閑話3 相良&瀬戸崎兄妹VS西園寺 誠二郎
次話より本編に戻りますm(*_ _)m
俊吾と詩織が沙苗を慰めていた頃───
瀬戸崎家正門前にて、瀬戸崎家執事長兼俊吾様専属執事である私、相良 宗正は今……西園寺財閥現会長の西園寺 誠二郎と対峙していた。
私の前にいるこの誠二郎という男は、実の娘である沙苗嬢を政略の道具として利用する為だけに、この瀬戸崎家本家に事前の連絡もない上に非常識な時間帯に押し掛けてきたのである。
そんな誠二郎に対して怒った俊吾様の指示により、私がこの男を追い返す役目を仰せつかった次第なのですが……この男は一向にお帰りになられないのです。
そればかりか、私にこんな言葉を投げかけてきました。
「貴様、あのクソガキにどういう教育をしているのだ?」
「……どういう教育とは?」
「だからなぁ……どんな教育をすれば、儂に対してあのような非常識な態度を取れるんだ!!と聞いているんだ!!」
そう言われた私は返答を返しました。
「……貴方の言っている意味がまるで理解出来ないのですが?
俊吾様の貴方に対する態度が非常識と仰られた貴方こそ非常識なのではないですかな?」
「……なんだとっ!? 儂の何処が非常識だと言うのだ!?」
本当に何も理解されていない誠二郎の言葉に、私は頭が痛くなってきたのを感じました。
頭が痛くなりながらも、私は誠二郎に言いました。
「……何も理解されていないようですので、1つずつ言っていきましょう。
事前の連絡もなく瀬戸崎家本家に押し掛けてきたことが1つ。
尋ねてくるには非常識な時間帯なのが1つ。
会社規模を含む全ての立場が上である俊吾様に取るべきではない非常識な態度が1つ。
実の娘である沙苗嬢を政略の道具……悪く言えば奴隷として扱っている非常識さが1つ。
そして、近隣住民の迷惑を一切考えていない貴方の大きな声の5つが主です。
私が言ったこれらだけでも、非常識に値すると思うのですが?」
こう言った私は、誠二郎の様子を見る。
その誠二郎は何故か顔を真っ赤にしながら私に罵声を浴びせてきました。
「儂の権力を維持する為の道具を誘拐した家になぞ、連絡する必要などない!!
儂が何時に尋ねようが儂の自由だろうが!!
どの財閥グループよりも儂が一番立場が上なのだから、儂の態度が非常識なわけがないだろうが!!
実の娘をどんな扱いをしようが、貴様らには関係ないはずだが?
他人が西園寺家の事情に首を突っ込むな!!
近隣住民の迷惑など、儂の知ったことではないわ!!」
そう誠二郎が言い終えた時、私の目に見覚えのある男女が此方へ向かって歩いてくるのを視界に捉えました。
そしてその男女は誠二郎の罵声が聞こえたようで、駆け足で私の方へと走り寄ってきました。
私の方へ走り寄ってきた男女は、走ったことにより乱れた呼吸を落ち着かせてから誠二郎の方を一瞬だけチラ見した後、私に話し掛けてきました。
「相良、罵声が聞こえてきたから途中から走ってきたが、何かあったのか?」
「罵声が聞こえてきたから兄さんと慌てて走ってきたんだけど……相良さん、何かあったの?」
「これはお帰りなさいませ、俊介様、朱璃様。
実はですね───」
そう言って声を掛けてきた男女──俊介様と朱璃様に私は経緯を説明しました。
それから少しして、私から経緯を聞いた俊介様と朱璃様が誠二郎に向き直ってから言いました。
「相良から大体の経緯を聞いたが、西園寺財閥会長……俺の弟に対して随分な態度を取ったみたいだね」
「お兄様に対して随分と好き放題言ったみたいだね、貴方は」
俊介様と朱璃様が言ったことに対し、誠二郎が俊介様と朱璃様に問い掛ける。
「そこの執事に何を聞いたのかは知らんが、唐突に現れた貴様らは誰だ?」
「初対面で貴様ら呼ばわりか……相良の言う通り、ほんとに常識を知らないらしいね。
俺は俊吾の実の兄である瀬戸崎 俊介という。
以後、お見知り置きなどしなくてもいいよ」
「……ほんとに常識の欠片もない人ね。
まぁ、いっか……私は俊吾お兄様の義妹の瀬戸崎 朱璃と申します。
以後、お見知り置きしなくてもいいです」
そう誠二郎に自己紹介をした俊介様と朱璃様。
それぞれの最後の言葉は”二度と貴方に会うことは無いから別に覚えなくとも一向に構わない”というニュアンスを私は感じ取りました。
また、かなりお怒りだということも……。
そんな俊介様と朱璃様の自己紹介が気に食わなかったのか、誠二郎が言いました。
「……何だその自己紹介の仕方は?
