七話 二日目
ぱちりと一瞬にして目が覚めた。
どうやら寝ていたということは分かるが、夢を見ていた記憶はない。朝起きると感じるような頭が全く働いていない眠気も全く感じない。
それほどに深く眠っていたということなのだろう。
昨日枝にとまってからの記憶がなく今もとても頭がさえているため、寝ていたということを疑いそうになるが、自分の本能が夜が明けたといっている。
同じ体勢で寝ていたせいで硬くなってしまった間接や筋肉たちを伸ばそうとして、ここが太いとはいえただの木の枝の上だったことに気が付く。一瞬少しビビったが、少し動いたところで落ちたりするようなことはない広さがあることを改めて確認すると、羽を広げ軽く羽ばたきながら片足づつ持ち上げて指を動かしておく。
体を動かしながらも周りを確認してみると改めてここら辺の木のでかさがわかる。幹ですらないの比直径二メートルはあるのではないだろうか。比較対象がないために正確な数字がわからないが最低でもそれくらいはあるだろう。でかすぎる。
十分体もほぐれたところで枝の上を少し歩いてみる。空気は結構肌寒く羽毛がなければ上着が欲しい気温になっている。だが、葉の間から差し込む光はとても暖かく気持ちがいい。
一回寝たからだろうか。今は随分と心が落ち着いている。
昨日の自分は冷静になっているつもりでまったく冷静に慣れていなかった。
やっぱり考え方が変わったといっても今までは普通の高校生として生きてきているためすぐに冷静になるなんて無理だったのだろう。テンションの上下が激しかったのもそのせいだと思う。
今思い返すとちょっと恥ずかしいな......。仕方ない状況ではあると思うけど、なんか子供みたいに思える。
しかし、異世界か...。
昨夜は結構錯乱してたとはいえ結構いい線いってる気がする。まだ絶対に異世界だ!と断定できる要素はないけど今のところその線が一番有力な気がする。いくら智識のない高校生といってもさすがにこんなすごい景色が存在してたら有名になっていて知っていると思うしなぁ。
あと僕の中二病が疼いている。
まあ、せっかく周りに人がいないみたいだしちょっと定番のアレ、やってみようかな。
アレとはラノベ好きなら一度はやったことがあり、異世界に行く系のラノベなら異世界に来た主人公がまず初めにやることであるアレである。
つまりッッッ!!!
「ピュイイッ、ピュイイイッッ!!!」
(ステータスッ、オープンッッッ!!!)
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柊 秀斗 (0)
レベル1
種族:始祖炎鳥
HP:1043/1043
MP:2519/2519
攻撃力:360
防御力:230
魔法攻撃力:800
魔法防御力:560
俊 敏:430
器 用:370
精神力:780
特殊スキル:再生の炎、書庫、言語理解、アイテムボックス、鑑定
スキル:炎魔法
称号:魔物転生者、異世界人
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..................ワア、ビックリシタナァ......。
...ほんとに出てきちゃったよ。
さすがにほんとに出てくるとは予想できんかった。確かに、確かに俺は異世界ならあるかもしれないと思ったし、だからこそ試したわけだが、どこかゲームっぽさがあるわけでもないのに出てくるとめちゃくちゃ違和感しかない。
正直なところちょっと期待してたところはあるけど、実際に半透明の板が空中に浮いていると何とも言えない気分になるね。
どういう理屈でできているのか、すごく気になる。
やっぱり魔法的な何かが働いた結果なのか、それとも神様みたいな存在が作ったのか。
ちなみに触れることはできないっぽい。羽の先でつつこうとすると何の感触もなく通り抜けた。
にしても、結構しっかりしたステータスだな。判定基準は分からないがいろいろな項目が数字化されている上にレベルやスキル、称号まである。
上から見ていったときまず初めにあるのが自分の名前なのは分かるが、......その横は、年齢でいいのかな?名前の横に書かれるのはだいたい年齢だと思うけど、そうすると俺の年齢は0歳ということになってしまうのだが......鳥になってからということかな。
その次!
