九話 魔法
何も考えずに行動したせいで特に意味のない時間を過ごしてしまったが、幸いなことにそこまでの時間は立っていない。消費してしまった時間はだいたい一時間半くらいだろうか。朝起きた時間が早かったおかげでまだ八時くらいになったくらいなのではないだろうか。
攻撃力についてはあまりわからなかったが、一応筋力値のようなものだと思っておけばいいのだろう。全体的に人間の頃よりも強くなっていると思うから日常生活でもやりすぎには気を付けないといけなさそうである。
防御力はちょっと試したくない。というか安易に試せない部分でもある。ので、飛ばします!
となると次は、お待ちかねの魔法です!!!
実は最初に見た時からめちゃくちゃ気になっていた。一応順番に試していきたかったから後に回したけど、超気になってた。さっき攻撃力について考察してた時に知能がめっちゃ下がっていたのもこれに気を取られていたからです。いや、誰でも一回は使えたらなぁと考えたことがあるはずの魔法だよ!?そりゃ気になるでしょ。つまり、しょうがないです。はい。
まあ終わったことは置いといて、魔法か...。まずまずの話だが、どうやって使うのだろうか。ラノベでよくあるのは、ゲームのように決まった魔法のみを決まった詠唱を行うことで決められた強さの魔法を打つことができるものと、体内の魔力を魔力操作で操りいろんな形の魔法に変化させたりできるもの、の二つが主流かな。
前者では絶対に同じ力の魔法を打つことができ、ほとんど考えることがないという利点がある。ただ、どんな場面でも同じ力のものしか打てないため力加減ができない上に、レベルが上がることでしか新しい魔法を覚えることができなかったり、オリジナル魔法を作ることができないなどといったデメリットもある。
後者では自らの意志によって力加減もでき詠唱の簡略化や破棄ができたり、自分だけのオリジナル魔法を作ったり、既存の魔法を改造したりすることができる。しかし、わざわざ自分の体内魔力を動かして練りこんだり、いろんな形に変形させてからでなからでないと発動できないうえ、自分の精神状態によって魔法の状態が左右されたりするなどのデメリットもある。
確実にどちらがいいとは言うことができないところである。
では、この世界はどちらなのだろうか。
これも試してみないとわからないので、試してみます。
さっきのような醜態はさらしません。
とりあえず、前者の可能性を試そうと思う。これなら簡単。では一緒に叫びましょう。
「ぴゅいい!!!」
(ファイヤーボールッ!!!)
...ダメでした。何も起きねぇ。いや、呪文が悪かったせいかもしれない。
「ぴゅいいい!!!」
(ファイヤーウォールッ!!!)
「ぴゅいいいぴゅうう!!!」
(ファイヤーアローッ!!!)
「ぴゅいッ!!!」
(炎弾ッ!!!)
「ぴゅううい、ぴゅうううッ!!!」
(焼き尽くせ、ファイヤーボールッ!!!)
...ほかにもいろいろな呪文を組み合わせてみたんだがどれも発動しなかった。何かが動いた形跡も感覚もなく、むなしくなっただけだった。もし、今のところを誰かに見られていたら軽く死ねるくらいには。
ということで、詠唱のみで発動するということはないことが分かった。もしかしたら今のが違うだけなのかもしれないがそんなもしもの話はやめておく。今ので一つも当たらなかったならどれだけ頑張ろうとたぶん無理だしね。
ということで次に試すのは、魔力操作のほうです。
ま、この場合は最初に体内魔力を感知するところから始めなければならない。
地面に足を折りたたんで座る。
そして、体を一番楽な姿勢にして目を閉じる。だいたいこういうのは心臓かお腹の下の丹田あたりに集まっていることが多いからそこら辺から探していこう。
少しづつ意識を内側だけに向けていく。
集中しろ...何か、違和感がないか探すんだ......。
__約三十分後_____
...見つけた!!
