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第百五十四話『ルキフェルの教え』

深層世界に入り込み対話を続けた時間は体感でいうと一、二時間だった。けれど、あれから二日の時が経っているらしい。


「手に入れた力が制限付きの諸刃の剣かぁ。」


短剣を出現させ、リング状の部分をぐるぐると回し即座に其れを消す。


「ふふ、かっこいいではありませんかぁ♩」


ディアーナはそう言うが、制限時間は三分だ。


(もちろん一般人だった俺からすれば常軌を逸脱した力だけど.........)


覚醒した際は興奮状態にあり何者にも勝てると思い込んだけれど、現実は非なるものだった。深層世界に置いてマールスにより一方的にのされてしまった。


(ルキフェルの『聖』の力、ディアーナの底知れぬ膨大な『闇』、そしてブランチェから放たれる『神気』............)


瘴気の扱い方を学び相手の力をある程度感じる様になった。


(.............前から凄い奴らだとは思っていたが、本当に次元が違う。)


計り知れぬほどに高みにある三者の力を感じ、自身の矮小さを理解する。短剣を手にして得た力でさえ、同じ人間であるカミーユにさえ遠く及ばないだろう。


「ふふ、もっと褒めて下さって良いのですよぉ♪」


ディアーナは嬉しそうに言う。


「口調はもういいのか?」

「ふ、ふふ、何の事でしょうかぁ。」


突き通すなら突き通すで動揺を見せないで欲しい。


「やっと私の出番ですよジョン!」


机を跨ぎ顔を近づけるルキフェル。ちなみに現在自分達は公園からもっとも近くにあるレストランへと昼食を取りに来ていた。


「近い。」


ルキフェルの顔を押し戻し席へと座らせる。ルキフェルは目をキラキラさせ早く講義を始めましょうと言うが、精神的には既に限界に近い。


(瘴気は克服した、けれども苦痛の感触が忘れられない...........)


未だに感じるあの恐怖。手が未だに震えている。ディアーナは表情を察し苦笑をした。


「.......ルキフェルは確か歩法を教えてくれるんだよな。」


ルキフェル達に時間がないのは確かだ。これ以上、自分が駄々をこねて修行の時間をロスする事は得策ではない。


「然り。私が貴方に与えた加護が不老の奇跡に武具を通さない奇跡である以上、逃げの足も必要なのです。ディアーナが貴方に与えた力は武器、そして私が与えるのは速度です。」


「それは戦闘でも応用出来るのか?」

「貴方次第ですよ、ジョン。」


それを聞けただけで満足だ。


「_____よろしく頼む、ルキフェル。」


たとえ精神が擦り切れたとしてもオレは学んでものにして見せる。


「ふふ、楽しみです。」








食事を済ませ、先ほどの大公園へと戻る。


「なぁ、俺が言うのも何だが..........終わったら直してくれないか?」


暴走の所為で美しかった大公園の景色は消え去り、荒地と化しているのだ。木々は枯れ、湖は干からびている。


「ふふ、そのままでもお綺麗だとおもいますがぁ。」


歪んだ感情を持ち合わせるディアーナらしい。


「其方の感性は変わらぬな。」


呆れた様子のブランチェ。


「ジョン、此方に。」


手招きをされ近づくと、ルキフェルは翼を羽ばたかせ自分を包込む。


「貴方の身体には私が授けた『光』、そしてディアーナの与えた『闇』が混合されております。本来ならば反発を起こし肉体は崩壊する。ですが私たちとの深き繋がりがそれを可能とした。」

「あのさぁ、ちょっと近くないか?」


デジャヴを感じる。現状の体勢が翼に包まれ、ルシファーに抱きしめられる形で説明を受けているのだ。


「近い?ふふ、ご冗談を。」


唇同士が話す際に触れ合う状態を近くないとは言わない。


「いや、冗談じゃなくて離れ「歩法とは、常歩・速歩・駈歩・襲歩といった歩く方法を示す語であることはご存知ですね。」


台詞を遮り説明を開始する。最早反論したとて素直に従うルキフェルではないのだろう。


「あぁ、比較的低速のものを指して言うがな。」

「えぇ、ジョンの言う通り歩法とは比較的低速のものを言う。急いで移動する場合は走ると言いますからね。」


青年の返事を聞き微笑を浮かべる。


「もったいぶらずに説明してくれ。」


ルキフェルは翼を開き羽を舞わせる。そして自分の腿へと触れ耳元で呟いた。



天使の散歩(マルシュ)______』


マルシュとはフランス語で散歩を意味する単語。


「_____私が教えるのはこの歩法となります。」

「天使の散歩、ね。」


ずいぶんと可愛いらしい名だ。


「貴方には一度見せた方が早いでしょう。」


ルキフェルはその言葉を残すと羽を何枚か舞わせ、目の前からいなくなる。


“ジョン、貴方の立つ位置から南に位置する一本の満開の木を見なさい。”


青年はすぐさま後ろを振り向くと約400m程離れた位置に一本だけ正常な色をした木が立っていた。そしてその木の頂にはルキフェルが翼を大きく広げ手を振っていた。


「と、この様に、高速的な移動が出来るわけです。」

「!?」


突然目の前に姿を現し話を掛けるルキフェルに思わずびっくりとしてしまった。


「完全に見えなかったな。」

「これは私が天使であるが故に可能な歩法速度ですので、ジョンが行使した場合はかなり精度が落ちてしまう事は悪しからず。」

「いや、問題ない。」


精度は落ちるとは言うがかなりの速度である事には変わらないはずだ。


「一応伝えて置きますが、私の最大速度は299792458m/s、約30万キロメートル毎秒です。そしてカミーユの最高戦速は340.31m/sとなります。例えるならば私が秒間に星を7周する事が出来、カミーユは32時間の時を持って星を一周する事が出来ます。」


光速と超音速ではないか。あまりの数値に驚愕の表情を浮かべる事しか出来ない。


「どうです、驚きましたでしょう?」


褒めてと言わんばかりに目を輝かせる天使。軽く頭をポンポンとすると満足した表情をとり、猫の様に目を細めた。


「それで、俺が扱える様になるにはどうすればいいんだ?」


ルキフェルはくるりとその場を周り自分の胸元へと人差し指を当てる。


「________【オドの力】を用いるのです。」

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