第百三十五話『早朝』
「起きなさい、ジョン。」
早朝、ルキフェルの声により起こされる。
「ふぁ〜おはよう。」
「はい、おはようございます。」
昨日は確かレストランにて食事を済ませた後、部屋に戻り眠ったんだったけ....ん、眠った?
「いつの間に眠ったんだ俺?」
身体を伸ばし冷蔵庫へと向かう。
「お酒を摂取をして暫くした後でしょうか。」
「マジか.......」
お酒を飲んだ覚えがない。頭を掻き洗面所へといく事にする。
ガララララ
「ふふ、覗きですかぁジョン♡」
洗面所の扉を開くとタオルで身体を拭くディアーナの姿があった。
「あぁ、あまりにアンタがエロかったから手を出そうと思ってな。」
と言いつつ洗面所で顔を洗い始める。
「あらあら♩それならばご自由にこの肉体を楽しんで頂いて構いませんのにぃ♩」
胸を押さえ色っぽくアピールをするディアーナ。
「ま、気が向いたらな。」
顔をタオルで拭くと青年はリビングへと戻って行った。
「もぅ、いけずなんですからぁ」
(あ、あれれ?可笑しいですね?私ってそこそこいいプロポーションをしてますよねぇ?さっきの反応........うぅ、お可笑しい!!ジョンはイ●ポなんですかぁ!?)
だが青年は男だった。青年は思う。自分も男なのだしあの様な行動を控えて頂きたいと。下半身が反応をしない訳がないだろうと。
「なぁ、確か今日ってリンジャニ島に行くんだよな?」
現在早朝6:30を回り朝食をルームサービスにて呼びつけている。ルキフェルがロビーへの連絡を終えると自分の対面側へと座り質問に答えた。
「えぇ、昨夜は景色へと意識が集中しておりませんでしたので、今日はしっかりと目に焼き付けるつもりです。」
「ん?」
まるで行って来たかのような発言だが。
「ふふ、今日は登頂出来るんですねぇ♪楽しみですねぇ♡」
『I love Indonesia』と書かれたTシャツを着込んでいるディアーナが現れる。
「いつ買ったんだよ、そのTシャツ?」
ディアーナの格好につい笑ってしまう。観光客以外にこう言ったシャツを着ているのを見た事がない。
「御二方の分ももちろん手配しましたのでどうぞぉ?」
Tシャツが渡される。
「おお、感謝しますディアーナ。」
直ぐにTシャツへと着替えるルキフェル。
(だ、だせぇ........まぁ嫌いじゃないし、良いか。)
「ありがとう。」
青年も同様にディアーナに手渡されたTシャツへと着替える。
「三人でお揃いって、なんだか恥ずかしいな。」
同じ服装になった三人は何故か仲良く手を繋ぎ輪を作っていた。
「いえいえ、絆というものですよぉ。」
「家族や恋人と言った者たちがこの様にペアルックをすると言う風習がある以上、何も恥ずべき事はありません。」
偉くルキフェルが気に入ってい様子。自分で言うのもなんだが、美形が三人、同じ服装をすれば普段以上に目立つのではないのだろうか。
コンコン
”Room service”
朝食が届いた様だ。
「Good morning, please come in.」
(おはようございます、入ってください)
招き入れるとルームサービススタッフ達が朝食の準備を瞬く間に終えていく。
「Have a great breakfast.」
(良い朝食を)
朝食の準備が整ったと同時に迅速に部屋を退出するスタッフ達。
「早いな。流石最上級の部屋を頼んだだけはある。」
「えぇ、私のお陰ですよぉ♡」
「あぁそうだな、ありがとう。」デコピン
「痛ぃ........ふふ♡」
ディアーナのおでこにデコピンをし感謝の言葉を伝える。ディアーナは嬉しそうに自分のおでこをさすった。
「それでは朝食を始めましょうか。」
「あぁ、そうだな。流石に山に登る前に食事を取らないのは自殺行為だ。」
だが食事に手をつけようとフォークを握るとディアーナとルキフェルが自身の手を止めた。
「祈りが済んでおりませんよ。」
.................祈り、何のことを言っているんだ?
””天にましますわれらの父よ、願わくは、み名の尊まれんことを、み国の来たらんことを、み旨の天に行わるるごとく
地にも行われんことを。われらの日用の糧を、 こんにち 今日われらに与え給え。われらが人にゆるすごとく、われらの罪をゆるし給え。われらを試みに引きたまわざれ、われらを悪より救い給えアーメン。””
貴方方はカト●ック教徒か何かなんですかねぇ。確かに宗教に属する人は食事の前に祈りを捧げると言うが、ルキフェル達は物語において宗教を殴り捨てた身だろうと心情にて感じる。
「アーメン」
取り敢えずツッコミを入れるのがめんどくさいので此の儘ルキフェル達のノリで進めよう。
「「OUT!!」」
だが二人は×サインを手で作りそう言ってきた。そして何故か席を立ち自身の左右に立つ。
「おい、席に座れ。飯が食えんだろうが。」
「主への祈りを貴方は受け入れてはなりません。」
「そうですよぉ、信仰するにしても私かぁルキフェルさんにして下さぁい。」
信仰する要素が何1つとないお前達にか?ふ、笑わせてくれるなと言いたい。
「神への祈りは人を堕落させる。」
「えぇ、信仰をする時間があるのならば人生をより豊かにする方法を考えた方がより有意義ですよぉ。」
信者が此れらの言葉を聞けば怒り心頭だろう。
「もともとはアンタらが言い出したんだろーが。飯が冷める前に良い加減に食おうぜ?」
二人を放置し食事へと手を伸ばそうとするが身体を椅子の背もたれへと押し戻される。
「「私達が求めているのは肯定ではなく否定なのですよ!」」
二人はハモらせて言う。要約するになんで祈ってんだよ!とツッコミを入れて欲しかったのだろう。
「神に仕えていたルキフェル、そしてディアーナは元信仰者、もとい元司祭兼聖女だったろ。食事の前に祈りを捧げてもおかしくない奴らだ。祈りを捧げたい気分の日だってあるのかも知れないと思っても不思議じゃないだろ!」
もっとも日本にて生活をしていた頃よりこの二人が祈りをしているところなど一度も見ていないし、神に縋るような連中じゃない事は物語からも理解をしているが。
「それは確かにそうですが.......」
「......納得がいきませんねぇ。」
「あぁもうめんどくせぇ!飯だ飯!座れぇ!!」
二人を引っ張り各自の椅子へと座らせる。そしてテレビをつけインドネシアの報道番組を見ようとチャンネルを変えると信じられないものが目に入った。
「.............おい、あの蛸の触手群の残骸は何だ?」