西園寺財閥グループの会長たるこの儂を……舐めてるのか貴様らは!?」
「別に舐めてなどいないが?」
「私も貴方を舐めてなどいないけど?
何が気に食わないのかな?」
お2人の言葉に対し、怒り狂った表情を顕にしながら誠二郎が口を開く。
「貴様らのその態度自体が儂を舐めてると言っているのだ!!
財閥グループの頂点に立つこの儂を、な!!」
その発言に対し、俊介様と朱璃様は即座に口を開く。
「……いつから貴方が財閥グループの頂点に立ったのかな?
嘘を言うのも大概にしないと……いつか取り返しのつかないことになるよ?」
「貴方が財閥グループの頂点って……ぷっ、はははっ!
本当に貴方は何処までも自分が一番じゃなきゃ気が済まないのね。
……可哀想な人ね、貴方」
「き、き、貴様らぁぁぁぁぁぁ!!」
あからさまに俊介様と朱璃様に馬鹿にされた誠二郎が怒り狂った声を上げる。
だがその時、俊介様が低い声で誠二郎に言いました。
「西園寺会長……これ以上に大声を上げて騒ぐのなら、迷惑防止条例違反で貴方を逮捕しなければならないが?」
「逮捕だと!? 何を言っているんだ貴様は!!」
そう言った誠二郎に俊介様は懐から警察手帳を取り出して見せながら言う。
「言ってなかったけど、俺の職業は〖警察〗だ。
更に言うならば、俺の現在の階級は〖警視正〗だから。
だから……この意味はいくら非常識な貴方でも、流石に理解は出来るよね?」
「…………………」
俊介様が懐から取り出した警察手帳を見た誠二郎は、口をパクパクとさせていました。
それから暫くの間、口をパクパクとさせていた誠二郎が言いました。
「……ふ、ふんっ! きょ、今日の所はこの位にしておいてやろう!!
だが儂は必ず……必ず沙苗を取り戻す!!
儂の権力を維持する為には必要な道具なのだから!!
そして何れは、瀬戸崎財閥グループを初めとした全ての財閥グループを手に入れてやる!!」
そう言った誠二郎は傍に待機していたリムジンに慌てて乗り込み、この場から逃げ去っていきました。
その様子を見ていた俊介様と朱璃様がポツリと言いました。
「……俊吾と詩織嬢を敵に回した時点で、貴方はもう終わってるんだよ。
貴方が財閥界の頂点に立つ日は……天地がひっくり返っても訪れることはないのに、ね」
「……あの人は一番敵に回すべきではないお兄様に牙を突き立ててしまった。
だから精々……これ以上、お兄様を怒らせないことを祈ります。
祈ったところで無駄でしょうけど、ね」
お2人の言葉を聞いた私も、正にその通りだなと思いました。
だから私も心の中で願いました……西園寺会長が更に俊吾様を怒らせてしまわないことを───
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