うん、まあ分かる。たぶん一般的なゲームやラノベで出てくるレベルと見ていいと思う。魔物を倒すと経験値がたまって、少しづつレベルが上がり、レベルが上がることでHPとかMPとかのほかのパラメータが上昇するという奴。
それ以外だと魂の器のレベルでパラメータの限界値が上がるというのもあるが。
種族はそのまま種族かな。人間とかの。つまり俺は赤い鳥ではなく始祖炎鳥というちゃんとした種族があるわけだ。結構かっこいいじゃん。なんか始祖って言葉が付くだけでかっこいいと思っちゃうのは中二病だからだろうか。
さて、問題のHPとかの謎パラメータについて考察しますか。いや、十分ほかの項目も謎ではあるが、基準も計測方法もわからないこれらに比べたら他はまだましかと思うだけだが。
うーん、でも今ここで考えてもたぶんわからんしなぁ。
数字だけ見ると結構高い気がするんだが一般男性の平均が100だったり10だったりと作品によって変わってくるものだからこれは後でいろいろ身体能力の確認をしないといけなさそうだな。
それだけじゃない。怖いけどHPがどういうものかも確認しなきゃいけない。もしこれが0になったら気絶するのではなく死ぬだったらしっかり気を付けないといけなくなる。
で、スキルと称号だな。スキルは特殊とそうでないものがあるみたいだけどたぶん違いは頑張って獲得できるものかどうかじゃないかと思う。SPのようなものもないようだし練習してある程度熟練度がたまるとスキルが獲得できる方式なんだと思う。ただ、それは普通のスキルのみの話で特殊スキルの場合は特殊な条件を満たさなきゃいけなかったり、種族スキルだったり、スキルを極めたりしないと獲られない特殊なものだと推測する。
あくまで推測なんだが結構あってると思う。俺のラノベ知識と中二病はあってると言っている。
称号はまんま何か特別なことが起きたり起こしたりしたときにつくものだろう。これも特殊効果があるものとないものに作品で別れる。
......よし、とりあえず朝ご飯を食べよう。
昨日夜は降下してきたらすぐに寝てしまったから、飛ぶ前にちょこっとだけ味見した分しか食べていないのだ。ステータスがあるという衝撃な事実のせいで忘れていたが、実はめっちゃお腹空いてたりする。
ステータスについての考察はまだ終わっていないが、お腹も悲鳴を上げようとしているし考え込む前にまずは腹ごしらえをしなければいけなそうだ。
それに昔から「お腹が空いては戦はできぬ」と言うし、昨日見つけた果実でも食べるとしますか!
いつの間にかたどり着いていた枝の先端をつかんでいた足の力をふっと抜くと同時に大きく広げた羽を思いっきり、力強く羽ばたかせる。
ふわりと浮いた体が落ちようとする前に羽ばたき、高度を上げながら木の内側から外側へと飛び立っていく。
昨日果実を見つけたのはどこらへんだったかな...と上空から森を見下ろしながら考えていると、すぐ近くにクルミのような茶色の殻をした昨日食べてみた果実を見つけることができた。因みに見つけた果実の外見はクルミのような殻に包まれているが、中はリンゴみたいで大きさはサッカーボールくらいはある。
高度を落としてホバリングをしながらその果実を足でつかみ、引きちぎる。少しの抵抗を感じるが結構簡単にとることができる。
木の枝にとまりながらだと食べてる途中に落としてしまいそうなので、地面まで下りてそこで嘴を使って殻を割る。結構硬そうに見えるし、実際に硬いのだが二分くらい頑張っていると割ることができた。見た目的にはトンカチと楔があっても十分くらいはかかりそうに思えるのだがやはりステータスの恩恵があるのか。
そんなことは置いといて佐々と食べ始める。うまい。途轍もなく瑞々しいが甘さもある。これを食べ続けたら糖尿病になりそうだ。しかし、結構ボリュームがある大きさだったはずなのだがこの勢いだと食べきれてしまいそうだ。
...もしかしたらもう一個食べれるかもしれない。確かにお腹にたまっている感覚はあるがこれを食べてもまだまだ食べられそうな雰囲気はある。
まあ、食べてから考えるとしますか。
激動の一週間だった。
今僕の頭はテストなるものの攻撃により大打撃を受けています。灰から復活するまでしばらくお待ちください...