おなかの下、丹田と言われるところだろう場所に何か暖かいものを感じる。一度見つけてからは違和感をはっきり認識できた。暖かい水のような何かがお腹のあたりにたまっている。これがいわゆる魔力なのだろう。ついに発見することができた。
それにしても、予想ではもっと時間がかかると思っていたけど意外と早く見つけれたな。これも人間でなくなったことが関係しているのだろうか。
それは置いといて、これで見つけることはできたし、あとは操るだけだ。ラノベ界の先人たちはだいたい赤ちゃんの頃からが多いため時間があるが、俺にはあまり時間がないので早めに覚えたいところだ。先人たちはまずは魔力をこねて引き延ばしたりしていたな。
意外と難しい見つけるのは予想よりも簡単だったがこれは思ったより時間がかかりそうだというかできないと思う。そうと言うのも、どうも魔力に粘り気が無いせいでつかんだりいろんな形にしたりすることはできそうにない。つかんだ隙間からこぼれていってしまう。まるで、色付き水だな。なぜか虹色に光っているように思えてるしね。
こうなったら違うものを試してみるか。王道中の王道である「身体強化」。これならすぐにできると思う。イメージ的には血液とかの退役に溶かす感じで。
丹田にある魔力を溶かすようにイメージした瞬間、魔力の境界線が溶けて無くなったのを感じた。さらにそこからジワリと魔力が染み出ていくのを感じる。
魔力に浸かったところからはあからさまに何かが変化していっている。今までが十キロの重りでも持っていたかのように思えるほど体が借るくなった。あまりの変化に体中の細胞を作り変えているかのようだ。いや、もしかしたら作り変えているのかもしれない。そう思えるほどにすさまじい変化だ。
魔力の境界線はすぐに全身にいきわたり、全身の細胞に変化が及んだ後の体は全能感をも覚えさせている。あまりの変化に追いついていない思考はその全能感に身を任せたまま、ふと思った。
今ならできるんじゃないかと...
「...ピュイイ」
(...ファイヤーボール)
体の中を漂っていた魔力が突然右翼の先を中心に渦を巻き起こし、ほんの少しの魔力を残して無意識に上げていた右翼へと集まっていった。そして収束が収まったとき、集まった魔力は毛糸のように細くなって外に出た。魔力の糸は羽の先十センチのところでまたひとつの塊となり、すべての魔力が一つの塊となると発火した。いや発火と言うべきではない。火そのものに変化したのだ。まさしく圧縮された炎とでも言うべきものはひとりでに前へと動き出し、一瞬にして時速百キロを超えたかと思うとさらに勢いを上げながら百メートルは離れたところへと着弾した。
あっという間だった。すべての工程を終えるのに一秒と掛かっていなかっただろう。自分でも知覚出来ていたのが不思議に思えた。
これだけでも十分嘴が半開きになるくらいには驚いた。あんなに溢れていた全能感を忘れるくらいには驚いた。でも、それだけじゃなかった。
着弾したファイヤーボールの行方。これがやばかった。
放たれたファイヤーボールは着弾したとたん大規模な爆発を起こした。熱風が簡単にここまで届くようなものを。しかも着弾地点を見てみると煙はほとんど出ていなかったが、ちょっとした隕石でも落ちてきたのかと思えるクレーターができおり、周りには大量の土砂が飛び散っていた。その大きさは直径二十メートルくらいはあると思う。クレーターの内部は地面が真っ赤になり超高温になったことを示している。これではちょっとした災害だ。地面を溶かすほどの高温を一瞬で作り出すなどどれだけのエネルギーがあればできるのか。計算したくもない。できないけど。
ついに初めての魔法を遣えたわけだが、今は罪悪感がひどい。思いっきり自然を大破壊してしまった...。顔の血の気が引いているのがよくわかる。い、いや、別にわざとでもないし管理者がいるわけでもないんだから別に悪くはないと思うけどね!?............鳥がやったことなんで許してください。
ま、まあ、ほっといてもいいよね?......で、でもさすがにできるだけ足で土を元に戻しておくべきかなぁ...。
最近あんまり書けてない。やんなきゃいけないこと、やりたいことが多すぎる。...どちらかというと後者のほうが圧倒的に多い気がするけど。