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異世界転生した。クラスの皆はどこでしょう。  作者: 写六 蘭丸
壊れる日常と変化
5/15

五話 飛翔



 現在の時刻はだいたい五時くらい。

 日も結構傾いてきていて木の影にいると少し肌寒く感じる。

 ちなみにだが、先ほどから一時間とか今何時とか表しているが全部適当である。五時というのも帰宅部の俺がいつも帰ってくる時間帯で見る太陽の傾きと同じくらいの傾きに見えたからである。

 まあ、遅刻という概念が存在しない今ではそこまで時間に正確性は求めないから別にどうでもいい話だが。


 そういうことで今までずっと練習し続けていた俺は今、木々の間を飛んでいる。

 所謂木々の間を縫うようにして飛ぶというやつだが、如何せん樹木の間が広いためほぼただの滑空に近くなっている。

 実はこれができるようになるまであまり時間はかからなかった。


 練習を始めた最初の頃は地上で今までなかった器官に慣れるように意識しながらいろんな風に動かせることを確認していたが、ある程度慣れてきたときに根っこの低い位置から翼を広げて跳び降りるというのをやってみたんだ。

 これが結構楽しくて、一回目はめちゃくちゃビビりつつも失敗して受け身すら取れなくてもケガしないようなとこから試してみたのだが、いざ跳んでみると体がたんぽぽの綿毛かのようにふわりふわりとゆっくり降りたんだ。


 感動した。


 あれほどビビっていたのはなんだったんだってなるくらい何回も飛び降りた。

 気分的にはジェットコースターに連続で何回も並んで乗っている人だったと思う。それほどに未知の感覚で楽しかった。


 そして最初は低かった飛び降りる場所も少しづつ高いところに変化していって、根っこの中でも一番高いところから飛び降りれるようになった。


 そうなると今度は降りるだけでは物足りなくなるわけで、俺は下降中に羽ばたいてみた。

 すると一瞬だけだが下降が止まったように思えた。実際に止まっていたかは分からないが、そんな感覚があった。


 もうこの時には飛ぶということに夢中になっていた。本来の目的である木の上に行くことなんて忘れてただただ楽しんでいた。

 今考えるとこの体になったことで精神年齢が少し下がっているのかもしれないな。

 思い出しているとそう思ってしまうくらいには楽しんでいた気がする。ちょっと恥ずかしいな。


 飛びながら羽ばたくのは慣れるのに苦労するだろうと考えていた思考とは反対にすんなりと羽ばたくことができた。

 もしかしたら、鳥としての本能やら考え方とかが芽生えているというのは正しいのかもしれない。

 迷うこともなく自然に羽ばたくことができた俺はまた根っこに上り今度は一回ではなく連続で二回と羽ばたいてみる。できた。成功だ。体制も崩すことなく羽ばたいた俺は確かに体が重力に逆らったのを感じた。


 もう一回試してみる。また出来た。


 今度はちょっとだけ前に重心を倒して滑空しながらやってみる。浮いた。そのまま落ちずに少しだけふわりと確かに浮いた俺はただ滑空したときよりも遠くへ着地した。


 それができた俺は最初に感じていた失敗への恐怖なんて忘れ、また根っこに上ると湧き上がる自信とともに飛び降りた瞬間ほとんど滑空もせずに全力で大きくしなやかに羽ばたいた。それも一回ではなく何回も続けて。


 空気をたたいた翼は付随する小さな体を持ち上げた。

 そして最低限の空気抵抗とともに持ち上げられた翼はまた空機を押すようにたたき、体を持ち上げる。


 それを無我夢中で十回ほど繰り返しただろうか。俺は意識を羽ばたくことからその周囲へと向けた。





 感動なんて生温い、もっと大きな何かが頭をぶったたきながら心に浸透していった。



 俺は木の根っこよりも一メートルくらい高いところにいたのだ。つまり、空を飛んだ。まだ一メートルではあるが、間違いなく空を飛んだのだ。

 つい羽ばたくことをやめた俺は滑空する。遅れてやってきた感動とか嬉しさとか達成感とかおおよそすべてのプラスな感情を突っ込んだと思えるような何かの余韻に浸って放心していた俺は、無意識に着地した。

 いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、少しの間その場に立ち尽くしていた俺だったがはっと息を吹き戻すかのように我に返った。



 「............ぴゅ......ピュイィ............」


 (............ぅうおおおぉ......すげえ、俺、空飛んじゃったよ。......まじかぁ。やべえな、語彙力が死んでやがる......)



 そうして初めて空を飛んだ俺はそのあとも何回も空を飛び、すぐに着地しなずに飛び続けられるようになった。飛び続けているとだんだんと周りにも目を向けられるようになり、いろんなことがわかった。今まで草と同じ目線で見たい景色とは全く違い下からだとわからなかったここら辺の全体図も手を取るかのようにわかる。まさしく、視界が広がった。


 それに移動スピードが速い。十分くらいはかけていたであろう道のりも空を飛べば一瞬だ。川から最初に目覚めた開けた場所まで戻るのに三分もかからなかったと思う。歩いていたのがバカバカしくなるくらいだ。



 それで、今に至るってわけだ。

 ちなみに今は慣れるためにも方向転換とか速度に緩急をつけたりしているところだ。結構慣れてきたからいろいろできるようになってきている。

 だが、やっぱり思うが習得が速い。そういうもんと言われるとそれまでなのだが、俺的には飛ぶのに一日近くかかってもおかしくはないと思っていた。鳥の本能に加えハイスペックということもあり得るかもしれない。......ちょっと高望みしすぎかな。



 さて、そろそろ本来の目的である木の上に行こうかと思う。枝の間を上昇するのはちょっと怖いがやってみるか。


 急上昇の練習はさすがにここではできないので、ホバリング状態から少しづつ上がっていこうと思う。

 ああ、そうこの体はなんとホバリングができるのだ。因みにバックもできるぞ。すごいだろ。

 まあ、これで少なくとも地球では未発見な種類なことが分かったが。


 まあ、ご飯のために頑張りますか。



















 ............最悪の場合はさっき散策中に見つけた虫を食べるしかない......鳥は昆虫食である......



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