを確認した遥さんが「お楽しみ中に申し訳ございませんでした! 邪魔者の私は退散致しますので、ごゆっくり!」と言って焦りながら退出しようとしたので、僕と沙苗は慌てて遥さんに弁解する……詩織はとても落ち着いてたよ?この状況でも。


「遥さん、これは誤解だから!!遥さんが想像してるようなことはしてないからなっ!?」


「そ、そうです!!私と俊吾は何もしてませんからね!?」


「慌てて弁解してるのが怪しいですが、それは置いておきましょう。

 朝食の用意が出来てますので、俊吾様と詩織様は着替えた後、沙苗様と共にダイニングまでお越しくださいませ。

 では、私はこれで失礼致します」


 そう言って、遥さんは僕の部屋から退出していく。

 遥さんの言葉で気付いていると思うが、沙苗は昨日から着替えてない為、今も城西学園で指定された制服を着たままであった。

 逆に僕は上下がグレーのスウェットで、詩織は上が僕のワイシャツで下は……うん、見なかったことにしよう。

 だから遥さんは僕と詩織にだけ着替えるよう言ってきたのだった。



 思わぬハプニングはあったものの、制服に着替えた僕と詩織は沙苗を伴って部屋を出てからダイニングに向かって移動を開始した。

 因みに僕がパジャマから制服に着替えてる時、沙苗と詩織に終始見られながらだった。


「(俊吾の身体、引き締まってて素敵です♡

 抱き着きたい!今すぐにでも俊吾の背中に抱き着きたいです~!)」と、心の中で思いながら、俊吾の生着替えを見続けていた沙苗なのであった。

 詩織は見るだけでなく、僕の背中をペタペタと触りまくってましたよ……。



 ダイニングに移動した僕と沙苗と詩織は、先にテーブル前の椅子に着席していた人組の男女に声を掛けられた。


「おはよう俊吾! それから詩織ちゃんもおはよう!

 そして俊吾の右側にいる君が、沙苗ちゃんかな?」


「おはようございます、お兄様♪

 それから詩織さんもおはようございます!

 お兄様の右隣の方が沙苗さん、で合ってますか?」


 そう声を掛けられたもんだから、沙苗が僕に聞いてくる。


「もしかして、俊吾のご家族の方ですか?」


「うん、そうだよ。 僕の兄貴と妹だね」


 僕が沙苗にそう説明した所で、兄貴と妹が沙苗に向かって口を開く。


「これは俺としたことが……いきなり挨拶をしてしまって済まないね。

 俺は沙苗さんの隣にいる俊吾の兄で、瀬戸崎 俊介という。

 歳は24歳で、職業は警察官をしている。

 因みに階級は警視正になるよ」


「私もいきなり挨拶をしてしまって済みませんでした。

 俊吾お兄様の妹で、瀬戸崎 朱璃と申します。

 歳は16歳で、俊吾お兄様と同じ私立城西学園高校の1年生になります。

 俊吾お兄様とクラスが別なのが残念でなりませんが……」


 俊介兄さんと朱璃の自己紹介に対して、沙苗も2人に自分の自己紹介をする。


「これはご丁寧な自己紹介をありがとうございます。

 昨日より居候をさせて頂くことになりました、西園寺 沙苗と申します。

 歳は16歳で、俊吾さんや詩織さんと同じ私立城西学園高校に通う1年生で、クラスメイトでもあります。

 ……って、うん? 朱璃さんも城西学園?」


 自分の自己紹介の最後に、朱璃が自分と同じ高校に通っているということに疑問を感じたようだ。

 沙苗のその疑問に関して、朱璃が口を開く。


「沙苗さん、何故お兄様の妹である筈の私が同い年で城西学園に通っていることに疑問を感じているみたいですので、お答えしますね。

 俊吾お兄様の妹……正確に言えば血が繋がっていないので義妹になりますね。

 何で義妹なのかに関しては、あまり時間的に余裕がないので説明は省かせて頂きますね。

 城西学園に通っている理由については、俊吾お兄様が通われているから……とだけお答えしておきますね」


「朱璃さん、わざわざ私の疑問に答えて頂き、ありがとうございます」


 沙苗と朱璃の会話が終わったタイミングで、ダイニングの中央に設置された時計をチラッと見た俊介兄さんが口を開く。


「俊吾、朱璃……それから沙苗さんと詩織嬢、早く朝食を食べないと遅刻するぞ?

 俺はまだ出勤時間には余裕があるからいいんだがな」


 そう、俊介兄さんに言われた僕らは慌てて椅子に座り、全員で「「「­­「いただきます!」」」」と言ってから、テーブルの上に用意されていた朝食を食べ始める。

 左隣に詩織、右隣に沙苗と、何故か2人に挟まれる形になってたが。

 そんな時、ダイニングに設置している8Kのテレビから、聞き逃せないニュースが流れたので、食べるのを止めた僕らは、そのニュースを見る。


『速報です。日本最大規模の財閥グループである瀬戸崎財閥グループと桜坂財閥グループが連名で、8大財閥グループの一つである西園寺財閥グループとの全ての取り引きを停止すると発表しました。

 詳しい情報がまだ入ってきていませんので、情報が入り次第、またお伝え致します。

 繰り返し速報です───』と。


 そのニュースを見た沙苗の反応は、非常に淡白なものだった。


「西園寺財閥グループもこれで終わりですね。

 日本最大規模の財閥グループである瀬戸崎財閥グループ、それから桜坂財閥グループとの取り引きを全て停止された今、大部分の取り引きを瀬戸崎財閥グループと桜坂財閥グループに依存する形で行っていた西園寺財閥グループは大打撃を受けることになりますね。

 ……絶縁宣言をした私からすれば、当然の報いだと思います。

 正に『ざまぁ!』って直にあの人に言ってやりたいです!」


 それを隣で聞いていた僕は沙苗に言う。


「随分と淡白な反応だね、沙苗」


「当然です!! あの人は、自分本意が度を超していたのです!

 ですので、この結果になるのは目に見えていたことなんです。

 このニュースが流れたことにより、近い内に他の財閥グループも、西園寺財閥グループから手を引く筈です」


「僕もそうなると思うよ。

 まぁ、西園寺財閥グループとの取り引きを全て停止するよう指示を出した僕が聞くのも何だけどさ……沙苗にとって、この結果になってしまって良かったの?」


「ええ、私としてはこの結果になって良かったと思っています。

 寧ろ、遅過ぎるくらいだとも思っています。

 これでも私は、俊吾に感謝しているんです」


「ん?なんで僕に感謝?」


「沙苗さん、私には感謝してないってことかな?」


「無論、詩織さんにも感謝していますよ?

 ですが、西園寺家に縛られてた私が自由を手に入れられたのも、俊吾が最初に動いてくれたお陰だと思っています。

 あの学園で俊吾と出逢えたから……俊吾の協力があったからこそ……私は今此処にこうして自由に過ごすことができるようになったのです!!」


 そう言う沙苗は、晴れ晴れとした表情をするのであった───







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