第二十一話『チーム』
「だから何故、当方があの者と一緒のパーティーなのだと聞いているのだ!」
騎士大隊団長の部屋から怒声が響き渡る。マールスははぁとため息を漏らすとヴェヌスの履歴書へと手を置いた。
「お前が強いのは俺は知っている。だがなぁ_____協調性がないんだ、お前は。」
「協調性がない、だと?」
「あぁ、お前は何時も団員達と揉め事を起こすからな。ジョンと組み、調査任務に当たれ。少しは仲間の大切さを理解できるはずだ。」
マールスは席を立ち、部屋を去る。取り残されたヴェヌスは地団駄を踏んだ。
「あの者を尾行すれば秘密が分かるなどと嘘をつき、次はパーティーを組めだと?巫山戯るな!」
舐めているにも程がある。それと騎士団員達といざこざを起こすのはアイツ等が無能だからだ。戦場で足を引っ張る者は邪魔だと腕のない騎士に言ってやったら逆上して来た。当方の問題ではない。
(其れにここ数日奴を尾行してはみたが.......何もなかった。勤務を通常通りに行い、夜はマールス団長が食材を手に彼奴の家に食事に訪れたくらい。)
何も変わった事はない。ただ、鎧の中に隠れる姿を未だに見てはいないくらいか。
「おい、マールス.....いい加減にしろよ。」
ヴェヌスと同じパーティーに入れられた。其れもツーマンセル。こちら側のストレスを考慮せずに進むこいつを心底殴りたい。
「何を怒っている?ヴェヌスはじゃじゃ馬娘だ。お前が綱を握っていてやれ、ジョン。」
何が握っていてやれだ。面倒事を押し付けただけだろうが。
「何なら副団長の立場をヴェヌスに与えても良いんだぞ?」
マールスを脅してみる。ヴェヌスが権力を持てば何かしらのトラブルを持ち込む事は目に見えている。主に魔物関係ではなく対人関係でだが。
「俺を脅している様だが無駄だぞ。既に陛下と聖女からは許可を頂いている。撤回するには先ず両名を説得する事だな。」
ディアーナはともかく、皇帝を説得するなど不可能だ。会える機会がない。あちらが招集を掛けない限りは面会は出来ない規則がある。
「はぁ、分かった_________やれば良いんだろ?」
「始めからそう言っている。」
この男、本当に殴り殺してやろうか.......
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「と言う事でお前と俺がパーティーを組む事になった。経緯は彼奴から聞かされているな?」
とりあえず文句を言っていてもしょうがないのでヴェヌスの元を訪れる事にした。
「不愉快だが、当方は副団長殿と組むようだな。」
イライラとした様子で紅茶へと手を付けるヴェヌス。現在は騎士大隊直属で管理する綺麗な庭園にて昼食をとっていた。もちろん、外で鎧を外す訳には行かないので、ヴェヌスの食事を取る姿を見ているだけなのだが。
「協調性の話は当方に理がある。仲間でいる以上、肩を並べられる程強くなければ邪魔でしかない。其れに戦場に弱者を連れて行くなど、無駄死にさせるだけだ。」
要約するに弱い奴は戦場では死んじゃうから待ってましょーねーと言う事だそうだ。
「正論だな。だが、だからといって喧嘩をしては駄目だろう。もっと言い方を柔らかくすれば、言い合いにはならなかったんじゃないのか?」
「そんな事当方は承知の上だ!だが、当方にはそのような話術を行える程会話には優れていない。」
なんだろう、こいつの事が少しだが分かった来た気がする。
(こいつ、実はただ不器用な奴なんじゃないのか?)
もっとも短気である事には変わらないが。
「まぁ、その点俺とは上手くやっていけそうだな。肩を並べて戦えるし、困った事があれば相談にも乗る。無理に柔らかくなる必要もないしな、俺の前じゃ。」
ヴェヌスは目を見開いた。まるで信じられないものを見るような目で。
「貴様........当方の身体が目的か?」
「なんでそうなる!」
「当方に優しくするなど裏があるに決まっている!」
「いやいや、俺達は此れから共に長い旅に出るんだから、良好な関係を築こうとするのは当たり前だろ!」
ヴェヌスはコップを皿に置き、確かにと首を縦に降った。
「其れで、我々はいつ出立をするのだ?」
黒騎士は庭園から見える王宮を指差し告げる。
「明日だ。今朝、マールスの奴が報告書を提出したからな。許可は既に下りて居る。明日の早朝、帝国を出る。それ迄に家族との別れを済ませておけ。」
死ぬ可能性がある以上、親しい者への挨拶は済ませておいた方がいい。
「必要な物は此方が用意しておく。もっとも衣服などはお前自身で用意してもらうがな。」
主に下着類など。
「当たり前だ、変態!」




