第三十八話『黒鎧の魔物』
アイネイア、そしてレアのポテンシャルは並外れている。ヴェヌスだって己の才能を伸ばし続けている。しかし自分だけは固定とした力だ。変わらずに同じ力量で戦場に立っている。努力や経験値を得たとしても彼らの様にパラメータ値は上がりはしないだろう。其れが『瘴気の呪い』なのだから。ディアーナが【捕食】と言う力を備えている由縁でもある。瘴気と完全に一体化したディアーナはレベリングではカンストと同じ扱いを受ける。しかし捕食能力を使えば相手の力を根こそぎ奪い取る事が出来るのだ。故に無限に進化を繰り返す事が出来る化物。反対にユーノは成長限界が来ない勇者特有の加護、宿命が魂に刻まれている。性質は違えど根本的には同じ形で進化をする光と闇の関係である。
史実による終盤に置けるディアーナの力を10とするのならばユーノの力は8に値する数値である。因みにの魔界の王である《骸の魔物》は9程度だろう。そして自分の今の実力を冷静に測るとなると6と言ったところだろうか。アイネイアとレアが4、ヴェヌスは5程度の実力までに成長して来ている。出会った当初は皆、3以下の実力だったからこそ如何に彼らの成長比率が凄いか分かるだろう。
『良くぞここ迄辿り着いたな醜き人間共よ。我が刃の錆にしてくれる。』
公国領、北方面の最北端。北塔の最上階にて瘴気の渦の化身である魔物が自分達を迎える。
(黒騎士.......)
自分の纏う鎧と酷似した鎧を着用している【黒鎧の魔物】。
「禍々しいな。」
黒騎士は黒い霧を常に放出し纏っている。そして黒鎧の魔物の隣に霧が収束し形を成す様に黒馬が現れる。
(この鎧の型はアレがオリジナルか。)
黒鎧の魔物が黒馬に跨る。そして巨大なランスを手元に出現させた。黒騎士も黒剣を構える。ヴェヌス達も同様に武器を抜刀し戦闘体勢に入った。
(敵の鎧が副団長殿の鎧に酷似している..........いいや、副団長殿は我らが味方。何を疑う必要があると言うのだ。)
「彼奴の姿、なんか副団長さんと同じ気がするんだけど?」
するとレアが空気を読まずそう口に出してくる。アイネイアは目を細め両者を確認すると驚いた顔をした。
「ほ、本当だ!」
瘴気の力を使っているからこその力。そして姿形もまた似てくるのも必然。
「そういえば、一度も生身の姿を見た事ないわねぇ..........」
「ジョン副団長が魔物な訳がないだろ!」
黒騎士はゆっくりと頭部の鎧を外し、二人へと振り返る。
「余り見せたくはなかったんだが、な。」
二人は黒騎士の顔を初めて直視し、硬直した。その顔は余りに美しく凛々しい。まるで御伽話にでも出てくる王子、又は天の使いようだったと二人は後に語る。
「ふ、ふつくしい..........」
アイネイアが感激とした様子で自分を拝む。ユーノの教育の賜物であろう。
「むさいおっさんが出てくると思ったのに、美青年が出てくるなんて...........卑怯じゃない///」
レアは照れた様子で顔を逸す。因みにヴェヌスはと言うとウンウンと何故か関心していた。
「仮に副団長殿が敵方だとしても当方は必ずやお側にて付いて參ります。」
ボソりと頬を染めながら耳打ちをして来るヴェヌス。黒騎士は苦笑をするとヴェヌスの背を軽く叩いた。
「其れは頼もしいな。さぁ、戦いを始めよう。相手さんは待っていてくれてたんだからな。」
黒鎧の魔物はランスを振るい鼓舞すると黒騎士へとランスの刃先を突きつけた。
【待ってやるのも武人としての余裕よ。】
随分と話の分かる魔物だ。
【だが安心するのは早いぞ。貴様達にあるのは絶望と死のみ_____________】
黒馬を走らせる黒鎧。黒騎士も同時に足を前へと進める。
【__________精々足掻き死ぬ事だ!!】




